メディアグランプリ

田舎の進化と、捨て猫のワタシ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山崎陽子(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「ご出身はどちらですか?」
 
「わぁ! いい所ですね! 羨ましいです!」
 
いつからだろうか? 出身の地元を言うと、いい所だと言われたり、行ってみたいんですー! と言われるようになったのは。
私の出身は、福岡県の西の端。糸島だ。
間違いなく学生の頃は、糸島と言うと、「それ、どこ?」と聞かれ、福岡の西の方。と説明しなきゃいけない場所だったはずだ。
それが、ここ最近では、糸島と言うと、キラキラした目でいいですね! と言われてしまう。
まるで昔付き合ってた彼氏が、知らぬ間に有名人になって、「えぇ! すごいね!」と言われてるような気分である。
 
私が知ってる糸島は、決して素敵ではないのだ。
私が住んでた場所は、糸島といえば海! ではなく、素敵な山の方でもなく、ただただ広い田んぼの真ん中に家があった。完全に、“じゃない方芸人”のような場所に家があった。
 
電車の終電は、天神からは0:12が最終だった。それは決して早すぎるわけではないが、そんな終電で帰ろうもんなら、街灯のない、ガードレールもない道を、必死で目を凝らして歩いて帰るしかない。
月が出てない日なんて、びっくりするほど暗かった。
当時は、携帯電話にライトなんて機能はなく、しかもPHSという小さな画面の液晶をパカパカしながら光を求め、夜道を歩くしかない。1度、足を踏み外して、川に落っこちたこともある。友人は、田植えの時期の田んぼに、自転車ごと落っこちたこともある。
帰宅するのがサバイバルだった場所を、どうやったら素敵だと思えるのか。
 
小学生時代は、駅から実家が見えた。見えるけれど、歩けども歩けども、ちっとも着かない。見えてるのにたどり着かない、延々と伸びる田んぼ道を歩き続けるのは、なかなか苦痛だった。
最短距離を直進で帰ったら近いだろう! と子供ながらに思い、田んぼを突っ切って帰ったことがある。
家にたどり着く頃には、靴はドロドロ。母親からは、どこを通ったらそんなことになるの! ばかっ! とよく怒られていた。
小さな竜巻がよく発生していた田んぼ。その危険さもよくわかってなかった子供の頃は、竜巻を見つけると、とりあえずその中に飛び込む。という危険な遊びをしていた。怪我をするのは日常だった。
 
交通手段は、自転車か徒歩。バスなんてものはなかった。大人になり、福岡市内で一人でバスに乗った時は、システムがわからなさすぎて、泣きそうになった。はたから見たら、挙動不審の不審人物だったはずだ。
 
地元を褒められるのは、嬉しいような気もする。私よりも、よっぽど糸島が好きで、たびたびドライブをしてる方の方が、きっといい所を知ってるんだと思う。
 
そうだ。私のこの感情は、嫉妬だ。羨ましいと言えることが羨ましいのだ。
出身地なのに、そのいい所を知らない。有名になる前の、ただただ素朴な田舎を知っている。おしゃれなカフェが出来たり、糸島の野菜が有名になる前だ。
私の知ってる、私が育った素朴な田舎は、もはや、あか抜けまくって出身だと言うのをためらう場所になってしまった。
羨ましいと言われても、何が羨ましいのかがわからず、自分の知らない素敵な地元がどんどん増えていって、もはや、進化する田舎に置いていかれてしまったのだ。母猫に置いてきぼりにされた捨て猫のような気分になっていく。
 
佐々木希さんが、テレビで、「糸島の野菜を取り寄せて食べてます」と、しゃべくり007で語ったのを聞いた時は、雷に撃たれたかの気分だった。
あんな美しい有名人の口から、糸島という言葉が出るなんて。しかもお取り寄せ。
「じーちゃん野菜ちょーだい!」なんて言おうもんなら、一人暮らしで、頭よりもでかい白菜を5個もどうやって消費しろと言うんだ! と困るほど届く。タケノコの時期になると、冷蔵庫の中が自家製タケノコの水煮で埋め尽くされ、すべての料理にタケノコが入る。
「旬の美味しいものが食べられるって羨ましいな〜」なんて言われるけれども、他の人には、羨ましいと言われることが、内心うっすらと迷惑だと思っているだなんて、なんて自分はヒドイ人間なんだとやや凹む。
 
こうなったら、公言するしかない。私は、糸島出身ですが、日本で住みたい街ランキングNo. 1になるような、素敵な部分はなにひとつ知らないのだ!
私が知ってるのは、季節の移り変わりを、匂いや、生えてる植物や、昆虫や爬虫類でリアルに感じ取れる普通の田舎なのだ。
むしろもう、出身だと言うことを忘れて、純粋にこの街を知ろうと思う。
たまには、ちゃんと休みを取って、未だ知らない田舎に向き合ってみよう。
そしたらきっと、自信を持って出身地を言えるようになるのかもしれない。進化した田舎に見合うように、私も進化して、捨て猫から飼い猫に昇格して行きたい。
 
 
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2017-09-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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