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【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:中島翔子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「ドゥミプリエ2回、グランプリエ。前と後ろ~」
もう11月。外は雪が降りそうな寒さでも、スタジオ内はじわっと汗をかくほど熱気がこもっている。
約15年ぶりのこの感覚。私はちょっとした興奮に心満たされていた。
久々のレオタードにバレエシューズ。もう随分とご無沙汰していたのになぜかとてもしっくりくる。自分の居場所に舞い戻ってきたような気持ちだ。
 
高校までは週4回、実家の近くの教室に通っていた。プロへの道は針の穴のごとし。自分には難しいと薄々感じてはいたが、その不安を打ち消すように練習に没頭していた。
 
その時自分を支えていたモチベーションは
「1秒でも“他人(ひと)”より長くバランスを取る」
「1センチでも“他人”より高く脚をあげる」
「一回転でも“他人”よりピルエットを多く回る」だった。
 
思えば、楽しく踊れていたのは中学生ぐらいまでで、高校に入ってからは楽しいよりも、いい役を欲しいとか、難しいパ(振付)ができるようになりたいとか、フェッテ(32回転)の精度をあげるとか、そういった人との競争や、技術面の目標の方が先に立っていた。両足は豆だらけ。親指の爪も黒く変色し、年中痛みとの戦いだった。
 
そんな矢先だ。身体を壊したのは。
原因は定かではない。今と違って水分補給が軽視されていた時代。恐らく熱い最中での練習で脱水になったせいという人もいれば、もって生まれた弱さという人もいた。とにかく私は腎臓という臓器に支障をきたし、長期入院のため、バレエはおろか、学校も暫く行けなくなった。
それまでバレエにかけてきた10数年を全否定され、かつ完治することのない病気を抱えてこの先生きていかなければいけない。今思い返しても15歳にしてはかなり酷な宣告をされたと思う。
あれから15年。幸いなことに私の身体は投薬治療と定期観察で今のところ持ちこたえている。持病との折り合いをつけながら子育てをし、仕事もし、覚悟ていたものよりずっと上等な「普通の生活」を送っている。
 
けれど運動からは相変わらず遠ざかっていた。せいぜいウォーキングが関の山。汗をかくような運動は極力避けてきた。そんな中、引っ越しを機に主治医を変えたところ、それまでの先生とは打って変わり適度な運動を勧められた。新しい主治医曰く「適度な運動」には、水泳やランニングの他なんと「バレエ」も含まれるというではないか。
 
私の中に眠っていたバレエに対する思いが急に引っ張り出された。楽しかった思い出。突然もぎ取られた未来。色々な思いが混ざりあって押し寄せてきたが、今の私は15歳の感傷的な乙女にあらず。三十路をとうに過ぎ、2児を育てる肝っ玉母ちゃんだ。
 
そんなわけで、家からほど近いバレエ教室に通うことにした。久々なこともあり、初心者が多く在籍する「大人クラス」と呼ばれる時間帯を選んだ。平均年齢50歳越え。私が入ったところでその値はびくともしない。気のいいマダム達が連日汗を流していた。
「美容と健康のため」という人もいれば「折角だから上手になりたい」と毎日通っている人もいる。50の手習いながらトゥシューズにチャレンジするため日々頑張っている人も少なくない。おば様たちのモチベーションはそれぞれだ。
しかし私はというと…、
「決して無理はせず、楽しいことを第一優先」をモットーにしている。
 
経験者なんだからもっと積極的になればいいじゃない。 と言ってくれる人もいるが、自分でも拍子抜けするぐらい、私はもう「上手くなりたい」という気持ちがほとんどない。
確かに長くバランスが取れたり、ピルエット(回転)が1回より2回、3回と回れた方が気分がいいかもしれない。けれどそれよりも今は「自分の体の声を聴きながらじっくり練習したい」という気持ちが大きいのだ。レッスン中も、何が何でもポーズを決めたり、バランスを取ろうとしたりせず、姿勢や呼吸、脚の出し方など、一つ一つの動きを丁寧に確認するようにしている。
 
10代の時、大好きだったバレエは、いつの頃からか「楽しい」ではなく「競争」になっていた。しかもそれは完全に独り相撲だった。そしてその結果、無慈悲にも距離を取らざるを得なくなってしまった。でもその断絶がかえって私のバレエへの純粋な思いだけをろ過し、今またバレエに引き寄せてくれている。人生とはなんて不思議なんだろう。一生懸命背伸びをし、がむしゃらに頑張り切ったからこそ、いま肩の力を抜くことができる。病気と歳月という距離が私とバレエとの新しい関係を築かせてくれた。
 
他人と比べず自分のペースで、これからもバレエと、そして自分と向き合っていきたいと思う。
 
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2017-10-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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