メディアグランプリ

新しい命を迎える私に、猫が教えた心構え。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:古川博之進(ライティング・ゼミ特講)
 
「人間とは全然違うよ、一緒にしちゃダメ」
 
この1年ほど、多くの人が私をこう言って諭してきた。特に経験ある女性の方が、語気を強めに注意してきた。こちらとしても、全く同じだなんて思っちゃあいない。それでも、単なるうわべだけの知識を聞きかじった私にとっては、幼少の頃は同じであり、それは彼が気付かせてくれた大切なことなのだ。
 
出先のペットショップでたまたま出会ってしまった私とその猫は、奇しくも一緒に暮らすこととなった。妻に促されてしぶしぶ抱っこした私が、ジャケットの隙間に突っ込んできた小さなかわいい頭のことを忘れられなかったからだ。私はインターネットで様々な情報を集めたうえで、受け入れ準備と妻の説得を済ませた。彼を我が家に受け入れるまでには10日と掛からなかった。
 
そのときの彼は生後3ヶ月ほどで、体重は確か500グラム。片手で容易に持ち上げることができたが、ふわっふわのふにゃふにゃで、どこを持っていいのか分からず大層困った。行っちゃいけない場所に行きそうなときや、ゲージの中にある棚に持ち上げてやる時は特に困った。やわらかすぎて、壊れてしまいそうで、これほど慎重に何かに触れたのは人生で初めてだったかもしれない。
 
食事を3回に分けてやること、カリカリ餌をふやかしてやること、熱すぎないように冷ましてやること、うんちを見ながら健康状態を観察すること……。聞いたこともない決まりごとに四苦八苦しながらも、一緒に生きることを楽しんだ。
 
「このドアを開けて」
「ご飯をちょうだい」
「おもちゃで遊んで」
「触ったら殺すぞ」
 
しばらく一緒に暮らせばだいたい言いたいことの半分くらいはわかってきた。しかしそれでも半分ほどだ。何もしていなくてもガブリとやられる時があるし、フワァーと鳴き続けて止まない時がある。病院へ行ったり緊急時に一緒に逃げるためのリュックに入れようとすると、容赦なくその爪を立ててくる。言葉が通じないから、こちらがわかってあげられないから、彼のストレスが鎮まらないときが間違いなくある。それをわかったうえで寄り添ってあげたい。家族なのだから。
 
10日ほど前にうちに来たちびは、間違いなく人間ではあるが、2年前に迎え入れた猫 博之進と全く同じだった。重量こそ3000グラムあるが、ふにゃふにゃで首もぐらぐらで、どこを抱えてやればよいのやらわからない。妻の指導でなんとか首を支えつつ抱え込むことができたが、ベッドに移すのでさえひと苦労だ。おむつを替えるにしても「脱臼しないように」なんて言われたら余計に委縮してしまう。思った通りだ。
 
食事は3回よりはるかに多い。おっぱいがないときは、ミルクを“適温で”作ってやる。熱すぎないように水道水で冷やしながら、でもぬくもりは残しておけとな。難しい。でもこれも思った通りだ。
 
まだわずかな時間しか一緒に暮らせていないが、いま直面している問題、これから直面するであろう問題も、ある程度は覚悟ができている。
彼はまだ言葉がわからない。聞き取りもできなければ、自分の望むことを言葉に発することもできない。それゆえに、シンプルに、泣く。これを不定期に、それこそこちらの都合お構いなしに繰り返す。言葉が通じないから、こちらがわかってあげられないから、彼のストレスが鎮まらない時が必ず訪れる。そしてこちらも疲弊する。それに寄り添ってあげたい。家族だから。そしてそれは、博之進が先に気付かせてくれていたことだ。
 
目の前にある初めて見るものに興味を持ち、危険だろうが熱かろうがお構いなしに手を出す。痛い目を見て体得するし、怒られて学習もする。食べ物以外を口にして具合が悪くなる。雷の音に半狂乱で走り回るし、全力で突っ込んできて、いつの間にかこちらが怪我をするくらいに力もついてくるのだろう。
同じなのだ。
やはりスタートは同じ生き物であり、幼少期は同じなのだ。
 
この記事を書くためにパソコンをいじっている最中も、ちびはぐずったりうんちしたりとてんやわんやだ。しかしこの時間さえも、長い目で見れば一瞬の出来事であり、彼はあっという間に巣立っていくのだろう。博之進のコロコロ・もふもふとちっちゃかった時間はおよそ半年だった。2年経った今は人間でいうところの25歳程度で、最も活動的な時期だ。これを過ぎれば壮年期となり、あっという間に窓際で一日中寝ている状態になるだろう。ちびは、うちの窓際にいないどころか、我が家から出ていっているに違いない。
 
それまでの、短くて貴重な時間を、一緒に生きていく。
その大切さも猫が教えてくれました。
 
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2017-10-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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