メディアグランプリ

なんで勉強しなくちゃならないのか、その答え


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:菊地 優美(ライティング・ゼミ 日曜日コース)

 
 
「いったい何が入っているの?!」
幼い私は、思わず聞いてしまった。
おばあちゃん重そうだから持つよ、といってかばんを受け取った直後だった。
 
おばあちゃんは恥ずかしそうに、
「だから重いんだがら、いいっていったべ」
といった。
 
そう、おばあちゃんのかばんはいつも重かった。
 
かばん本体はそんなに重くない。
ごく普通の布製のものだったり、合皮だったり。
でも、どんなかばんに変わっても、やっぱり重かった。
 
なんといっても中身がパンパンに入っているのだ。
では、何が入っているのか。
 
財布・ハンカチ2枚・ティッシュといった、ごく普通にみんなが持ち歩くもの。
薬類・ポケット辞書・手帳・筆箱・のど飴・ウェットティッシュなど、あればまあ使えるかもというもの。
さらには万華鏡・折り紙・キーホルダー・外国のコイン・トランプ・ブローチ・新聞記事のスクラップなど、あれこれいつ使うの? というようなものまで入っていた。
 
わたしは、そんなおばあちゃんのかばんの中を見せてもらうのが大好きだった。
そこには、きれいなものや、不思議なものもたくさんあった。
一見不要なものも、おばあちゃんに言わせればちゃんと意味のあるものだった。
だから、それらがかばんに入っている理由を聞くのも好きだった。
 
例えばおばあちゃんに、「万華鏡なんてどうするの?」と聞いてみると
「海のほう行ったらきっと外人さんがいるべ、したらその外人さんにおみやげにどうぞってあげんのさ」とこともなげに言う。
なるほど、いいアイディアだなと思う。きっと外人さんもきれいだって思うな、と妙に納得。
 
「トランプはいつ使うの?」と聞けば
「誰かと誰かが喧嘩してたらこれで決めろっていうのさ」という。
なるほど、トランプなら傷つけあうことなく決着がつけられるよな、とこれまた納得。
 
「のど飴は?」と聞くと
「電車で風邪の人がいたらあげるんだ」という。
確かにおばあちゃんはよく、知らない人でも咳をしている人には飴をあげていたな、とこれにも納得。
 
おばあちゃんのかばんには、こういったたくさんの「もしかしたら」がたくさん詰まっていた。
それも、万華鏡やらトランプやらのど飴やら、まだ見ぬ誰かのためのモノが入っていた。
誰かが困っているとき時に、さっと「これどうぞ」と取り出せるようにしておいている、おばあちゃんのかばんが私は好きだった。
 
そして、このおばあちゃんのかばんを思い出したのは、とある中学校に伺った教育実習の時だった。
 
「せんせぇ、なんでベンキョーなんかしなきゃいけないの?」
「俺、大人になっても、外国なんてぜってぇ行かねえし、ベンキョーする意味ないじゃん」
「わたし、電卓とケータイあれば別に生きていけますけど」
 
20歳そこそこ、6つも年が違わないであろう私は、生徒たちからこんな生意気な質問をよくされた。
はじめは、まあそんなこと言わずに勉強していけば見えてくるものがあるから、なんてごまかしていたけれど、それもどうも違うような気がした。
彼らは真剣に、どうして勉強しなくちゃいけないのか、わからないのだ。
 
なんで彼らは勉強しなきゃいけないのか?
さらに言えば、なんで私は今日まで勉強したいと思ってこれたのか?
 
その理由を考えた時に思い出したのが、おばあちゃんのかばんだった。
 
足し算割り算、漢字など、日常生活にもすぐに役立てる知識の勉強。
科学、法律、英語など、まあ知っていればどこかで使えるなっていう知識の勉強。
平方公式、物理、倫理、美術史など、確かにこれどういうときに使うんだろうなっていう知識の勉強。
彼らはこういった勉強を、自分は使わないからいい、自分はケータイで調べるからいいという。自分が困らないんだから、これらは学ばなくていい。つまり、彼らは自分のためにしか勉強していなかった。そりゃ、モチベーションも下がるだろう。
 
もちろん、自分の為に学ぶことはとても大切だと思う。
 
でも、たとえ自分が一生つかわないとしても、
他の人が困っているときに、「これってもしかしたらこういうことなんじゃないか」とポンと解決策を提示できるようになるために、私たちはさまざまな勉強をしているんじゃないだろうか。
 
それはわたしにとって、おばあちゃんのかばんと一緒だった。
 
ある知識は、おばあちゃんのかばんに入りっぱなしになっていたトランプのように、争っている人に出会うことなく、一度も使われることがないかもしれない。
でも、ある知識は、おばあちゃんのかばんに入っていたのど飴のように、ある寒い冬の日に風邪の人にあげることで、「ありがとう」と言ってもらっていたような、素敵な出会いのきっかけになるかもしれない。
 
自分が使う・使わないだけじゃなく、やがて出会う人の為に何かを知っていくこと、学ぶこと。それが勉強の醍醐味なんじゃないかな。こんな話をして、彼らに勉強の楽しさを説明したと思う。
 
まだ見ぬ人の為に、何かを持つことの大切さ。
彼らに伝えたこの気持ちを忘れないために、わたしのかばんの中には、おばあちゃんと同じく、いつものど飴が入っている。
 
 
***

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2017-10-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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