プロフェッショナル・ゼミ

失敗したかもしれないお見合いパーティーでもまだ期待できる出会い《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中村 美香(プロフェッショナル・ゼミ)

*この話はフィクションです。

小さい時、アパートの階段の下に溜まった落ち葉を掃いていると、近所のおばさんに
「理央ちゃんは、きっといいお嫁さんになるわね」
と、よく言われた。
ああ、私、いいお嫁さんになるんだ、きっと!
そんな風に思っていた。

近所のおばさんに「いいお嫁さんになる」と言われるのと、同世代の男性にモテることが違うことなんだと気がついたのは、それからずっと後のことだった。

私は、全然モテなかった。
「好かれて好きになることはない。自分が好きになった人しか好きになれない」
なんて強がりを言いながら、誰かに好かれていると感じることすらなかった。
「頼りになるよ」
なんて、好きになった人に言われたことはあるけれど、それは、友情とか信頼であって、一番欲しかった愛情をもらうことはできなかった。
男友だちはできたけれど、それ以上になることはなかった。
人並みに片思いをして、ひといちばい失恋をした。

ああ、私、いいお嫁さんになれないんだな、ずっと。
鏡にうつる自分の顔を見て、ため息ばかりついていた。
そして、お嫁さんどころか、誰かの彼女になることもなく、月日は経っていった。

でも、やっぱり……。
いつしか、結婚なんて、しなくたっていいやと思っていたはずなのに、私は、30歳の時、突如、「結婚」をしたくなった。
いや、多分、本当は、「恋愛」がしたかったけれど、もしかすると、「恋愛」の方が「結婚」よりも難しいと思っていたのかもしれない。
友だちの結婚話が多くなったことと、30歳という年齢が、私を焦らせたのは間違いない。

本当は、「たまたま付き合って、好きになった人と、ずっと一緒にいたいから、結婚する」というのが理想だった。
けれど、現在の生活の延長線上にそれはなさそうだと、容易に予測できた。

だから、“結婚相談所”を利用してみようかと本気で考え始めていた。
だけど、実際に入会するのには、勇気が足りなかった。

そんな中、それよりは、ハードルが低くて、よさそうな選択肢を発見した!
それが、“お見合いパーティー”だった。

30歳の秋。
以前から気になっていた、ある結婚式場主催の“デュエット・パ―ティ”なるものへ出席した。

意を決して、申し込んだ日の鼻息が嘘のように、その当日は、小さくなって、朝からドキドキ、ソワソワしていた。
何度も深呼吸して、参加した。

19:00受付開始で、19:30スタートの会だった。
あんまり気合を入れているとわかると嫌だなとか、小さなことを考えた。
何時に行ったらいいものかと悩んだ挙句、真ん中をとって19:15くらいに行った。
蓋を開けてみると、大半は19:30ギリギリに到着した人が多いようだった。
みんなもきっとナ―バスなのだろうな、そう想像した後、単に、時間がなくてギリギリだったのかもしれないなと思い直した。
こういった場合「普通」どう振る舞うべきかわからずに、係の人に
「座る席はどうなっているのですか?」
と、聞いてみた。すると
「お好きな席にどうぞ!」
と、にこやかに言われた。
どうやら、一応、男性と女性の列は決まっているようで、後は、ご自由に! というらしかった。
女性はまだほとんど来ていなかったけれど、男性はまばらに座っていた。

お好きな席にどうぞ! と言ったって、じっくりと、すでに座っている人を眺めてから選ぶわけにはいかないだろ! と、自己責任のルールに、静かに、憤った。

目の前に誰もいない席に座るべきか?
チラッとでも見て、いいな! と思った人の前に座るべきか?
いや、待てよ?
おい! ブス! 俺の前に座ってんじゃねーよ! って、思われないかな?
やっぱり、こういう時はさ、くじ引きとかにするのが、ホスピタリティじゃないの?
一瞬のうちに、こんなことをたくさん考えたこと自体が恥ずかしくなった。
結局、その時立っていた一番近くの席の前の人が、どちらかというと男前な普通の人だったので
「前よろしいですか?」
と、一応、断って座った。
妙に、気恥ずかしく、気まずい瞬間だった。
いきなり世間話をするわけにもいかずに、会が始まるまで、じーっとしているのは、意外にきつかった。

19:30を少し回ってから、会は始まった。
前の人と飲み物を注ぎ合い、若干和んだ。
周りの人達とも、乾杯をして、前菜からフランス料理のフルコ―スが運ばれてきた。
その日は、女性は4000円の会費だった。
この金額で、この料理とパ―ティ会費は悪くないなと思った。

30分から40分くらいだろうか?
主に、前の席の人と、食事をしながら話をした。

前に座っていた人は、郵便配達人だった。
彼は海外旅行が好きらしく、その話を楽しそうにしていた。
私は、興味がありそうに、相づちを打ちながらも、元をとるべく、食べに走った。
彼は、気分が乗って来たのか、話に夢中で、あまり食べられなかったようだった。
顔もまあまあで、感じも悪くはないけれど、いまいち、話していて楽しいとは思えず、彼が話している間、気がつくと上の空な自分がいた。

メインの肉料理を食べた後、20人の男性参加者全員と、2分間ずつ話す時間がやってきた。
これが、予想以上にきつかった。
インタ―バルが全くなくて、矢継ぎざまに、全く違う知らない人と2分ずつ話すということは、集中力と莫大なエネルギ―がいるんだということを、身を持って知った。
そうなると、好みの外見だったり、個性的だったり、よっぽど興味深い話でないと、いい意味でも悪い意味でも印象に残らない。
そんな中、記憶に残ったのは、お笑い好きの人だけだった。
お笑い好きの人は、文字が書かれた紙を持って臨んでいた。そこには、その人の趣味が羅列されていたのだ。
「どれかに興味ある?」
と聞かれて、
「じゃあ、お笑いで」
と、私は答えた。
若干、このパーティのシステムに慣れた人なのかもしれないと疑いながらも、持ち時間の2分を有効に使おうという姿勢は見事だなと思った。

