メディアグランプリ

僕はルイーダの酒場で、戦士に「ちからのたね」ばかりを与えていた。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:近藤裕也(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「お、この講座いいなぁ。あっ、こっちも気になる。どっちも受けちゃおうかなぁ」
 
僕はフリーでPRライターの仕事をしている。
もともとは、女性向け情報誌を発行する出版社で、PRライターの仕事をしていた。
そこでは「エステサロンの広告で32名がコース成約」「ヨガスタジオの広告で25名が入会」などの実績を連発して活躍していたが、会社の経営状況は著しく悪く、入社から2年で倒産を迎えた。
 
それから1度は違う道を選んだが、不運なことに、その会社も入社2年でM&Aされてしまった。
吸収先の会社に残るか悩んだが、実績のあるPRライターとしての独立の道を選び、今に至る。
まだ半年目だが、ありがたいことに、仕事はしっかり回せている。
 
この時は、広告で見つけたサイトに掲載された講座情報を閲覧していた。
「マーケティング」「編集」「広報」……魅力的な講座一覧が、僕の心を掴んで離さない。
僕のような弱小個人事業主は、こうした講座への投資と成長のサイクルを回し続けることで、ようやく顧客に対して高い価値を提供できると教えられてきた。
だからこの時も、何かの講座に投資して、もっと自分が提供できる価値を高めようとしていたのだ。
 
その中でも1番惹かれたのは、専門分野でもある「ライティング講座」だった。
一言にライティングといっても、種類はさまざま。セールスライティングもPRライティングも、もっと体系的に学びたい。コンテンツライティングも、もっと極めたい。
僕は講座情報を吟味し、その中でも1番気になった10万円以上するライティング講座に申込することを決心した。
 
「新しくまた、ライティングの勉強を始めることにしました」
 
申し込みを決心した翌日、お世話になっているコンサルタントの方に、そのことを報告した。
この方には、会社員時代からお世話になっている。直接仕事をいただいたり、顧客を紹介していただいたこともある。僕が仕事に困らず生活できているのも、彼の支援あってのことだ。
 
彼は意欲ある起業家を応援している。今回の報告でも、僕の成長意欲を喜んでくれると思った。
しかし彼は、僕が予想していたものと少し角度のズレた質問を、僕に投げかけた。
 
「ふと気になったんだけどさ、近藤くんはいつまでライティングの勉強を続けるの?」
 
その言葉にドキッとしながら、僕は彼の質問の意図を考えた。
 
僕はライターだ。確かにライティングが専門分野であり、得意分野だ。
だけど、上には上がいるし、世の中には溢れんばかりの「ライター」が存在している。
その中で勝ち残るためには、さらにスキルを身につけ、向上させ続けなければならない。
だからこそ、今回の投資を決意したのだけれども。
 
「どういうことですか?」
 
僕は彼に、思ったことをそのまま返した。彼は経営者の先輩として、僕にこう話した。
 
「近藤くんはすでに、食うに困らないだけの「書く力」は持っているよね。でもそれ以外の能力はどうかな? 1つの能力だけがズバ抜けて高いだけで生き残れるほど、起業は甘くないよ」
 
この言葉を聞いた時、頭に衝撃が走った。
僕は気づかないうちに、昔に遊んだゲームで経験した失敗を、大人になった今も繰り返そうとしていたのだ。
 
あなたは、「ドラゴンクエスト」というゲームをご存知だろうか。
男性であればきっと1度は遊んだことがあるに違いない、大人気のゲームだ。
 
そのシリーズの中でも、特に根強いファンが多い「ドラゴンクエスト3」から、「ルイーダの酒場」というスポットが登場した。
ここでは、戦士や魔法使いといった仲間を作り、旅に連れていくことができる。
そしてそんな仲間を作る際に、「ちからのたね」や「まほうのたね」といった5種類の種を使い、仲間のステータスを上げることができるのだ。
 
例えば戦士であれば、物理的な攻撃力は高いのだが、スピードが遅い。
たねで得意分野を伸ばすか苦手分野を補うかは、プレイヤーの好みによって変わる。
僕はもっぱら、戦士には「ちからのたね」だけを与えた。
「攻撃力さえあげれば大丈夫でしょ」という、浅はかな戦略だった。
 
ゲーム序盤はよかったものの、その戦略はすぐにつまづくことになる。
戦士の攻撃は強かったが、スピードがなく敵から先に攻撃され、倒されることも多かった。
特にボス戦になると、手応えを感じないまま全滅し、負けてしまう。
それが何度も続いてしまい、僕はゲームに飽きて、途中でプレイを放棄してしまった。
 
今まさに僕は、その時の失敗と同じことをしようとしていた。
僕は「ライター」という戦士に、「ライティング講座」というたねを与え続けようとしていた。
つい先日、「天狼院書店のライティングゼミ」というたねを、与えたばかりなのに。
そして、それ以外の能力は乏しいということにも、気づいているのに。
 
これから僕はライティング能力だけで、この厳しい起業時代を生き抜いていけるだろうか。
 
いや、それはきっと無理だろう。
ビジネスを発展・継続させていくためには、「マーケティング」のたねも必要だし、「セールス」のたねも必要だ。
「経営数字」という防御力を高めるたねも、今後は必要になってくるだろう。
 
今は紹介からお仕事をいただいているけど、もしその紹介がなくなった時、ライティングという攻撃力しかなければ、僕の起業人生は急速に終わりを迎える。
あの時ゲームを諦めたように、パッとやめられたらいいのだけど、この人生をかけた「起業」というゲームは、「はいそうですか」とすぐにやめることはできない。
このゲームで勝ち続けるためには、その時必要な能力を見極め、そのたねを自分に与え続ける以外、道はないのだ。
 
彼の言葉で目を覚ました僕は、ライティング講座の申し込みを一旦取りやめた。
 
きっと今、僕が投資すべきお金の方向性は別にある。
この「ライティング」という武器をもっと活かすため、そして僕がこれからもビジネスを続けられるため、何に投資すべきなのかを、もう少し考えてみようと思う。
 
とはいえ、実はまた、魅力的なライティング講座を見つけてしまった。
ん〜、これは受講したい。金額も安いしなぁ。どうしようか……迷った僕は彼に電話し、また会って相談したい旨を伝えると、彼は電話口で最もらしい助言をした。
 
「近藤くん、君は本当に懲りないね。今の自分に必要なものは何なのか、その要素を全部……」
 
最後は、呆れたようなため息を交えて言った。
 
「出してから、おいで」
 
 
***

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2017-10-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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