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メディアグランプリ

面白くなかったら嫌だから大好きな小説の続編は読まないという選択


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山田あゆみ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「面倒くさいから、携帯はいらない」
そう言ったのは、私だった。
 
友達は、私の両親が携帯電話も持たせてくれないほど厳しいと思っていたようだったけれど。
選択したのは、私だった。
 
高校生の頃、携帯電話を持っていなかった。
私はとてつもなく怖かったのだ。携帯のある生活が。
 
あの頃、中学生になると携帯電話を持っているクラスメートが急増していた。
恐らく半分以上の生徒が持っていたのではないだろうか。
そして高校生になると、私以外のクラスの全員が持ってた。
 
みんな持っているのに一人だけ携帯を持っていないという生活は、不便だった。
 
連絡網が回ってこなかったこともあった。
みんながメールで連絡をしているので、固定電話に電話するという習慣はほとんど失われていた。
 
友達は、遊びの連絡をしようと思ったら、私の家の固定電話にかけなくてはならなかった。
今、考えると大変申し訳ないと思う。
めんどくさいことこのうえなかったはずだ。
固定電話にかけてまで、遊びに誘ってくれていたなんて、今思うと良い友達を持ったものだ。
 
みんなが、メールするねと言い合っているのに、一人だけその輪に入ることが出来ないのは、寂しかった。
でも、あの頃の私は、携帯電話をコントロールできる自信が全くなかった。
 
携帯があるということは、いつでも誰かと連絡を取ることが出来るということだ。
つまり、連絡が来ない時間にも、連絡をもらえる可能性は常にあるわけだ。
私は、自分の時間に連絡がどんどん来るのを、わずわらしいと思った。
でも、それ以上に、連絡を受けられる状態なのに、誰からも連絡が全然来なかったら、耐えられないと思った。
それが、怖かった。
そんなことを恐れるくらい、ものすごく臆病だったのだ。
誰かにメールをしたとして、返ってこなかったらきっと、何で返ってこないのか、とやきもきして、そればかりが気になって、他の事が手につかないと思った。
だから、それならばいっそ持たないことにしたのだ。
 
今考えると、高校生の頃の私は、心配になるくらいに、心の弱い人間だったと思う。
 
もしも面白くなかったらがっかりするからと、大好きな小説の続編を読まないのと同じような選択をしていたわけだから。
 
大好きな小説に続編が出ると聞くと、たいていいつも面白くなかったらどうしようと心配してしまう。
本当に好きな物語であればこそ、思い入れが強い。
もしも、続きが期待外れなものだったら、1巻目の価値までもが下がってしまうような気がして、怖いと思う。
 
いざ、読んでみると、続きの方がさらに素晴らしいこともある。
大好きな作品の続きを読むことが出来たことに底知れぬ喜びを覚えることがある。
 
あり得るマイナスの可能性に怯えて、ひるんで、行動しないことで大事な「機会」を失ってしまうのは、とても残念なことだ。
 
確かに、続編が1巻目よりも面白くないこともある。
もったいないとは思う。
がっかりもする。
 
でも、結局読まないという選択をした場合、ずっと、続編はどんな内容だったかが気になって仕方がない状態になってしまうのだ。
 
結局、気になっているのにやらないという選択をしてしまったことは、気になり続ける。
 
何事もやってみないとわからない。
やってみなかったら、わからないが為に、いつまでもそれが気になり、それにとらわれてしまう。
 
あの頃、携帯電話を持っていたら、広がった世界もあったかもしれない。
当時好きだった人にアドレスを聞かれた時、ごめん、携帯持ってないんだと伝えるのはとても悲しいことだった。
持っていたらメールをやり取りすることができたのに。
もしかしたらもっと仲良くなれたかもしれなかったのに。
そのチャンスを手放したのは、自分自身だった。
 
今でもその人が私のアドレスを聞いてくれたその瞬間を、鮮やかに覚えている。
「教えて」
と、携帯電話をしゅっと開いたあの瞬間を。
 
それはたぶんやらなかったことに対する後悔だからだろう。
もう何年も前のことなのに。
 
上手くいかないかもしれないことに挑戦するのは、とても怖いことだ。
失敗したら、すごく傷つくだろう。
でも、傷つくことを避け続けて、何か得られるだろうか。
傷つくのは怖いけれど、それを避けて無感動で平坦な毎日を得ることが出来たとして、それは楽しいだろうか。
 
傷つかない道ばかりを選んでしまうと、自動的にどうしても感動や喜びからは遠い場所に進んでしまうことになるのではないだろうか。
 
何かに挑戦しようか、新しいことをやってみようかと思うとき、気が付くとやらないための言い訳ばかりを探してしまっていることがある。
 
笑われるかもしれない。
立ち直れないかもしれない。
 
そんなマイナスの可能性の波に流されて、しないという選択に向かいそうになる時、私はいつも携帯電話があったかもしれない高校時代を思う。
 
メールが来ないと悶々とする時間も、もしかしたら、それはそれで、後で振り返ったら良い思い出になったかもしれないのにな、と思いながら。
 
***

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2017-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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