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メディアグランプリ

美容室迷子からの卒業


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Minami(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
私が住んでいる地域は、美容室激戦区だ。
5歩も歩けば次の美容院が出てくるほどひしめき合っているのに、私は美容室迷子だ。
この地域の美容室だけで、もう3か所行っている。1か所目は5年、2か所目は1回だけ。

3か所目はここ半年通っていて、お気に入りだった。
最初のシャンプーもないし、ムダなおしゃべりもない。髪を染めるだけならちょうど1時間で終わるスピードもいい。見送り時に「はい、チョコ」と手渡してくれる小粋なサービスもある。しかも、23時まで営業しているので会社帰りにも通えて便利がいい。

何より私が嬉しいのは、この美容師さんの存在だ。髪に関することはしっかり質問してくれ、説明もしてくれる。よくある「今日はお休みですか~」「何のお仕事ですか~」「おやすみとかは何しているんですか~」のたぐいの質問を一切しない。そこが大好きなのだ。

それなのに、私は美容室迷子になった。きっかけはいつも一緒だ。
予約が取れない、ただそれだけのことだが、電話に出た人の一言に傷ついたのだ。

私が予約の電話をかけて出た男性の応対者は「予約いっぱいです」と答えた。別日程の提案もなくそのまま無言になった。早く電話を切りたいという気配を感じ、悲しくなった。担当の美容師さんが電話に出ているわけではないのはわかっている。

お客様はわがままだ。
たとえ、月2回の髪染めしかしない私でさえも、「あ~残念です、この日だったら空いています」「この時間なら1時間だけ、とれそうです」「だめもとで聞いてみましょうか」と大切な人と思わせ、だまし切る努力をしてほしい。一番のお得意様だと思い込ませてほしい。

会社を作ったときのことを思い出す。お客様は一人もいなかった。事務所に電話がかかってくると、飛びついて出た。それがセールスの電話であろうと机に頭をこすりつけながら、お礼を言って電話を切った。お客様がいないことの悲しさは、相当な心の痛さがあることを知っているから、余計に「早く切りたい」感が悲しくなった。

でも、実は、人のことは言えない。
私は研修講師をしているが、最近、あるクライアントで研修担当者を怒らせた。ここ3年続いている定番プログラムがある。この怒った担当者は1期生であり、内容がわかっているため、今回の3期生のフォローをメールで頼んだ。

帰ってきたメールには、「それは私の仕事ではないし私も忙しい。ついでに言うと、参加者も今忙しいからフォローされることも迷惑だ」とはっきり書いてあった。お昼を一緒に食べに行くような仲で、良好な関係を築けていたと思っていた私は、絶句した。

「フォローされることも迷惑ってどういうこと」と私は憤慨したが、
実際のところ何が起きているのか、何に怒っているのか理由がさっぱりわからなかった。

慌てて電話すると、その研修担当者は怒りの感情を露わにした。
部下に指示を与えるような私の当たり前表現が癪にさわったのだ。

電話で「1期生でもあり、研修担当者でもある○○さんだからこそフォローできると思ったので頼んでしまいました、甘えてしまったかもしれません」と言い訳したら、「そうですね」と言われた。

「おごり」は人を遠ざけてしまう。
私の言葉に傷つき、悲しい思いをさせてしまった。一番のお得意様と思い込ませるどころか、「私はあなたの部下じゃないんだからいい加減にして」と思わせていた。自尊心を傷つけたのだろう。ずっとお客様でいてくれる、何でも頼める間柄という甘えがあった。

研修担当者のメールからは、まだ怒りが冷めない様子だが、それでも私はあきらめずに関係修復の行動を続けようと決めている。調子に乗っていたのかもしれない。「おごり」が出たときには、相応のしっぺ返しがくる。

私はお客様のことを「昔、命を助けてもらった恩人」のような存在と思って接してきた。神様だと遠すぎるので、恩人なのだ。一生お仕えする心づもりで、飽きられないように努力してきたが、今、創業当時からのお付き合いの会社の研修担当者を怒らせている。

初心に戻ろう。
立ち止まって、最愛のお客様のことをもう一度考える時間を作ろう。
軽んじたり、当たり前のような態度を取れば、すぐ目の前から消えてしまう。

昨日、希望の風は吹かなかった。
党首は、「私の発言におごりがあった」と敗戦の弁を語っていた。

看板(知名度)なし、地盤(顧客)なし、鞄(創業資金)なしでも、いろんな人に協力いただいて、仕事が決まったあの日を思い出そう。「仕事が決まった」と初めて聞いたのは新幹線の中だった。新幹線の通路で携帯電話片手にひれ伏すようにおじぎをした。人の縁と感謝で心がいっぱいになった。

あの日を思い出し、おごりを捨て、一歩前に進もう。
美容室なんてたくさんあるから次を見つければと思っていたのも私のおごりだ。

美容室迷子の私からも、そろそろ卒業しよう。
「この間ね、悲しい思いをしたの」と
冗談交じりに話し、一生お仕えしてもらえる美容室を作ろうと思う。
 
 
***

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2017-10-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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