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メディアグランプリ

100より37が楽しい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:志希歩(ライティング・ゼミ 通信専用コース)
 
ぼんやりと立ち尽くしてしまった。
「どれが一番いいだろう」
いくら考えても答えは出ない。
考える材料は大して持っていないのだ。
あとは自分でどれにするかを決断するだけなのに。
 
 
東急ハンズのヘアケア用品売り場、シャンプーやコンディショナーがずらりと並ぶ棚の前。
どの商品にするか散々迷って、答えの出ないままうろうろしている。
 
 
 
10年ほど前からケミカルなものをなるべく避けるようになった。
一般的には自然派とかナチュラリストとかと言われるのだろうか。
洗剤を変え、衣類は天然素材のものにし、食べ物も植物性のものを中心に添加物はなるべくとらないように。
 

天然素材の衣類というとコットンやシルクなど。オーガニックコットンという響きは魅力的だ。
しかし、そこそこかっちりした服装で仕事をしないといけない私にとって天然素材の衣類だけで過ごすなんて難しいし、休みの日の服にそういう素材の服で身を固めるとよそ行きのつもりでも部屋着のオバサンになってしまう。
まあ、このあたりはセンスの問題もあるだろうけど。
 

植物性の食品にこだわるとまず外食ができない。仕事での付き合いもあるし、外食を全くなしにすることはできない。自炊するにしても肉や魚を外して料理を作るにはかなり工夫がいる上、なんだか物足りず、肉がないというだけで夫には大不評。便利な調味料にはたいてい化学調味料が入っている。仕方なく動物性のものや添加物の使ってある食品を食べても悪いものを食べている気がして楽しめない。
 

私は0か100かで考えてしまいがちなので、どうせやるなら100に到達するようやらないと意味がないと思ってしまう。
100にならないなら0と変わらない。

1週間のうち6日間植物性のものだけを食べても1日肉を食べてしまったら6日間が帳消しになってしまう気がしたり、どんなに気に入った服でも素材がポリエステルだからという理由だけで買えなかったり。
 

新しい知識を取り込んでそれに取り組むときは、楽しくてのめり込むけど、そこで100を達成せねばならぬという呪いを自分にかけて苦しくなってくる。
10年前。ナチュラルな生活で心も体も穏やかに健康的になれる、と生活様式を変えてワクワクしていたが、ふと気付いたときには、食事や衣服という生活の根幹のところで呪縛にかかってしまっていた。
 
 

自然食品のお店で買い物をするのは楽しいけど、食事を考えるのが面倒くさくて食べることが楽しくなくなってきた。
服を買いに行っても華やかなファッションフロアは避けて、ナチュラリスト御用達ブランドに行く。ここは落ち着いてて好き。だけど華やなものも手にしたい。

せっかくナチュラル生活をスタートさせたのに100を達成できない自分が情けなくて、劣等感を抱くようになってしまった。
それを楽しんでちゃんとやってる人はたくさんいるのに。
 
 

健康やエコに気を使って自分にストレスが溜まるなんて本末転倒だ。
どうすればいいか。
うん、そうだ。
諦めよう。
 

37とか62だっていい。0ではないのだし。
100の呪縛を解いてみよう。
 
 

まずは早々に食べ物を諦めた。
ファーストフードやコンビニの食事も自分が食べたければOKだ。
自炊するときは、肉も魚も卵も使うが、野菜を多目に。
化学調味料はできるだけ避けて質のよいものを使う。
 
頭で考えて「この食べ物はよいか、悪いか」と判断することを止めたら、自分の心の声が聞こえるようになった。
「今日は肉が食べたい!」「この調味料はいやだ」「これ、体には悪そうだけどちょっと食べてみたい」
頭で考えていたときには気付かないふりをしていた自分の声に従うと心地よい。
 
 
「最高級の食材を使って超一流のシェフが作った料理を薄暗い穴倉でひとりで食べるより、最高に景色のいい気持ちのよい場所で好きな人たちと一緒に食べるジャンクフードの方が体によい」というのをどこかで聞いた。
 
確かにそうだ。心と体は繋がっていて、頭に支配されては動けなくなってしまう。そのときの私のように。
 
衣服も諦めた。
気に入った服に袖を通して鏡を見たときの楽しい気持ちは、オーガニックコットンだからという理由で選んだ服を着るときよりはるかに大きい。
この服がいい、と心が思っていればポリエステルだってそれでよいし、この肌触りはいやだ、と心の声が聞こえたらそれがどんなによい天然素材でもダメだ。
 
 
そうやって少しずつ自分の呪いを解いてみると、以前の自分は100を目指していたのでなく、「100をこなしている人」を目指していたんだと気付いた。その道を極めて実践している人というステイタスを求めていたのかもしれない。
 

100をこなしている人は、そこがその人の求める心地のよいところで、私が求めているところとは違うのだ。
その100をこなせない自分をその世界の落伍者だと思ってしまって苦しんでいたが、自分にとっての100は自分の心の声に従うことで見えてきた。
 

これは、諦めたというより落としどころをみつけた、という感じで、心と頭が折り合ってちょうどよい。
 

ナチュラリストのご多分に漏れず、我が家の洗濯や掃除は、いわゆるナチュラルクリーニングだ。
体を洗う石鹸やシャンプーもそういう系統のものだが、ふと別のシャンプーを使ってみようと思った。
ちょっといい香りがしたり、もっと手触りがよくなるものを使ってみよう。
これも折り合いだ。
そこで東急ハンズにでかけたのだった。
たくさんのラインナップを片っ端から手に取り、成分を確認する。
呪縛を解いても0にはしたくないのだ。
頭を使っていくつかに絞り込んだが、それ以上の決め手がなくなってしまった。
あとは心の声にお任せだ。
 
結局、パッケージが好み、というとてもシンプルな理由で1つに決めた。
 
ナチュラリスト的にはよい商品ではないかもしれないが、そのパッケージが並んでいる浴室を見るたびに楽しくなる。
 
***

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2017-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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