メディアグランプリ

一つの写真で世界が広がる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中澤一志(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「素敵な写真をありがとうございます。街はこんな風に変わるんですね」
 
インスタグラムにアップした写真にもらったコメントは思いもしないもので、正直、驚いた。写真は出張で初めてその街に行ったとき、思わず撮ってしまったものだった。こんな風に御礼を言われるような写真だっただろうか? 写真を撮った時の光景が再び頭をよぎる。
 
数時間のフライトの後、空港に着いた時には既に20時をまわっていて、辺りは真っ暗だった。タクシーに乗り、予約しているホテルへと向かう。周りは真っ暗で、よく見えない。前を走る車のテールランプの光しか目に入らなかった。20分くらい走った後だろうか。だんだんと街の中心部へ近づいてきた。道路の周りにも建物が増えてきて、明るくなってきた。もう少しで着くのだろうか。そんなことを思いながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
 
ちょうどその時だった。想像もしていない景色が目に飛び込んできた。本当に美しくて、驚いた。大きな川に面して、ライトアップされた美しいヨーロッパ風のレトロな建物がずっと先まで立ち並んでいた。堂々とそびえ立つ建物は、暗闇の中で光り輝いている。反射した光は真っ黒な川の水面にゆらゆらとゆらめき、まるで建物が浮かんでいるかのようだった。そして、その建物の後ろには、近代的な高層ビル。この不思議なコントラストがさらに景色を幻想的なものにしていた。今、自分はどこにいるのか、訳が分からなくなってしまいそうだった。だから、思わず写真を撮ってしまったのだ。
 
「綺麗ですね」というようなコメントが来ることは予想できた。けれども、御礼を言って頂けるなんて、思いもよらなかった。そして、それに続く「街はこんな風に変わるんですね」という、謎めいたコメントも気になった。どういうことなんだろう? 昔、行ったことがあるのか? それとも、以前住んでいたことがあるということなのだろうか? いろんな想像が膨らみ、頭の中がいっぱいになってしまった。
 
疑問を解消したい。そう思う一方で、コメントをくれたのは会ったこともない人である。あまりむやみに質問することがためらわれた。でも、嫌ならば返事が返って来ないだけだと開き直り、質問を返してみた。すると、少しして、返事が来た。
 
「先日まで読んでいた小説に明治後期の天津がたびたび出てきていたんです。街はこんな風に変わるのですね」 
 
小説を読まれてのコメントだった。予想とは違ったけれども、疑問が解けてすっきりした。だけれども、その後の部分、「こんな風に変わるのですね」というのはやっぱりイメージできない。そもそも中国の天津はどんなところかと聞かれても、特にこれといったイメージはなかった。思いつくのは、天津甘栗とか、天津飯くらいである。大きな港町かもしれない、そんなイメージしかなかった。こんな風に変わると言われても、全く想像できなかった。だから、その小説をどうしても読んでみたくなった。読んだら、今とは違う景色が想像できるようになるはずだ。そう思ったら居ても立っても居られず、続けて本の題名を尋ねてみた。それは浅田次郎の「蒼穹の昴」という小説だった。
 
写真一枚をきっかけに、本当に面白い小説に出会うことができた。写真をアップした時には想像もしない、不思議な出会いだった。一枚の写真からこんなことが起きるなんて、写真とは面白いものだと思った。同じ写真を見ても、そこから感じることは人それぞれ異なるわけだ。写真とは、ある一瞬を切り取ったものにもかかわらず、そのとらえ方はひとりひとり変わる。改めてその面白さがわかった気がした。逆に言うと、その一枚の写真で、こんな切り口があるのかと驚かされたり、なにか想像してしまうような写真が良い写真ということなんだろう。
 
写真に改めて興味がわいてきた。ここ数年、いろんなところで一眼レフカメラを持っている人を見かけるので、自分も始めてみたいと思ったことは何度かあった。しかし、結局始めることはなかった。何かもうひと押しがなかったのだ。でも、今回は少し違う。最近、文章を毎週書くようになってから、何か面白いことはないか、どうやったら面白いと言ってもらえる文章になるのかをよく考えるようになった。それと同じように、写真を撮ることでモノの見方や考え方が変わるような気がするのだ。一瞬、一瞬の小さな変化に気づくようになる気がするのだ。
 
こんな気になってしまったらならば、始めるしかないと思う。そうだ。今度こそ、その世界へ一歩踏み出してみよう。
 
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2017-11-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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