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ライティングゼミは鋭角に


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記事:志希歩(ライティング・ゼミ 通信専用コース)

 
 
私のそばにはいつも本があった。
 
物心ついた頃、寝る前に両親に絵本の読み聞かせをしてもらっていた。
毎日、疲れている両親が読み聞かせの途中でウトウトするのを無慈悲にたたき起こして山積みの絵本を読ませていたそうだ。
年の離れた弟は、読み聞かせの途中でウトウトする両親に「もういいよ」と言って解放していたことは大人になってから知った。
 
字が読めるようになってからはひたすら本を読んでいた。
小学生の頃は買ってもらった本や学校の図書館の本を読み漁り、物語の世界に没頭した。
学年が上がるにつれて学校や塾などに時間を取られ、読書量は減ったが、本から完全に離れることはなかった。
 
そして大人になったら私も自然と何か物語を生み出すことができるのだろう、とずっとぼんやり思っていた。
大人になるということは、何でもできるようになるということだから。
 
だから実際に物語を書いてみるとか構想を練ってみるとかという、何かを生み出す努力はしていなかったし、それが物語を生み出したいという自分の願望であるという認識すら持っていなかった。
 
世間的に大人と扱われる年代になっても私の中から何かが生み出される気配は一向になかった。
自分の経験や考えをもとに何かしら内側から溢れ出るものがあり、それを書き連ねればひとつの物語ができ上がる、世の中に溢れている物語はそういうものであって、自分にもそれがいつかやってくるんだろうとぼんやり待っていた。
もう少し年を取っていろんな経験をすればそこから何か出てくるものなんだろう、自分にはまだその経験がないだけなのだと。
 
果たして、何も生み出さないまま、何の努力もしないまま、歳だけは立派な大人になってしまった。
当然、自分の中から何も生まれてくることはなかった。
そして今更ながら何かを書いてみたいという自分の底の密かな願望を認めたとき、「ライディングゼミ」と出会った。
 
物語は、自分の内側から自然に湧いてくるものではなく、もちろんアイデアとしてそういったものが必要だったとしても、いかに読み手の興味をそそるかを考え抜いて作り上げるものである。そしてそれは何度も何度も練習して鍛えられるもの。
才能やセンスからしか生まれないと思っていた物語を作り出すことのテクニックやロジックをこのゼミでは余すことなく教えてくれるようだ。
自分次第でどうにかものを書くことができるようになる、そう思ったとき、静かに大きな衝撃を受けた。
漫然と読書をしていたあの頃に出会えていたらよかったのに。
 
読書について考えるとき、真っ先に思い出すことがある。
 
中学3年の時、私は進学塾に通っていた。
毎週末、塾に行き、模擬試験形式の問題を解く。
ある日、いつものように塾に行った。国語の時間だ。
「始め!」の合図で第1問目の長文読解に取り掛かる。
 
高校や大学の入試で多くの人が経験していると思うが、現代文の長文読解の際、まず最後の出典を確認する。評論文なのか小説なのか、頭と心にそのスイッチを入れて読み始める。その日も同じように最後の出典に目をやった。
 
向田邦子「安全ピン」とある。
模擬試験で初めて出てきた作家だった。
ああいやだ、難しそう。
 
向田邦子という名前は母親の本棚の中に見たことがあったが、その名前の雰囲気が堅苦しく感じられ、小難しい評論文などを書く年配の作家さん、というような勝手なイメージを持っていた。
 
気構えて読み始める。
するとザワッと鳥肌がたった。
「面白い!」
一気に作品の世界にどっぷり浸ってしまった。
面白さに驚いて鳥肌が立つなんて初めての経験である。
しばらくの間、試験中であることも忘れて何度も何度も読み返し、ふと我に返って慌てて問題を解いたのだった。
家に帰って母親の本棚から彼女の本を探し、本屋に行くたびに手に入れて片っ端から読んだ。
 
それから何度も読み返した。
 
今でも日常の何かの場面で彼女の作品を思い出す。
作品に触れるたびに何気ない文章の素晴らしさに圧倒される。
凛とした佇まいとライフスタイルに憧れる。
彼女が今生きていたらどんな作品を書いているだろうと思いを馳せる。
 
たまたま出会った「安全ピン」から彼女の世界が大きく膨らんで私の人生に彩りを与えてくれた。
 
「ライティングゼミ」との出会いも今までにないものを私に与えてくれそうだ。
 
受講を初めて間がなくて、まだまだ理解も実践も追いついていないが、講義を受けてから本の読み方が少し変わった。
四苦八苦しながら仕事もそっちのけで今まで書いたことのないくらい長い文章を書いてみた。
見るもの聞くものにアンテナを張り、空いた時間にネタを考えている。
 
受講する前とはほんの少し世界が変わった。
 
これがたった1度の角度の変化だったとしても、そのまま進んでふと振り返れば、元の軌道からずいぶん離れたところを歩いているんじゃないだろうか。
 
どんな些細なことでもそれをきっかけにゆっくりとその先の自分が変わっていくものなんだろう。
 
そうだ、これは「“人生を変える”ライティングゼミ」だった。
 
この1度の角度の先には本当に人生変わってるかもしれない。
 
「安全ピン」から向田邦子の世界が広がったように。
 
 
***

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2017-09-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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