メディアグランプリ

とりあえず空港へ。


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記事:御手洗智美(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
 落ち込んだとき、疲れたとき、考えごとをしたいとき、とりあえず空港へ行く。
国内線、国際線、どちらも良さがあるが、おすすめは国際線のロビー。ベンチに座って読書なんてしていると、側から見れば、「もうスーツケースを預けて、海外へ出発するまでの時間を過ごしている人」にしか見えない。お手軽に旅人感を味わうことができる。ぼーっと過ごしていても、考えごとをしていても、日々色々なことを抱えて疲れきっていても、空港ではただの旅人として見られる。
見られるだけではない。今から旅立つ人たちがまとった非日常感に流されて、なんとなく自分自身も旅人気分を味わうことができる。しかも無料で。無料なのに、旅に出る前のわくわく感も感じられる。なんとお得。
飛行機の時間を気にしなくていいので、好きな場所に好きなだけ滞在していていいという利点もある。素敵だ。

 かくいう私も、決して昔から空港が好きだったわけではない。飛行機なんて全く興味もない。旅は好きだったが、間違っても空港が好きなわけではなかった。
私が空港を好きになったきっかけは、お世話になっていたピアノの先生にある。

 高校生の頃、十二年以上習っていたピアノを受験勉強のためだかなんだかで、泣く泣く辞めることにした。練習は嫌いだったが、ピアノを弾くことは好きだった。保育園の頃からお世話になっていた先生のことは、もっと好きだった。先生とのレッスンもあと数回だけになった頃、二人でお茶をしようということになった。

いつも香水のいい匂いのする、優しくて綺麗な先生。憧れの先生と二人だけでお茶に行くという、当時としては大人の階段を登りに行くような機会に、私は舞い上がっていた。
行きたい場所を聞かれたが、胸がいっぱいで、特に何も思いつけなかった。

「じゃあ、空港でお茶しよっか!」

先生はその辺のスーパーに行くような気軽さで、私を空港に誘った。

 それまで私は、空港という場所は、飛行機に乗ってどこか遠くへ行くときにしか用のない場所だと思っていた。それ以外の目的で空港へ行く人は、飛行機そのものを見るのが好きな飛行機オタクたちだけなんじゃ、とまで思っていた。
「飛行機にも興味はないし、空港なんて行って、どうやってお茶するの? 先生実は飛行機オタク??」とまで心のなかで思った。
実際は、何も知らない子どもだと思われたくなかったので、なんてことない風を装って先生について行った。すまして、「母ともよく行くんです」くらいの嘘もついたような気がする。

 内心ドキドキで行った空港は、カフェだけでなくいろいろとお店もたくさんあって、座る場所も多かった。案外ゆっくりできる場所なのだと、その時に初めて知った。いつもとは違う、少しはしゃいだ様子の先生が見れたもの嬉しかった。

 今となっては、空港でどんな話をしたのか、うろ覚えだ。でも、空港の中にある、飛行機の見えるカフェでお茶をしたことは覚えている。周りに座っていた人たちも思い出せる。今から旅に出発するような家族、誰かの帰りを待つようなご夫婦、出張中のビジネスマンなど……。年齢も性別もバラバラな彼らは、共通して非日常の空気をまとっていた。そんな人たちの中でお茶をするのはとても新鮮だった。先生が私を子ども扱いせず、対等に話してくれたのもあるかもしれない。窓の外を飛ぶ飛行機が、青空に向かって飛んでいったり、帰ってきたりする様子を見ながらお茶をするのは、今までにないとても痺れる体験だった。将来の話、お母さんには言いづらい話、悩んでいること。先生は友だちのように、私の話を聞いてくれた。たぶん、私はそこで大人の階段を一段登ったのだと思う。
 

 それからというもの、私はことあるごとに、空港に行く。当時の先生と同じように、スーパーに行くような気軽さで、空港に向かう。
不思議なことに、本当に旅に出るために空港に行くときよりも、何もなくて空港に行く時の方が好きなくらいだ。これからどこに向かうか、妄想を膨らませ放題だからなのかもしれない。

何かを考えたい時も、何も考えたくない時も、非日常の空気をまとった人たちの中で過ごす時間は特別なものになる。あの時、先生が空港の素晴らしさを教えてくれていなかったら、今の私はない。飛行機に興味がないのに、こんなに頻繁に空港にいっているのが私だけではないと信じたい。ちなみに、あとでわかったことだが、先生は飛行機オタクだった。フォルムが好きなのだそうだ。

私のように、ただ空港が好きで行く人も珍しいかもしれない。でも、とりあえず空港へ行ってみてほしい。きっとあなたも、あの特別な時間の虜になる。

 
 
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2017-10-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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