その2分ずつのトークの時間が終わった後、
「気に入った方がいらしたら、ご自分の連絡先を、その方宛てに送れますので、書いてください」
と、言われた。
ああ、そうなんだ。
そう思って、誰かの名前を書こうかと思ったけれど、そんな2分じゃ、連絡先を教えたい相手かどうかまではわからないなと、思い直した。
迷ったけれど、今日はいい経験になったと思えば、何もなくていいかな? よっぽど、連絡先を教えてトラブルよりいいかも! と思って、白紙で出した。

すると、側に座っていたノーマークだったある男性が
「誰の名前を書くの?」
と、聞いてきた。
2分ずつのトークで、疲れ果てていたのもあって
「っていうか、2分じゃわかんないですよね」
と、ある意味元も子もない本音を言ってしまったら
「でも話とかじゃなくて見た感じで決まるでしょ」
と、言われて、そうか! そういうものなんだ! と、目から鱗が落ちた。
後で、その場で、知り合いになった二人組の女性に、こっそり聞いたら、ふたりとも白紙で出したと言っていた。
ほとんどの男性は、何かしらペンを動かしていたので、男と女の違いを感じた。

その後、デザ-ト&フリ―タイムがあった。
2分ずつの面談に疲れてしまったので、知り合った女性ふたりと3人でケ―キを皿いっぱいに盛り、文字通りデザ-トタイムを楽しもうとしていた。
珈琲が配られ少し話していると、気になっていたあのお笑い好きの人が目の前にやってきたので、ちょっと嬉しかった。
途中から、郵便配達の人も
「いいですか?」
と、輪に入って来た。
5人で世間話をしてると、お笑い好きの人が、女性の一人に連絡先を聞いていたので、この人狙いなんだ、ちょっと残念だなと思った。
だけど、その女性は、自分だけ教えるのが嫌だったようで、5人で交換することになった。
「みんなで交換するの?」
とお笑い好きの人が少し不服そうなのが気になった。

帰りの電車で、どっと疲れが出た。
普段、いかに「女」を意識していないかを思い知った。
いいリハビリになったなとそれなりに満足だったけれど、家に帰ると、お笑い好きの人から、お疲れさま&お笑いライブのお誘いメールが来た。
多分、他のふたりにも連絡しただろうと思った。
だけど、顔はタイプではないけど、結構面白そうだから一回くらい会ってもいいかな?と思い翌日、OKのメールを打った。

だけど、“お見合いパーティ”で知り合って、楽しそうだから! という理由だけで会ってもいいのかな? と、疑問もあった。
その後、日程の打診があって、
「平日は仕事が終わる時間がわかんないので、休日がいい」
と打ったら、
「休日に逢ってくれるなんて嬉しい」
なんて返事が即レスだったので、ちょっとびびってしまった。
軽い気持ちで行くといって悪かったかなと、反省したりして、徐々に怖くなり、
「やっぱりやめておきます」
と断った。

それから翌週の水曜日に、結婚式場から一通の親展封筒が来ていて、ドキドキしながら開けてみると、ある人のプロフィールだった。
その人が、私に関心を持ってくれて、結婚式場に、プロフィールの送付の依頼をしたようで、送られてきたものだった。
びっくりしたのと同時に嬉しかったが、ほんと申し訳ないけど、全くと言っていいほど記憶にない人だった。
メモをいうのもおこがましいほど乱暴な書き殴りの面談の用紙を恐る恐る眺めるとやっぱりほとんど何も思い出せなかった。
プロフィールには生年月日や職種、出身学校なんかが書いてあった。
それによると、年齢は40歳。製薬会社の営業らしい。家もあり、両親とは別居。既婚の弟のいる長男で趣味は語学、テニス、旅行、アロマテラピーらしい。年収が700万以上で魅力的だったが、一夜開け、二夜開けているうちに、40歳という年齢、しだいに思い出したかすかな記憶の中で、その人はNGだという感覚が生まれてきた。

自分のことをいいと言ってくれる人も今までいなかったし、恋愛モードもなかったので、やはり、好意を持ってくれることは、純粋に嬉しかった。
不思議と、自信もつき、本当にありがたかった。
だけど、やっぱり、好奇心、モテたい気持ちで軽く会ってしまうのは、失礼だと感じてしまった。

これから先、そういった人達はそうそう現れないかもしれないが、今までの私の好きという感覚も大切にしたいので、もう少し、具体的に相手に求めるものを明確にし、自らを律してパートナー探しをしたいと思った。

……で、このあと、人生が変わり……とはならなかった。

ああ、やっぱり、あのふたりのうちどっちかと会っていればよかったかな……と、何度か思った。
いや、何度も、思った。

だけど。

結婚ってなんだろうって考えた時に、ただ、すればいいと言うわけではない気がしたのだ。
そして、一緒に並んで生きていこうとする誰かを探そうとする時に、まず、知るべきは自分自身だと思ったのだ。
もしかしたら、無理に知ろうとしなくても、いろんな人と出会うことによって、様々なセンサーが働き、自分のことがわかってくるのかもしれない。

無駄だったかもしれない、失敗したかもしれない、お見合いパーティも、おそらく、私の中では、何かしらのセンサーが働いたはずだ。
そして、昨日とは違う新しい自分に出会えた。

自分を知って、自分にとって大切なものを知ろう!
そのために人に会おう!

いいお嫁さんになれるかどうかはわからない。
だけど、自分にとってのいい人生は、きっと選べる!

***

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