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大人が勉強するときは、万年筆を使うべし


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:バタバタ子(ライティング・ゼミ特講)
 
「あれ、インクが出ない」
紙の上を何度ひっかいても、グルグルと渦を書こうとしても、真っ白な紙には一点のシミも残らなかった。
「やっぱり、安物だからダメなのかなぁ。えー」
思わず眉を寄せ、口をとがらせる。
使えないなら捨ててしまおうか。持っていても、しょうがないし。
しばらく迷って、でも諦めきれなかった。だって、すごく気に入ってしまったのだ。
雑誌のおまけで入手したその万年筆は、おしゃれなブランドとコラボしたものだった。軸はトルコ石色で、そこに金色の線で繊細な模様が描かれている。
とてもかわいい。
ネットで噂を聞き、すぐに書店に向かった。買って帰るやいなや、開封してカートリッジを装填した。最初こそ多少かすれたが、つい昨日までは、ちゃんと筆記できていたのに。
 
「万年筆 インク 出ない」
と検索窓に入力して、エンターキーを押す。すぐに大量のサイトがヒットした。
どうも万年筆にとって、インクが出ないというのは、よくある話のようだ。よかった。
もちろん対処法も記載されていた。
「万年筆をしばらく使わないと、乾燥したインクが詰まって、書けなくなります。インクが出ないときは、まず水かぬるま湯で洗ってみてください」
なるほど。
さっそく、軸からペン先を外し、水で洗って、ティシュの上に乗せ、乾かすことにした。
 
「それにしても、万年筆って思ったより不便だな。たった数日、使わなかっただけで、インクが出なくなるなんて。だってボールペンなら、何か月か放置しても、大抵はすぐスラスラ書けるのに。これが鉛筆やシャーペンだったら、もっと、何十年も触らなくたって、すぐに使えるのに」
干している万年筆を恨めしく眺める。
やっぱり素敵だ。
軸のデザインがおしゃれだし、金色に輝くペン先は見るだけでテンションが上がる。少し太めで、持った時にしっくり馴染むし、キャップをペンのお尻にはめたときのズッシリ感も心地いい。
何より「万年筆で書いている」というスタイル自体が、なんだかカッコイイ。
そんな素敵な万年筆が、こんなに扱いづらいなんて、もったいない。
どうにかして活用できないだろうか。
ふとひらめいた。
「そうだ、この不便さは逆に、勉強するモチベーションの維持に、ちょうど良いんじゃない?」
 
最近、勉強したいと思うことが、いくつか出てきた。
ライティングもそうだし、料理を勉強してレパートリーを増やしたいし、読んだ小説に触発されて数学の問題集を買ったし、ビジネス書に書いてあることも実践していきたい。
興味を持ったことに手を付けるまではスムーズだが、しかし、なかなか続かない。
勉強が本分だった学生時代と違い、大人の勉強では、外部からの強制力が働かないのだ。
 
学生時代は、勉強せざるを得ない状況があった。
宿題をして来なかったら、先生に叱られる。それが嫌だから、自宅でもちゃんと机に向かった。
翌日の授業で先生に当てられそうだと思ったら、必ず予習した。もし予習しなくて、先生に当てられたときに間違えたら、クラス全員の前で恥をかいてしまう。
そういった具合に、勉強しなければ痛みを伴う状況が、学生には用意されていた。
 
そんな学生時代とは異なり、大人になってからの勉強は、サボっても、痛くもかゆくもない。
だから、続かない。だから、上達しない。
「このスキルを身につけよう」と意気込んで買った本や問題集も、気づけば埃をかぶってしまっている。
自分に対する言い訳ばかりが上手くなる。
「今日は疲れたし、勉強のほうは1日くらい休んでも大丈夫でしょ」
「来週も大変そうだし、勉強するより休養が大切。勉強は1週間くらい休んでも、別に変わらないし」
「1か月くらい手を付けてないけど、平気平気。やろうと思えば、すぐできるし」
サボるときの私は、なんの根拠もなく、自分の能力に変な自信を持っている。
一度できたことは、数か月のブランクがあっても、一番上手だったときと同じレベルですぐに再現できると思いこんでいる。
「さて、たまには勉強のつづきをしますか」という気になったときには、思ったように再現できない。むしろ以前より、よっぽど下手になっている。当然だ、数か月も放置している間、まるで万年筆のインクのように、自分の能力は乾燥し、こびりつき、詰まってしまったのだから。
そんな自業自得を棚に上げて、楽しくないから「あれ、今日は調子悪いな」なんて言い訳をして、さらに距離を置き、逃げる。
いつもの失敗パターンだ。
 
万年筆の手入れ方法を紹介するサイトをいくつか見ていると、こんな文言に目が引き寄せられた。
「万年筆にとって、毎日使うのが、一番のお手入れです」
そうか、万年筆に悪いことをしていたな。何日も放置したくせに、急に使おうとして、インクが出ないと文句を言うなんて。
人間の能力も同じかもしれない。
毎日使うのが、能力を活かし、伸ばす一番の方法なんだろう。学生時代に、よく言われていたじゃないか。「勉強は、ちょっとずつでも、毎日続けなさい」って。
 
「そうだ、万年筆を勉強に使ったら、うまくいくんじゃない?」
我ながら、ナイスアイデア!
お気に入りの万年筆は、毎日使ってあげることが重要。自分の勉強も、サボらず毎日続けることが大切。ならば、万年筆を使って毎日勉強したら、万年筆と私、どちらにとっても良いじゃないか。
万年筆は、かすれずにスムーズに使えるようになるし、私も勉強を続けて、スキルを上げることができる。
勉強を強制されていた学生時代とは違い、大人には大人に合った勉強スタイルがある。
先ほど洗ったペン先も、そろそろ乾いているはずだ。
さっそく、新しいインクを満たして、あのお気に入りの万年筆で勉強を始めよう。
 
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2017-11-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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