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その使い方、あってますか?


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記事:Shinji(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
本来の使い方と違った使用法が一般的になっているものが多い。
代表的なものが「自転車のブレーキ」だ。
 
歩道を歩いていると後ろから
「キキーッ!」
びっくりして振り返るとそこには自転車に乗った人が。
気づいて道を開けると、自転車は何事もなかったかのように華麗に通り過ぎて行く。すれ違いざまにハンドル部分を見ると、そこにはちゃんとベルが付いている。
 
「どうしてそのベルを鳴らさない?」
 
ブレーキの音でも結果的には前を歩く人に警告できているので目的は達成しているが、何か納得行かない。
「チリンチリン」とベルを鳴らすことが失礼に思うのだろうか?
 
「別にどいてくれとは言ってませんよ。ただ、あなたの後ろに自転車に乗った私がいます。気づいてください」
と控えめに警告しているつもりなのだろう。
ブレーキの音を聞いて、前を歩いている人は
「あら、ごめんなさい。邪魔だったかしら?」
と気づいて道を譲る。
いかにも日本人らしい奥ゆかしさが溢れるやり取りだ。
 
本来車体を止めるために装備されているブレーキ側の気持ちを考えると、
「こんなはずじゃなかったのになぁ」
と思っている事だろう。
ブレーキの音にしろ、ベルを鳴らすにしろ、結果的には同じなのだからどっちでも良い。なのに、なぜ僕はこんなに小さい事にこだわるのか? 
それは、僕自身が先日味わった体験に端を欲する。
 
事件前日の朝から喉に違和感があった。
昨年、扁桃腺が腫れて2回も入院した僕にはこれが何を意味するかがわかる。
明らかに熱の出るフラグ第1形態だ。第1形態はやがて唾も飲み込めないほどの痛みを伴って襲いかかってくる。放って置くと、シンゴジラのように形態を変えて襲って来る。
「今日は早めに帰って養生しよう」と思っていたが、事態は思ったよりも加速が早かった。
 
昼前には体の節々が凝りだした。滅多に凝ることがない僕の肩が凝りだした時、そう、熱の出るフラグ第2形態だ。第2形態はやがて懲りを痛みに変えて襲ってくる。
第1形態の時点で手を打っていればよかったが、少し遅かった。まだ周囲の人は僕の異変には気づかず、僕の中の被害は人知れず拡大中である。
ここまで被害が確認されているにもかかわらず僕はまだ手を打たなかったため、さらに事態は悪化する。
 
昼休みが終わった頃には背中を中心に悪寒を感じだした。外は真夏日なのに、いくら着込んでも寒い。どうやら敵は第3形態へと進化した。第3形態はやがて震えを携えて襲ってくる。
たまたま仕事がたてこみ、もう限界だとわかっていてもまだ手を打たない僕。極めて日本人である。決断が遅い。
 
午後3時。ようやく会社を早退することにし、家路に着いた。病院に寄ろうと思ったが、全身を包む「だるさ」を和らげるためにとりあえず横になりたくて、まず家に帰り、横になった。すると間も無く咳が出だした。もうお分かりだろう。第4形態だ。この第4形態はやがて夜眠れなくなるほどの攻撃頻度と、咳をするたびに激しい器官の痛みを伴い襲ってくる。
こうなってくると、もう手遅れである。病院へ行きたくても、もう起き上がる体力がない。じっと次の最終形態を待つのみとなる。
 
深夜12時を超えた頃だろうか。一瞬寒気が消えた。そして間も無く顔が火照りだした。いよいよ最終形態の「発熱」である。火照りはみるみる間に全身に広がった。この最終形態はやがて意識を朦朧とさせる。
「どうして朝の時点で病院へ行かなかった!」
と後悔をしつつ最終形態の攻撃を受けながら一晩過ごし、翌朝途切れそうな意識の中で病院へ向かった。
舌をしまう事もできないほど喉は痛く、身体中の節々は軋み、真夏にマフラーをしなければならないほど寒気がし、このまま器官が破裂するのではないかと思えるほど絶え間なく咳が続き、まっすぐ歩く事もままならないほどの発熱という全ての形態の特徴を兼ね備えた最強の敵を倒すため、病院という名の地球防衛軍の元にやっとの事でたどり着いた。
 
しかし、朝の診療所は混んでいる。
周りを見渡せば、年配の方ばかり。ただの老人ではない。明らかに僕よりも元気そうだ。それを証拠に
 
「あれ、吉岡さん今日おられないねぇ」
「ほんまや。具合でも悪いんじゃない?」
 
という冗談のようなやり取りが繰り広げられている。
病院の待合室が完全に社交場となってしまっている。
その楽しそうな社交場の中で、まっすぐ座っているのもままならない僕が一人。
咳き込むたびにまるで汚いものを見るような視線が投げかけられ、あからさまに距離を取られる。気がつけば僕の周りにはポッカリと穴が空いたように人がいなくなっていた。
僕を避けている方々に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ごめんよ、おじいちゃん、おばあちゃん」
そう思ってはいるが、最終形態と化した敵は攻撃の手を止めない。器官が張り裂けそうな咳がひっきりなしに続いた。
その時、周りの元気なおじいちゃんやおばあちゃんには申し訳ないが、こう思わざるを得なかった。
「ここは本来、僕みたいな人が来るところだよ」
 
「そんなに嫌なら診察の順番を代わって、先に行かせてもらえませんかね?」と警告するかのように、まるで自転車のブレーキの音のような僕の咳が待合室に響き渡った。
 
***

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2017-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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