メディアグランプリ

臭いの中に「美味しい」は隠れている。でも、さわやかになっても、くせになる美味しさは変わらない。


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記事:べるる(ライティング・ゼミ日曜コース)

 

「ご当地ポテトチップスが発売になるって!」

と、Facebookで話題となっていた。

大手お菓子メーカーが、各都道府県のオリジナル味のポテトチップスを作って販売すると言う。

 

さて、我が滋賀県は何味になるだろう?

 

滋賀の特産と言えば、なんだろう。近江牛、赤こんにゃく、サラダパン、鮒寿司……。

私はサラダパン味に一票やな! 変わっているし他の県とかぶらないだろうし、味も予想できなくておもしろそうだし。

サラダパンは、たくわんとマヨネーズを和えた具がコッペパンに挟んであるパンだ。滋賀県のパン屋さんで作られていて、テレビでよく取り上げられ、わりと有名になった。

 

近江牛は無難だけれど、他の県でも牛はいるだろうし(私は近江牛を育てる仕事をしているので、近江牛味が発売されたら嬉しいけれども)、赤こんにゃくは、見た目が赤いことが最大の特徴なのでポテトチップスで再現できるのか……全国的な知名度を考えると鮒寿司かも…いや、それはないわ、と色々妄想する。

 

そうして発表になった味は、鮒寿司味だった。

 

鮒寿司。いや、まじか。鮒寿司か。すげぇな、おい、と聞いた時思った。だって、私も滋賀に来るまで「鮒寿司ってすっごい臭い食べ物」というイメージしかなかったから。その味のポテトチップスを作るって、なかなかすごくないですか? と思う。

 

 

私の鮒寿司との出会いは、滋賀に来て少し経ってからのことだった。

頂き物の鮒寿司を、夫が食卓に出してきたのだ。

「いや、食べないし。すっごい臭いんでしょ?」

と、鼻をつなみながら答えた。

ドリアンを「すっごい臭い。ほんまに臭かったわ!」というのは山ほど聞いたことあるが「ドリアンてめっちゃ美味しいねん!」という人に出会ったことはない。臭いというものに美味しいが隠れているとは思えない。

「まあ、俺もそんなに好きちゃうねんけど……でもな、べるるは絶対に鮒寿司好きやと思うねん」と言う。

え、待って。滋賀県民のあなたもあまり好きじゃないのに、私には薦めるの?

「だって、発酵食品好きやろ? 魚も好きやろ? 絶対に好きやと思うわ」

と、夫は言う。

確かに私は、納豆やキムチの発酵食品が大好きだ。魚に至っては、内臓や皮も大好きで、焼き魚を隅々まで食べつくし、周りに引かれるほど大好きだ。

 

鮒寿司は、琵琶湖でとれたニゴロブナを塩漬けし、米と一緒に漬け込んだものだという。大好きな魚が、大好きな発酵食品になっているわけで。そう考えると好きな味かも?

 

「うむ。まぁ一切れ食べてみようかな」

と、箸を伸ばす。鮒寿司は薄くスライスしてあり、鮒の上に発酵したご飯が乗っている。このご飯を食べるかは好みなのだと言う。最初なので、少しご飯を箸でかき分け、切り身だけを掴み、くんくんとにおいをかぐ。

「そんなに臭くないけど?」

強烈! と聞いていたほどの匂いはしない。魚が発酵したんだな、という独特のにおいはあるけれど、ささやかな匂いではないか。

そして食べてみた感想は……

「何これ、美味しい!!!」

まさに魚と発酵食品のコラボレーション! まろやかで濃厚で、幾重にも織り成されたような複雑な味わい。

「日本酒お願い!」と言いたくなるほど、お酒のあてにもよさそう。私は日本酒飲めないけれど。

「やっぱりなー。絶対好きな味やと思ってたわ」

 

それ以来、私は鮒寿司を見るとテンションが上がり夫の分まで食べている。誰や、鮒寿司食べへんて言うてた奴は。誰や、臭いに美味しいは隠れてないと言うてた奴は。

 

鮒寿司が好きすぎて「鮒寿司を漬けよう!」という体験ツアーに申し込もうとしたこともある。でも、鮒寿司は樽に漬けるので漬けるとしたら、一樽か半樽単位。確か一樽20匹程度だったと思う。とても食べきれない……ということで泣く泣く断念した。

 

私がこよなく愛する鮒寿司。そんな鮒寿司味のポテトチップスが販売されると聞けば、買わないわけにはいかないでしょう。鮒寿司は高級品でなかなか買えないけれど、ポテトチップスだったら私にも買えるぞー! コンビにで、3袋まとめて買ったぞー。大人買いだー! 「こいつ、鮒寿司味買い占めてるよ」と店員さんに思われるのが恥ずかしくて、パンも一緒に買ったぞー。なぜかエロ本買う男子中学生みたいに、恥ずかしかったぞー。

 

ポテトチップスになった鮒寿司は、すっかりさわやかになっていた。今まで滋賀県の特産品として、好きな人にだけ好かれたらええねん。俺は俺や。と、人を寄せ付けずにクールに存在していた鮒寿司くん。臭いと誤解されても訂正もせず否定もせず、分かる人にだけ、あふれんばかりの魅力を見せてくれていたあの鮒寿司くんが、ポテトチップスになったら、すっかりさわやかな鮒寿司くんになってしまった……。

袋をあけても強烈な匂いはしないし、複雑で濃厚な魚の味もしない。強烈な個性を持ちながらもクールに存在していた鮒寿司くんを好きだった私としては、少しさみしい。

でも、さわやかな鮒寿司くんもいいねぇ。手が止まらない。こんな鮒寿司くんもいいねぇ。さわやかだねぇと、ボリボリ食べるのがやめられない。あぁ、あと2袋もあるなんて信じられない嬉しさ。

 

夫が「何それ、鮒寿司味のポテトチップスって、罰ゲーム的な味なん?」

と言ってくる。

「そんなんじゃないでー。普通に美味しいで! あのクールでなかなか人を寄せ付けなかった鮒寿司くんが、さわやかになって登場! って感じや」と言うと、

「さっぱり分からん。けど、美味しいやん。なんかチーズみたいやけど、魚の味もするし、すごいやん」

と言って食べていた。

4歳と2歳のこどもたちも、鮒寿司がどんなものかは知らないけれど「美味しい」と言って食べている。

さわやかな鮒寿司チップスは、子どもにも受け入れられる。

 

鮒寿司チップスの登場で、鮒寿司の魅力がもっと多くの人に伝わればいいのにな、と思う。

 

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2017-11-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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