メディアグランプリ

全力で逃げさせていただきます


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YUKI(ライティング・ゼミ日曜コース)

 

「私、会社を辞めます」

これが私の最終逃走手段だった。

 

新卒で入社した会社で、私は高瀬さんという男性と出会った。32歳の紳士的な優しい人で私と同じ人事部の先輩だった。いつも優しく仕事を教えてくれる彼に私はとてもなついていた。

 

が、一見紳士的な優しい彼は裏では自分にとって不都合な人間を排除していくとんでもない男だった。

 

私がそれに気づいたのは入社して10か月くらいたった頃、人事部の他の社員の悪口を高瀬さんが私に話しだした。悪口を言われている社員の名前は多田さんと言う男性で、高瀬さんとはあまり仲が良くないようだった。ただ私とは仲が良かったのでよく飲みに連れて行ってくれる優しい人だった。私は2人がなぜ仲が悪いかはわからなかったが、高瀬さんが多田さんの悪口を言っているのを聞くのは正直嫌だった。だから、ちょっとだけ多田さんのフォローをしてしまった。「そんなに悪い人ではないと思うんですが……」とそれほど強く言ったつもりはなかったが、高瀬さんの逆鱗に触れたらしく、その日から彼にとって私は排除対象者になってしまった。

 

あっという間に、私は既婚者の多田さんと不倫をしていて、偉い人にはへこへこし、派遣社員には威張っていつも怒鳴り散らす生意気な社員という噂が広まった。

噂の出どころはすべて高瀬さんと仲がいい社員からだった。

 

当然私は不倫をしていなかったし、派遣社員に威張って怒鳴り散らすことは一度もしたことがなかった。怒鳴るも何も派遣の女性の皆さんはいろんな意味で恐ろしく、怒鳴るなんて絶対できなかった。あと、私は生まれてから一度も男性とお付き合いをしたことがない処女だった。だから不倫をしているといわれてもあまりピンとこなかった。事実と噂のギャップのすごさに、初めのうちはあまりこの噂を気にすることはなかった。だが、不思議なことに多くの社員がこの噂を信じてしまっていた。

 

これが高瀬さんの怖いところでこの普通に考えたらありえない内容を信じこませることがとても上手かった。

おかげで噂を信じる先輩社員や上司からの風当たりが強くなり色々と大変だった。

一応私にも仲間がいた。人事部の多田さんやその友達、一部の同期が私の味方になってくれたが、ごく少数だった。

 

私は精神的につらくなり、食欲をなくし、睡眠不足が続くようになっていった。でも会社を辞めることは高瀬さんに負けたことになるからと、どうしてもできなかった。気が付いたら5年近くたっていた。

 

その頃には私は社内でとんでもない悪女になっていた。もちろん空想上の私がだが、相変わらず高瀬さんの心理術にはまる社員は多数いた

 

そんな時私は1冊の本に出合う。よくあるビジネス本だったが、その内容に「自分に悪意を持つ社員との付き合い方」が書かれていた。「自分が考え方を変えてみろ」「部署を変えて相手と距離を取れ」等最初に書かれていることはすべて実践済みで参考にならなかった。私は人事部からすでに2回部署を変えていたが全く効果がなかったのだ。だが、最後に書かれていた文章だけは違った。「すべての方法を試してダメだった場合、今すぐ会社をやめなさい。自分の人生を破壊する人間と関わり続けても何のメリットもない」といった内容だった。

 

たぶんその時の私は誰かに背中を押してもらいたかったのかもしれない。逃げることは悪いことじゃない。私の人生からあいつを退場させてやる。と……。

 

私の行動は早かった。働きながら転職活動をし、新しい会社の内定をもらう。そして冒頭の通り上司に辞表届を出した。ここまでわずか1か月半しかたっていなかった。

 

当時の上司は高瀬さんの話を信じている人だったので私には常に嫌味を言う人だったが、いざ私が辞表届を出すとすごい引き止めてきた。「こんなにいい会社は他にはないし、お前はここ以外では絶対うまくいかない。後悔することになるぞ」と平然と言う上司に嫌悪感しかなかった。

 

私が辞めることは当然人事部にいる高瀬さんの耳にも入った。そして同じく人事部にいる多田さんがこっそり私に教えてくれた「気をつけろよ。次の会社がどこか何が何でも聞きだせって退職説明する社員に指示していた」

当然私は口を割らなかったが、その後も退職するまであの手この手で探ってきた。

……ここまでくると高瀬さんはただ嫌がらせをする社員ではなくてストーカーなんじゃないかと考えてしまうほどだった。

 

そして、私は無事転職をし、2年が経った。年収も当時より100万近く上がり、周りの社員にも恵まれた環境にいる。

 

「人間関係を理由に辞めるのはよくない」

私はこの言葉をよく耳にする。だが、どうしようもない悪意ある人間相手に我慢しても時間の無駄だ。だからそんな時は思いっきり逃げて堂々と前に進めばいいと私は思う。
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2017-09-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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