メディアグランプリ

波に乗るチャンスはきっと何度でも


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記事:久保明日香(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
服の流行は一周する。
 
今年、女性ファッションのトレンドは“刺繍の入った服”。トップスにも刺繍、パンツにも刺繍、鞄にも刺繍。服屋を見ればどこもかしこも刺繍が入った服だらけだった。
 
刺繍の服は私が小学生の頃、流行ったのを覚えている。
なぜならば、当時、親に刺繍の入ったジーンズをねだった記憶があるからだ。今でこそ仕事で人前に出ることも多いのでファッションに多少気を遣うようになったが、小学生の頃は正直、全くファッションには興味が無かった。服は着られればそれでよかった。
 
そんな私が唯一、ねだったのが刺繍が入ったジーンズ。そこにはある理由があった。
 
 
「見て! これ、かっこいいだろ」
とジーンズのおしりにあるポケットをこちらに向けてきた少年がいた。彼は私の幼馴染で当時よく一緒に遊んでいた。
 
彼のおしりに2つ付いているポケットの1つには刺繍で英語が、もう一つには刺繍で柄が入っていた。小学生だった私はまだ英語が読めなかったので何と書いているかはわからなかったが、みんなとは違うデザインがとてもかっこよく思えた。
 
そしてその時、無地のズボンを履いていた私を指さしてこう言った。
「お前、刺繍の入ったズボンとか持ってないの? 姉ちゃんが言ってたぞ、今年は刺繍が流行りなんだって。女子ならおしゃれしたら?」
 
ファッションに興味がないとはいえ、少し傷ついた。なんだか自分がとてもダサい人間の様に思えて悲しかった。だがその一方で、ファッションに気を遣っていない私を“女の子”扱いをしてくれたことが嬉しかった。
 
そんな複雑な思いで帰宅した私は母に、刺繍のついたジーンズを買ってほしいとねだった。そして週末、私は裾に花柄が刺繍されたジーンズを買ってもらった。
 
月曜日、気付いてもらえるかなとドキドキしながら新しいジーンズを履いて登校。
すると彼はすぐに気づいてくれた。
「お、俺のアドバイスを聞き入れたか。いいねぇー可愛いじゃん!」
その一言で時代に合った女子になれた気がした。
 
それから私は少しずつではあるが流行を気にしだした。完全に彼の影響だった。流行に詳しい彼と話ができるのが毎日楽しかった。もしかしたらこれが初恋だったのかもしれない。だが気づいた時にはもう中学生になっており、2人は思春期を迎え、なんとなく疎遠になってしまっていた。
 
細々と流行を追い続けた私が力を入れるようになったのは大学に入ってからだ。流行りの服を買い、物を持ち、大学に通っていた。中高と制服だったため、雑誌を買って勉強し、自分を着飾っていた。一種の大学デビューかもしれない。
正解がわからない時もあったが流行りのものを身に着けていると見た目がごまかせたのだろう。大学に入って彼氏もできた。だが内面が伴っていなかったようだ。
「想像していた感じと違う」そう言われて付き合いが上手くいかないことが続いていた。
 
 
「あー。どうして彼氏と長続きしないんだろう」
私はぶーぶー文句を言いながらジンジャーハイボールを飲む。
「それじゃない? 理由。いくら流行りを追いかけたってがぶがぶジンジャーハイボール飲む女子を可愛いなんて思ってくれる奴、なかなかいないよ。外見に反して女子っぽい可愛さが一切感じられない」
そう厳しい言葉をかけてくるのはあの幼馴染だ。大学に入ってたまたまご飯に行ったことをきっかけに昔のような仲が復活した。彼にはひどいことを言われてもなぜだかあまり腹が立たない。
 
「あ! でもさ、あの時はよかったよ。刺繍のジーンズ!」
と彼が思い出したように言った。実はあの時、おしゃれしたら? は言い過ぎたかなと反省していたそうだ。だが、前向きに受け止めて、頑張って努力した私の姿が印象的だったとのことだ。
 
「あの時みたいに前向きに頑張った感じを上手に伝えることができたら……見た目はもちろん、内面も可愛いって思うけどね、俺は」
そういった彼の顔はお酒が入っていたからだろうか、ほんのり赤みががっていた。
 
刺繍の流行は1周回って2017年に再びやってきた。
刺繍だけではない。色、音楽、靴など世の中にある様々なものは我々が気付かないうちに流行りを繰り返しているのだろう。1回、その波に乗れなくても次に回ってきたときにまたその波に乗ればいい。大事なのは、チャンスを逃さない事。
 
私に今回やってきた波は……幼馴染の彼の波か? 土曜日の居酒屋でそんな予感がした。
 
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2017-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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