メディアグランプリ

嫌な奴だったのに……、とまらないほど好きになっちゃった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吹田ログ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「え!? ウソだろっ! おい、なんとか言えよっ!」
グッググッ。と僕は強くそして何度も押した。押す度に力を込めた声がもれる。
もうだめか……。そうつぶやいた時、一瞬うなるような声が聞こえた。
ハッと思わず顔を見上げてしまったが、期待とはよそに、それを最後に、もう戻ることはなかった……。
 
我が家の家電のひとつ「掃除機」は寿命を迎えたのだった。
 
新婚から10年、家電の寿命はそんなものだと割り切っていたつもりではいたが、それは突然やってくるのだからやり切れない。これから一緒に買った洗濯機や冷蔵庫なんかの大型の家電も寿命のゾーンにはいった。それはローン生活の家庭にとっては戦々恐々の時期に突入したということだ。誰もそのために貯金をしろとなんてアドバイスは言っていない。手痛い出費となるのは間違いない。
 
しかし背に腹はかえられない。そうこうしてるうちに床のゴミはたまってしまうのだ。決断は早い方がいい。どんな掃除機にどれだけお金をかけようかという家族会議となった。
コードレスの軽いやつは? いや充電池が切れたら修理が必要そうだし、メーカーの思うつぼだよ。
お掃除ロボットは? 高いでしょ、あと掃除のために家具を動かしていそう。
じゃあ、なんでもないシンプルに値段の安い吸うだけのは? 排気が匂いそう、子供の成長に悪そう……。
いくつかの想像と偏見でしかないだろう意見がでたあと、妻からの意外な発案があった。
「ホウキはどう?」というものだった。
え、うーん、ムムム、どうなんだろう、面倒くさそうだな。ちょっと想像がつかず。誰がやるの? だいたいフローリングのゴミとれるの? 昭和じゃないんだから、タタミだからこそのホウキなんじゃないの? という僕の否定的な意見をよそに、妻の友だちもいいって言うし、まぁホウキを使ってみてダメだったらまた掃除機を検討すればいいか、という話に落ち着いた。
 
数日して我が家にやってきた「ホウキ」は、両手で持つ長い持ち手のタイプで薄いグリーンの毛のものだ。サザエさんに出てきそうな、昭和の香りがぷんぷんするあれだ。アニメは家電メーカーの提供だったから掃除機を使っていたかな(笑)それはともかく、僕のホウキによるお掃除テストが始まった。
 
だが、はじめてみて僕はもう叫ばずにはいられなくなった。
「なんでこれを、もっと早くおしえてくれなかったんだーーーーーー!」
コイツは思ったよりいい。
正直、使う前はどうなのよこれは、と半信半疑でやり始めた。ところが使っているうちになんだか楽しくてしょうがない。もう毎日とまらないのだ。家事なのに!? 大好きな家事ってある!?
 
なぜって、まずホウキは機動力が素晴らしい。
思えば、おっくうで休日にならないと出さなかった掃除機だったが、ホウキは怠惰な自分にちょうどいい。いままでは納戸の扉を開けて、ズルズルと重たい掃除機を引っ張り出し、カチャカチャと組み立てる。コードを伸ばし、コンセントを電源に差し込む。それを想像するだけで、動きたくない。怠惰な自分がささやくのだ、明日でいいんじゃない?
ところがホウキときたら、セッティングがいらない、コードを出さない、コードのさばきがいらない、軽すぎるぐらい軽い、思った時にすぐできるのだ。まずこれだけでお掃除偏差値はぐっと合格ラインに近づいた。気がついたら、ホウキを持っている自分がいる。まったくそんな自分に驚きだ。
 
それだけではない、掃除がとまらない理由は毎度得られる達成感だ。
ゴミが見えすぎる、これが気持ちいいのだ。ゴミが見えて気持ち良いとはなんとも理解しがたいことかと思うかもしれないが、ゴミ好きなのではもちろんない。
ホウキではいてるそばから、どんどんゴミが見えてくる。掃除をフィニッシュする頃には、一箇所に集めるととんでもないホコリやらのゴミの量になっている。これには想像を超えて度肝を抜かれた。たかがコンパクトな60㎡程度の4人家族だが、なぜ毎日コレだけの量が出るのだと疑問に思うほどだ。いままで休日しかやってなかったことに罪の意識すら感じてしまう。
しかし、このゴミが即時に見えたまることにかなりの達成感がある。勉強を積み重ねテストの点数で結果をだせたかのような高揚感さえある。やったらやっただけの成果がある、それが見えるから楽しいのだ。数日してこれは続くと確信した。このときホウキは合格ラインを完全に突破した。
 
静かなのもいい。それも完璧な静音設計だ。
寝ている子どもたちをおこさないで掃除ができる。朝のラジオや音楽を聞きながらでもできるのもいい。それも退屈しないで、楽しくできる理由だろう。掃除機だとどちらも叶かなわなかったものだ。音楽が聞ける掃除道具が他にあるだろうか。店に行っても、吸引力とかほとんど機能の違いが分からない中、これは画期的。もうホウキのお掃除偏差値は振り切っている。飛び級も許されるに違いない。掃除という概念をこえてしまっている。だってこんなにも生活が変わってしまうのだから。
 
それから数ヶ月、もう完全にホウキは僕の家事になってしまった。だが全く嫌ではないのが不思議だ。掃除機はあれほど面倒だったのに、いまではホウキ掃除は毎朝やらないと気がすまない。
これは妻の陰謀だったのか、はたまた自分の激しい思い込みなのか。いずれにしても清潔な毎日をおくれるようになりとても気持ちがいい。
もう一度叫びたい、
「なんでこれを、もっと早くおしえてくれなかったんだーーーーーー!」
 
あ、そうこうしているうちにトースターが壊れた……。
さて次はどうするかな。
 
***

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2017-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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