メディアグランプリ

偉人になったスティーブ・ジョブズ


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記事:守屋まゆみ(ライティング・ゼミ 平日コース)

 
 
「ママ、ぼく今日はこの本買って欲しいな」
「なあに、どんな本?」と言うと、息子が差し出した本の表紙をみて驚いた。
様々な偉人を比べてみるというその本の表紙には、アインシュタインと、スティーブ・ジョブズの顔が大きく並んでいる。そのイラストに違和感を覚えたからだ。
 
アインシュタインは、理系分野にうとい私でも、有名な相対性理論など、大きな業績を残した人だと知っている。偉人を紹介する本の表紙にふさわしい人だと思う。
 
でもスティーブ・ジョブズはどうだろう。
彼が起こしたアップル社の製品は、今もデザインや機能に優れた製品として大人気だし、ビジネスの世界で大きな業績をのこした事に異論はない。でも彼は偉人というより、今のデジタル社会の象徴、とでも言った方がしっくりくる。
 
それはともかく、本好きではない息子が買って欲しいというのだから、と即購入し、お昼を食べるためにデパート内のレストラン街に移動した。
 
いつもは開店前から行列している有名シェフのイタリアンレストランにダメ元でトライしてみると、今日はまだ席が空いていた。ラッキー、と喜び勇んで通された席に座り、お気に入りのランチセットを注文する。
 
息子は購入した本を早速読みだした。よしよし、買った甲斐があった、どうか何度も読むような、お気に入りの一冊になりますように。私はその間に雑用を済ませよう、とスマートフォンを取り出す。
 
まずはFacebookのバージョンを更新しないといけなかったはずだ。確認すると19バージョンも前との表示が出た。ずいぶん放っていたなあ、と「更新」ボタンを押す。けれども何度やっても「インストールに失敗しました」の表示が出てくるばかり。しかも原因が分からない。
 
このスマホは確か記録メディアが無くて、本体にデータを蓄積してくタイプだった。だから容量が少なくて更新できないのかな、それなら何かアプリを減らしたら良いのか……。以前はスムーズに出来たのに、と原因が分からずモヤモヤしていると、心なしか目の前の「偉人、スティーブ・ジョブズ」に笑われているような気になり、ますます面白くない。
 
さて、どうしたものか、と考えあぐねたその時、隣のテーブルに座った女性二人組の会話が耳に飛び込んできた。
 
「〇〇も絶対ブログやった方が良いって。私これでお小遣い程度だけど稼いでいるんだから」
 
「えー凄い! どんな事いつも書いてるの? ブログなんて……。私特に書くことないし」
 
「私だって、普段の家事で気が付いた事とかだよ。こうやって片づけると簡単とか散かりにくいとか。日常生活の中で誰にでもすぐに役に立ちそうなこと。確か息子さんアレルギーたくさんあるんだよね? それに対応したお弁当作ってるんでしょう?」
 
「うん、作ってる」
 
「それって、どんな内容か知りたい人多いんじゃない?」
 
「そうかな、それだったら私でも書けるかな」
 
友人にブログを始める事を熱心にすすめている彼女は、次にどうやったらお金が稼げるのか具体的な方法を説明し始めた。二人の会話から意識が離せなくなり、先ほどまでにらめっこしていたスマホをテーブルの上に置く。
 
「ブログを始めたらブログ村に登録して、毎日記事をアップするの。でも毎日って大変なこともあるから、始める前に1年分、365本位書き溜めてそれからスタートすると良いよ」
 
なるほど! さすが実践している人の言葉は説得力ある! と思う話がどんどん展開していく。こんな具体的なノウハウを語れるなんて、よほどプロっぽい人なのかな、と横の席の二人に気が付かれないようにそっと視線を向けてみると、そこに座っていたのは、ふんわりした素朴なファッションの30代と思われる女性達。特別にデジタル機器に長けていそうな感じでなく、ましてやバリバリのキャリアウーマンという感じでもなく、普通の主婦、お母さん、つまり年齢以外は私とほとんど変わらない人たちだった。
 
しかもここはIT関連セミナー会場でなく、平日昼間のデパートのレストラン。そこで、お小遣い程度とはいえ、芸能人でも、特別有名でもない人が、SNSで毎日情報を発信してお金を稼ぐノウハウを友人に語る場に居合わせた事に驚く。
 
久しぶりに会う友達との会話がブログでのお金の稼ぎ方なんて、時代は進んでいるなあ。Facebookの更新すら手間取っている自分が、とても遅れているようで、恥ずかしかった。
 
けれど、同時に私のような普通の人でも、身近な素材を文章にし、世の中に価値を提供できる可能性があると知り、目の前に光が広がったようにも思えた。
 
注文していたパスタが来た。隣の二人の話題は互いの実家の近況に移り、私の意識も目の前の料理に戻った。
 
いつも待たされるからと、敬遠しがちだったドコモショップに行って、早くスマホの不具合を直そう。お金稼ぎはともかく、私も身近な事で友人にも共有出来そうな事を文章にしていってみよう。そんな事を思いながら、うにのパスタを食べた。
 
食事が終わり、息子が鞄に本をしまう時、表紙のスティーブ・ジョブズに違和感はなかった。もう彼が偉人と言われる世の中になっていて、私がそれに気が付いていなかっただけだったのだ。
 
 
***

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2017-12-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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