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フランスのマンガオタクは文化を結ぶ


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記事:山田拓也(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「グレナに会う!?」

フランス人の友人に、週明けのミーティングでフランスの出版社の人と会うよ、と言ったら、予想以上の大きな反応が返ってきた。

 

なんでも彼が学生の頃から大好きだった、「ドラゴンボール」のフランス語版の出版社らしい。「アキラ」や「らんま1/2」から「東京喰種」まで、日本のマンガのフランス語出版の最大手、いわばフランスにおけるマンガ文化を創造した出版社の創業者が、今度僕が会うことになったグレナ氏だった。

 

そもそも、その友人も学生の頃に日本のオタク文化に触れ、東京に留学して以来日本在住17年目というツワモノなので、彼の人生はグレナ社という出版社、そしてジャック・グレナという創業者に大いに影響されている。ある意味教祖様のような存在だ。そして彼に限らず、フランス中にそういったマンガオタクが散らばっているらしい。

 

僕は東京の便利な場所の、ある書店で働いている。なので色々な人から訪問希望を受けて、お店の紹介をする機会に恵まれる。今回も突然フランス人からの店舗視察希望を受け、訪問客の下調べをしようと思っていた矢先に、思いがけず友人からミーティング相手であるジャック・グレナ氏の情報を聞くことになった。

 

グレナ氏は1969年にまだ学生だった頃、コミックを中心とした出版社を設立、まずはフランスやベルギーのコミック関連出版物、そして日本のマンガのフランス語版の出版に情熱を燃やして成功してきた人物だった。

 

当時のフランスでは「マンガは子供が読むもので、まっとうな大人が読むものではない」とされていた。しかしフランス語圏の出版物だけではなく、日本のマンガをフランス人の若者に向けて出版しはじめて、大きな流れができた、との事。まずは限定された客層に向けてのビジネスとして成功し、その後マンガ文化がフランス人の心をつかみ、世間一般に認識されてきて、今に至るという。

 

日々の生活の中で、クールジャパンやオタク文化が、フランスでも歓迎されているというニュースを聞いたりするかもしれない。もしくは日本のアニメキャラに扮した、フランスの若者たちの写真をネットで見かけたりするかもしれない。そんなオタク文化の出発点は、かつての若きマンガ好きフランス人、今、僕の目の前に座るジャック・グレナ氏であった。

 

60代後半のロマンスグレーのフランス人紳士は、オタクという雰囲気とは真逆の存在感を放っていたが、僕が働くマンガ売場を一緒に視察してみると、その情熱がいきなり発揮された。店頭に並べる本を選ぶ基準から、フェアやイベント、著者のサイン会などをどうやって企画して、どのように動かしていくのか、そんな質問が矢継ぎ早に飛び出す。そして「東京喰種」の最新刊を手に取り、山積みの「ワンパンマン」のフェアを見る目は、ビジネスマンではなく、マンガ好きの目であった。

 

近年の海外から日本への観光客の増加は、街を歩いていて日々感じる。JRの駅や地下鉄で見かける海外観光客は珍しくもないし、伊勢丹や高島屋という百貨店からヨドバシカメラ、ドン・キホーテまで、あらゆるお店で海外観光客を日常的に目にする。しかし日本語が読めない海外の方が足を向けないお店の一つとして、書店がある。当然だ。村上春樹がいくら好きでも、自分が読めなければ飾りにしかならない。そんな書店の中で、イラストだけでも楽しめるマンガの売場だけは例外だ。

 

日本のマンガは英語、中国語、フランス語、スペイン語、マレー語にタイ語にインドネシア語にベトナム語など、さまざまな言語に翻訳されて、文字通り世界中で販売されている。それでも最新刊の発売はオリジナルである日本語版が一番早く、そして既刊本の在庫も含めて日本の書店のマンガの品揃えは、圧倒的だ。多くの国では検閲の関係でマンガの刊行が制限されたり、特定の巻数が発禁となったりする場合があるので、全巻揃っているという状態は、好きな人にはとても素敵な空間となるらしい。

 

グレナ氏は目を輝かせてコミック売場を歩いた。そして自分が創業した出版社が50周年を迎える2019年に、パリにマンガの専門店を作りたいと、マンガ文化の伝道者は熱く語ってくれた。今では他の出版社からも様々な日本のマンガのフランス語版が出版されているし、マンガを積極的に売る店も今のフランスにはあるという。それらは彼にとって競合であるけど、マンガという出版物がフランスに根付いたことを嬉しく思うと語るグレナ氏は、マンガの出版や販売だけではなく、マンガを楽しむ文化そのものをフランスに紹介したいと言っていた。

 

自分が好きなことを仕事にし、そしてその仕事で大成功をおさめたというのに、まだ夢を実現させようと、日本までやってくるマンガ文化の伝道者。そのエネルギーには本当に圧倒された。そしてマンガ文化から出発して、日本の様々な文化に興味を示し、フランスと日本を結ぶ仕事をするようになった、僕の友人のような人たちもたくさんいる。マンガオタクが文化を創造する。そしてさらに、それらを結び付けていくのだ。

 

2019年には、パリにマンガを見に行ってみようかな?

 
 
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2017-11-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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