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鳴かぬなら殺してしまえホトトギス


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姫蝶(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「血の色に染めさせた!?」
 
11月の秋晴れの爽やかな日、ランチを食べに彦根城近くの老舗近江牛店に家族で入った。ジューッと近江牛をカウンターの鉄板で焼きながら、「赤こんにゃく」がなぜ赤いのか、料理人のお兄さんが織田信長にまつわる衝撃的な話しをしてくれた。
 
 
 
滋賀県の名物「赤こんにゃく」をご存知だろうか? それはこんにゃくを三二酸化鉄で赤く着色したもので、滋賀県ではポピュラーなこんにゃくである。
 
毎年新年に行われるお祭りに、左義長祭りという火祭りがある。信長が安土城主だったとき、信長自ら赤い長襦袢をまとい女装して踊り、この祭りを盛り上げたと言われているが、この火祭りにちなんで、こんにゃくを赤くしたという説がある。
 
また、派手好きな信長が、地味なこんにゃくを赤く染めさせたという説もあり、意外とこの説が滋賀県では広く伝えられている。しかし、いくら信長が派手好きだからと言って、こんにゃくを赤く染めさせるだろうか?
 
 
「信長に逆らった比叡山、精進料理を食べる僧侶に対する戒めとして、こんにゃくを血の色に染めさせたという説もあるんですよ」
 
お兄さんがそう言って近江牛にアルコールをかけると、ボワッと炎があがった。
 
 
「血の色!?」
 
その説はかなり衝撃的だった。今まさに食べようとしているミディアムレアの近江牛を目の前に、そんな血なまぐさい話をお客さんにするなんて! これもサービスなのだろうか?
 
魔王とも呼ばれた信長はとんでもなく残虐だ。比叡山の焼き討ちでは、信長に逆らった僧兵だけでなく、泣いて命乞いする僧侶3千人を殺したと伝えられている。オンナ子供も皆殺しにし、果ては比叡山に火を放った。比叡山以外にも、滋賀県にある多くの寺や仏像が信長によって壊されたといわれている。しかし、いくら信長が残虐だからと言って、こんにゃくを赤く染めさせるだろうか?
 
 
「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」
 
信長に関する有名な俳句だ。信長が短気で残虐な性格なことを現しているが、信長は本当にそう言ったのだろうか? いや違う。これは、天下人となった織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人の武将の特徴を比較するために後世の人が作った俳句である。言い伝え、書物は、後世の人が誇張したもの、権力者の都合のいいように書き換えられたもの、子孫が書き残したものなどであり、時代背景や、著者の意図を理解しなければ、事実を理解するのは困難だ。
 
最近の調査で新たな事実がわかりつつある。信長が本当に比叡山の焼き討ちをしたのであれば、出てくるはずの燃えた木材がわずかしか見つからず、また、何千人も殺したのであれば、出てくるはずの人骨が全く出土しなかったそうである。つまり、信長は延暦寺を攻めて僧兵と戦っただけで、比叡山の焼き討ちはしていないのかもしれない。
 
当時、比叡山は腐敗堕落していたが、広大な寺社領地や豊富な財力を持ち、朝廷と近い関係を結んでいたので誰も立ち向かえなかった。これに対し、神も仏も恐れなかった魔王信長だからこそ比叡山を焼き討ちでき、その結果、日本の政教分離が進んだとも考えられる。
 
 
比叡山の焼き討ちのあと、僧侶たちは武田信玄に助けを求めた。信玄は信長の仕打ちに怒り、抗議の手紙を「天台座主沙門信玄」という署名で送った。これに対する信長の返事の署名が「第六天魔王信長」だった。これは、信玄が仏教の最高権力者の代理であるのに対し、自分は仏教の最強の敵だという信長のユーモアであり、信長が魔王のように残虐だったという意味ではないだろう。
 
 
「信長は関所の廃止もしたんですよ」
 
炎のパフォーマンスが終わったあと、鉄板をゴシゴシ磨きながらお兄さんの話しは続いた。
 
当時、関所では通行料を取られていたが、信長が関所を廃止することによって商売がしやすくなり、城下町が栄えた。このようなさまざまなエピソードを聞くと、実は、信長は合理的で先見の明のある優れたリーダーだったのではないかとも思える。
 
 
一般的に広く伝えられていること、信じられていることが真実とは限らない。滋賀県で広く伝えられている「赤こんにゃく」のいわれは、派手好きで、魔王とも呼ばれた残虐な信長のイメージから来たものだ。これらは、「赤こんにゃく」と「信長」を後から関連づけた作り話で、商売上の戦略ではないだろうか?
 
その他にも、近江商人が商売上のアイデアで、肉っぽく見せるために赤色にしたという説、近江商人が、左義長祭りの山車に飾る赤紙にヒントを得て赤色にしたという説などがあるが、私は近江商人が差別化のために赤色にして商売したというのが、一番事実に近いのではないかと思っている。
 
 
食事のあとは、かぼちゃのデザートとコーヒーが出された。
 
「大満足!」
 
デザートも食べて、私たちは大満足だった。いや、デザートだけではない。お兄さんは、美味しい鉄板焼きで私たちの胃袋を満たし、更に、「赤こんにゃく」とともに、戦国時代にタイムスリップさせてくれたのだった。天下の織田信長をネタにすることも恐れない、果敢な料理人。サービスとは、料理人を越えたところにあるのかもしれない。お店を出てようやく戦国時代から現代に戻り、ふとそう思った。
 
 
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2017-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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