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疑問が確信に変わったとき


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記事:yukari(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「お母さんは私のことを愛しているのだろうか?私が幸せになることが許せないのだろうか?」そう思ったのは、母が頑なに私の結婚式に来ないと言ったときであった。
 
幼い頃から私の両親は夫婦仲があまり良くなく、母は父の文句ばかり言っていたが、専業主婦の母は離婚という選択肢をとることはできないようだった。
だから、母は私に「一人でも生きていけるように、安定した職業に就きなさい。公務員になったらいい」と事あるごとに言った。
子供だった私は母の言うことを素直に信じ、結局公務員として働くことになった。
母に結婚したいと伝えたとき、「せっかく公務員として働いて一人で生きていけるのに、結婚する必要があるのか」と反対した。その後、何度か夫に会い顔合わせをしても、「結婚してもよい」「だめ」と態度を二転三転させ、結局式に来なかった。
 
思い返せば、母はいつも口うるさく、私の話に耳を貸さず自分の意見が絶対だという態度で私に接してきた。
また、話の内容はいつも不平不満で愚痴ばかり。たまに実家に帰ればそのような話ばかり聞かされた。少し思うことがあって口を挟めば怒られ、私は母に怒られないようにいつも気を遣っていた。だから、私は母が怖く母に甘えたりコミュニケーションを取ったりすることが苦手になっていた。
それでも、私にとっての母は1人であり他の母親と比較する機会もなかったため「どこの母親もそんなものだろう」と思っていた。
 
しかし、夫の母親と話した時、私を実の娘のように明るく親切に接してくれるのを目の当たりにし、「実の親に気を遣って話さなければいけない関係はどこかおかしいのではないか?」という違和感を持った。
その一方で、一般的には実の母と娘は仲が良いのが普通とされている中、それに当てはまらない自分がおかしいのだという罪悪感もあった。
そんなとき、ふと、ネットで「実母 苦手 おかしい」などと検索したら、同じような人がいて、なんだか「自分だけじゃないのだな」とほっとした。
 
そこで紹介されていた「毒になる親」という本を読んで衝撃を受けた。
それに書いてあったことと、自分の幼少期の経験、その時点での自分の性格をあてはめていくと、自分の親は「毒になる親、いわゆる毒親」と呼ばれるもので、その影響を受け無意識に自分の意思を抑え込んでしまい、我慢をしすぎて生きづらくなるということが分かった。
それを読んで、私は「母のせいで自分の人生が奪われた」と感じ、怒りに燃えた。
そして、「娘の結婚式にも来ないような母と連絡を取る必要もない」と互いに連絡をとらないことにした。
 
それから3年余りが過ぎた。
初めは、「親のせいで自分の人生が台無しになった」と怒り狂って、その後は「これまでの20数年は何だったのだろう」と悲しい気持ちになった。その後は気持ちを切り替えようと「親に対して怒っても親を変えることができないし、自分が変わるしかない。」というのと「そうは言ってもなぜ親が悪いのに自分が変わらないといけないのだろう」という間をさまよいながら、カウンセラーに話を聞いてもらったり、今まで他人の顔色ばかり気にしていたのを「本当の自分はどうしたいのだろう?」と考えるようにしたり、自分の思うことを他人に言ってみたりすることで、知らず知らずのうちに母を通して全ての人に対して持っていた恐怖心が薄れていった。
 
「今なら母と話しても普通に話せるかもしれないな」と思っていたとき、今まで連絡がなかった父から連絡があり、せっかくなので会ってみることにした。
この頃、出産を間近に控えていたが、結婚を反対されており、世間の親と違い孫という存在に全く興味がなさそうな両親であったのでそのことを伝えるのにも勇気がいったが、意外なことに喜んでくれ、安産守りまでくれた。
今では、孫にデレデレである。若干虫がいい気もするが、昔のようにあれこれ口を出すこともなく自分の娘をかわいがってくれるのは嬉しい。
 
いろいろあったが、私も母になり、少し母の気持ちが分かるようになった。
まず、子供を育てるのは非常に手間がかかり、面倒なことが多い。
そんなとき、「母も私に同じようにしてくれたのだろうな」と自然と感謝の気持ちが湧いた。
私は子供を生むまで「お母さんというのはこういうものだ。私を愛してくれているならこういうことをしてくれるはず」という理想の母親像を持っており、それとずれていると「母は私のことを愛していないのだ」と思っていた。
しかし、娘を出産し、それが間違っていたと分かった。
娘は好きでも、苦手でできない、やりたくないこともあるのだ。
そのとき、やっと母親も意思を持った一人の人間であると認識できた。
 
それから母と話すと、以前の母とは違ってみえた。
「なぜ私の結婚式に来なかったのか。どう思っていたのか」と聞いたとき、
「あなたが幸せでいてくれればそれでいい。離れるのが寂しかった。」と母は言った。
そう思っているのに、娘の結婚式に来なかった母の行動を私は未だに理解することができない。それ以外にも理解できない行動はたくさんあるし、今から一緒に買い物へ行ったり旅行へ行ったりする仲良し母娘にもなれない。家族ならなんでも理解できる、仲良くなれるというのは幻想だ。
でも、ふと気づいた。
 
「母は、母なりに私のことを愛してくれていた。そして、今も。」
 
***

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2017-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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