メディアグランプリ

忙しいからこそ、ハンドドリップでコーヒーを淹れる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中澤一志(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
そんな心の余裕は、今はないな。
 
コーヒーをハンドドリップで淹れる体験ワークショップがあると聞いた時の私の最初の感想だ。
 
最近、結構忙しい。だから、休みの日にはできるだけ無駄なことは省いて時間を捻出したいと思ってしまう。そして、今はそういう風に効率的に生活することを助けてくれる便利なものであふれている。スマートフォンがその一例だ。すぐに、簡単に、欲しい情報が手に入る。ショッピングだってクリック一つで24時間いつでもどこでもできてしまう。本当に便利だ。だから、ハンドドリップでコーヒーを淹れるという行為が、その真逆の行為のように思えてしまったのだ。何というか、すごく時間に余裕がある人のためのとても優雅な行為という感じだ。そうありたいのは事実だけれども、今の自分とは少し違う感じだ。確かに、ハンドドリップで淹れたコーヒーは美味しい。私もコーヒーは好きで、たまにハンドドリップで淹れてくれる、こだわりのお店に行くこともある。そこで飲むとやはり違うと思う。でも、それを自分でやるかと言えば、それには少し抵抗があった。時間と手間がかかるからだ。そもそも道具を揃えないといけないし、後片付けもいる。だから、美味しいコーヒーを飲みたければ、そういうお店に行って飲めばいい。そう思ってしまったのだ。
 
でも、一方で、お店の様子を写したのだろうか、落ち着いた雰囲気のある写真と、ワークショップに関する魅力的な告知文に心が惹かれた。このお店のことをもっと知ってみたいと思った。この素敵なお店を、京都に出かけたときに寄ることができるお店の一つにしたくなったのだ。だから、結局のところ、別にハンドドリップは時間が出来たときにやればいいというくらいの軽い気持ちで、この体験ワークショップに参加してみることにした。
 
ワークショップの会場に入ると、既にポットやドリッパーが人数分、机の上に用意してあった。参加者は5人。一つの机の上でじっくり話を聞き、実際に自分で体験するには、ちょうど良い人数だ。気分が高まる。しばらくすると、参加者、そして、講師であるコーヒー店のご主人が揃った。そして、静かにワークショップがスタートした。まず、道具の説明から始まった。次に、分量を正確に測り、時間をきっちり守ることが重要だということを教わった。その一連の動作を時間通り正確に行うために、何度か練習を行った後、とうとう実際にコーヒーを抽出してみる時間になった。まず、コーヒーの粉の量を正確に測り、粉の面が平らになるようにドリッパーにセット。そして、静かに小さな円を描きながらお湯を注ぎ始める。円は段々と大きくしていくけれども、最後はまた中心に戻す。そして少し待つ。蒸らしの時間だ。香ばしい香りが広がってくる。一定時間、蒸らし終わると、次は抽出開始。またゆっくりと円を描きながら、お湯を注ぐ。お湯が粉の上に広がり、粉がふわっと膨らむ。その膨らみがじわじわと小さくなっていき、一滴、一滴、コーヒー色に染まった液体がドリッパーから下のコップへぽとぽとと落ち始めた。これを何度か繰り返す。すると、一滴づつだったコップに落ちるコーヒーが、線状に変わる瞬間が訪れる。コーヒーの通り道ができた瞬間だ。こうなると、次の段階。もう少し、注ぐ量を増やしていく。どんどんとコップにコーヒーが抽出されていく。そして、所望の量の抽出ができれば、終了。やってみると、案外あっという間だった。
 
このコーヒーの抽出時間は、人それぞれだった。とはいっても、違いは長くても数十秒程度だ。でも、この差が味に大きな変化を与えていた。短い時間のものはすっきりとした味わいで、浅煎りコーヒーのようだった。一方で長めのものは、どっしりとした舌触りがあり、ほどよい苦みのある深い味わいだった。たった数十秒の違いでこんなにも変化があった。その違いに本当に驚いた。そして、その奥深さに興味が湧いた。
 
でも、最も驚いたのは、飲んだ後の自分の気持ちの変化だった。一定時間集中してコーヒーを淹れ、その美味しいコーヒーを飲んでみると、頭の中がすっきりしている自分に気づいた。前日も仕事がごたごたして遅くまで残業し、その日もそのモヤモヤを引きずっていた感じだったのに、自分でハンドドリップしたコーヒーを飲んでみると、なんだか幸せな気分になったのだ。決められた動作を忠実に実行し、美味しいコーヒーを得る。その一連の動作が、びっくりするほど気分転換になっていた。あのラグビーの五郎丸選手のルーティーンもこういうことなのかもしれない。決められた動作を忠実に行うことで、気持ちが切り替わり、集中できる。彼のルーティーンだけを見てしまうと、非常に特別なもののように思えてしまうが、集中してコーヒーを抽出するという身近な動作でも同じように気持ちを切り替えることができるのかもしれない。
 
忙しいから楽をしよう、手間を省こうと思っていた。そうやって時間を捻出しようと思っていた。でも、そういう焦った自分から少し離れて、良いものを得るために時間をじっくり使ってみること、そしてその時間、その作業に集中してみることは、使った時間以上に大きなものが得られた。引きずっていたモヤモヤ感を吹き飛ばし、狭まっていた視野が広がった。まさにリセット出来た瞬間だった。
 
また、忙しい1週間が始まる。忙しさのあまり、また心に余裕がなくなってしまうかもしれない。でも、そんな週の週末でも、ゆっくり時間をかけてハンドドリップでコーヒーを淹れ、その時間を楽しみたいと思う。それで気分を切り替えられるはずだ。
 
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2017-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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