メディアグランプリ

自分の悪い癖をどうやって捉えるか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中健太(ライティングゼミ平日コース)

 

 

「どうしてそんなに私のことばっかり悪者にするの?」

ああ、またやってしまった。僕の悪い癖が出てしまった。

彼女は目が涙でにじみ、今にも泣きそうである。

これ以上刺激するとせき止めていたものが決壊して涙が止まらなくなってしまうだろう。

この光景、もう何度目だろうか?

 

彼女は僕と会うたび友人との間に起こった出来事や、以前見たテレビやSNSで知った雑学、はたまた好きなお笑い芸人のネタなどを話してくれる。僕は楽しそうに話してくれる彼女を見ながら過ごすこの時間を、久しぶりに会ったときの楽しみにしている。確かに楽しみにしているのだが、「それは違うんじゃないかな」と途中で彼女の話を遮って止めてしまう。そのたびに彼女が不満そうに視線を僕に向けているのを見てきた。

 

僕には、「良くないから治さなくては」と思っているがなかなか治らない癖がある。

深く根をはった雑草のように、どれだけ刈ってもまた出てきてしまうのだ。それもいろいろな場面で出てくるから厄介だ。

この癖が人に役に立つものであればよかったのだけれど、僕の場合は彼女を不快にさせてしまっている。

 

僕は話の辻褄が合わないと思うと、すぐにその内容について追求してしまう癖がある。

彼女がしてくれる話の中で、少しでも食い違うところがあるなと感じてしまうとすぐに彼女の意見を修正してしまう。

間違っている言葉の使い方を正したり、誰のことを話しているのか分からないと話の主語が誰なのかを問いただしたり、行き過ぎると鼻歌交じりに歌っている歌詞の中で間違っている箇所があると指摘していた。

彼女に心を許してしまっている分、間違いを指摘することに対する抵抗感が薄くなっているようだった。

 

誰がされても「嫌だなぁ」と感じる僕の悪い癖を、彼女は寛容に受け入れてくれた。その優しさに甘えて思い上がってしまったのか、彼女の意見を指摘する頻度がどんどん多くなった。その回数が増えればもちろん、彼女にのしかかるストレスも増えていく。いくら寛容だからといっても、溜まっていく負のストレスはいつか爆発する。僕が溜めさせてしまったストレスを爆発させるたびに、彼女は涙ぐんでいた。

 

これが悪い癖であると自覚し始める前は「理系の、ましてや大学院生だから理論的に正しいことを追求するのは当たり前ではないのか」と自分で納得させていた。確かに大学院生として、ものを批判的に見る視点は養われるのかもしれないが、人間として最低な奴である。相手への思いやりの欠片もない。

 

彼女と何度も衝突を起こす中で、その原因が自分にあるのではないかと感じられるようになってきた。

さて、どうしようか?

この悪い癖を治そうと自分なりに頑張ってみたが、なかなか上手く行かない。

庭に生えてきた雑草のように刈り取ろうとしてみるのだけれど、すぐに生えてくる。

道端に生えた雑草のように無視してみるのだけど、気になってしまう。

なんてしぶといのだろう。

刈り取ること、無視することにばかり注意を向けていると、目の前の彼女との会話に集中できなくなった。

「ちょっと、ちゃんと話を聞いているの?」と言われることが増えた。

はい、ちゃんと聞いてはいます。

話の腰を折らないように徹底しようとするほど、気になってしまった会話の一節が頭から離れてくれなくなった。

こんどはそれが僕のストレスとなり、彼女との話が少し億劫になった。

 

僕は自分の話の辻褄を合わせようと指摘してしまう癖を、雑草のように「邪魔なもの、なくても良いもの」として頑張って刈り取ろうと努力してきたけれど、上手く行かない。

だったら、見方を変えてみよう。

雑草のように忌み嫌うのではなく、野草のように愛でてみてはどうだろうか?

道端に咲くタンポポを雑草という人もいるけれど、「可愛らしい花」として愛する人もいるだろう。だったら僕のこの癖も僕が嫌ってしまうのではなく、愛せるようにしてみたら何か変わるんじゃないのか?

 

それから僕は、自分の癖を愛するように努力してみた。

するとどうだろう、彼女と話すことが以前よりも楽しみになっていた。

話の辻褄が合っていないところが気になるということは、それだけ会話の前後関係が把握できているということだ。ということは、この後どうやって僕が会話を切り返したら彼女との話が盛り上がるのかを知ることが出来る。彼女の笑った顔が見ることが出来る。これほど嬉しいことはない。

 

僕には自分はまだ気がついていないだけで、人を不快にさせてしまっている癖があるのかもしれない。でも、もう大丈夫。その癖をきちんと愛する方法を知れたのだから。

 

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2017-11-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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