メディアグランプリ

「写ルンです」からデジカメまで、写真の技術が進歩するように……


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:下川真由美(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「あなたは、変な人ね」と、写真家の松本路子さんに真顔で言われた。彼女が主宰する写真のワークショップに、通い始めたばかりの頃のことである。
 
その時、持って行った写真は、靴の写真だ。ヒールを引っかけて玄関に置いてあった靴が、なんだかオブジェみたいに見えたのだ。
 
当時はまだカメラを持ってなくて、「写ルンです」で撮影した写真だった。
 
毎回、「写ルンです」で写真を撮影するのでは、結構お金がかかってしまう。それで、安いカメラを買った。
 
「あ、カメラ持ってくるの忘れちゃった!」と気づいた時には、「写ルンです」を買って撮影した。夜、写真を撮る時は、夜用の「写ルンです」を購入。昼用と夜用を使い分ける程度の知恵はあった。
 
アスファルトの路面ではがれかけたペンキ、コンクリートのしみなどが、まるで抽象絵画のように思えた。工事のために立ててあるコーンが、強風で倒れているさまは、オブジェのよう。日常生活で目にする、あらゆるものが「現代アートしてる」感じがした。
 
美術大学に通って、写真の講義も受講はしたものの……。
 
慣れない一眼レフは、露出やピントを合わせるのに四苦八苦。酸っぱいにおいの現像液で現像しても、あまりいい出来とはいえない。
 
「写真は、私には向いていないな」と、正直いって思った。
 
私は版画専攻で、写真製版を用いた作品を制作していた。ありとあらゆる珍しい缶ジュースを飲んで、空き缶を集めていた。防衛省の売店まで行って、缶コーヒーを買ったこともある。そうして集めた空き缶は押しつぶして、モノクロ写真を撮って写真の素材に使った。
 
大学の技術センターの職員につきっきりでセッティングしてもらって、作品の素材用の写真を撮影した。
 
照明をセットし、三脚を立て、一眼レフのカメラを設置。露出やピントも合わせてもらって、「リモコンでシャッターを切るだけ」の状態にしてもらった。
 
自力では、とてもこんなことできない。自分に写真が撮れるようになるとは、全く思っていなかった。
 
「他の人の写真が、ディレクションできればいいな」と思って、松本路子さんの写真のワークショップに参加するようになった。
 
とはいっても、写真の選択眼が養われないと、ディレクションはできない。「写真を選ぶ練習用」に、下手っぴいだけど、「写ルンです」で撮った写真を持参するようになったというわけだ。
 
ところが意外なことに、写真を撮る数だけは、誰よりも多かった。24枚撮りや36枚撮りのフィルムで、毎月20~30本は撮影した。
 
「明らかに失敗」という写真が、大多数だった。しかし、毎月数百枚も撮っていれば、中には「奇跡の一枚」も撮れるものである。
 
パノラマサイズで撮影した写真を、何枚か並べて一つの画面にするというスタイルで作品を制作するようになった。
 
2001年に体を壊してから、いったん写真のワークショップの参加は中断した。
 
「カメラを持っている感覚を、忘れたくない」との思いで、2005年からは、「しもまゆの写真日記」というブログを書くようになった。
 
携帯カメラで写真を撮って、メールに添付して送信するだけでブログに投稿できるんだから、世の中便利になったものである。iPhoneを使うようになってからは、アプリを使って簡単にアップできるようになった。
 
「あなたの写真、好きだったのに……もう写真は撮らないの?」と、写真展の会場で、久々に会った知人に言われたことがあった。
 
「今はね、写真日記のブログを書いてるの」と伝えた。カメラで写真は撮ってないけど、別の形で「表現する」ことは続けていると。
 
写真日記のブログを書くのは、楽しかった。反応もあったし、好みが似ているブログ友達もできた。
 
それでも、「スマホでは、思うように撮れないなぁ~……」と、だんだん思うようになった。
 
花見の季節に、湯呑に入ったお茶の中に入っている、桜の花を撮ろうとした。こういう小さいものは、スマホではイマイチうまくとれない。同じものをデジカメで撮影すると、細かいところまで、キレイに撮れる。
 
スマホの写真では物足りなくなって、新しいデジカメを買った。
 
レンズを替えなくても、近くに寄って撮れるカメラがほしかった。ライカのレンズを使っているという「ルミックス」というカメラを買った。
 
新しいデジカメを買ってからは、毎月数百枚の写真を撮影するようになった。
 
フィルムと違って、現像代もかからない。ネットプリントなら、1枚わずか5円でプリントできる。数だけはたくさん撮る私には、ありがたい環境である。
 
「似たような写真を他の人が発表する前に、作品を発表した方がいい」と、最近は言われるようにもなった。
 
今でもオートで写真を撮っている私。2年ほど前に、マニュアルでの撮影も試みたが、全然思うようには撮影できなかった。
 
こんな技術オンチの私でも、継続すれば、ちょっとずつでも進化するものなのである。「写ルンです」で撮っていたのが、ガラケーやスマホになり、デジカメにと、時代と共に技術も進歩するように……。
 
 
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2017-11-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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