メディアグランプリ

夜は身近過ぎて気づかない


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【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:中西かなえ(ライティング・ゼミ日曜日コース)
 
「あー! 旅行に行きたい!」
「もうすぐ年末年始じゃん。どこか行けば?」
「年末年始は、人が多いし何より旅費が高いじゃん」
「身近な温泉とかだったら、意外と空いているかもよ?」
「えー、連休取れるから海外が良いな」
「だったら、行ったらいいじゃん」
「だから、旅費が……」
 
年末が近づくと、似たような会話がいろいろな所で飛び交う。
結局、行く人はお金のことは気にせずに行くし、お金のことを気にする人は、結局は行かないのである。
私も同じようなことを先輩に話をしていた。
 
「先輩。私は旅行に行きますので、有給休暇も申請しますね」
「俺は構わないけれど、なぜわざわざ海外に行く?」
「え? だって、こんなに連続で休めるのは年末年始とゴールデンウィーク位ですよ」
「じゃ、質問を変える。海外に行く魅力はなんだ?」
 
この先輩。決してインドア派ではないのだが、海外に全く興味を示さない。
かと言って、日本が素晴らしい大好きという考えの持ち主でもない。
登山やキャンプが大好きで、日本の山々を暇を見つけては歩き回っている。
海外には、日本とは比べものにならない位の大きな山や、また別の魅力がある山もあるのに、国内だけに留まっている。言葉では日本が好きという訳ではないと言っているが、行動とのギャップがある。
 
「日本と違う魅力が海外にはあるじゃないですか。料理とか観光地とか」
「料理は、日本人向けにアレンジされた国内で食べる外国料理の方がうまいと思うが?」
「本場で食べるのが良いんじゃないですか!」
「観光地行って楽しいか? 人の手が入っているんだぞ?」
「いやいや。自然とか全く違うし。それに、世界遺産とかスケールが違うじゃないですか。おまけに歴史というか古さというか……日本とは比べもになりませんよね。ロマン、ありません?」
「ロマン?」
 
実はこの会話。
過去にも何回か繰り返し話している内容なのである。
大体この次の返答も予想できるので、先回りして答えてみた。
 
「あ、マロンじゃないですからね。いつも、ボケますよね?」
「先に決まりゼリフを取るなよ。で、ロマンって具体的に?」
「具体的に……、言葉にしにくいですけれど、空気というか」
「空気? 日本と同じように酸素はあるぞ」
 
……だんだん面倒になってきた。
この先輩、良い人なのだが癖が強いのだ。
会話を進めたくても、話を途中で脱線させるのが得意というか。
少し黙っていると、先輩から口を開いた。
 
「大体、なぜ時間とお金をかけてそんな遠い所に行くんだ?」
「その場に行かないと味わえないことが有るじゃないですか」
「うん。それは分かる。が、さっき空気って言っただろ? だから、具体的に何だ?」
「例えば、ギリシャのパルテノン神殿に行ったとしますよね。神殿を見て、紀元前のにも存在していたんだなーって、思うとすごくないですか? 何千年も前の人と同じ神殿を見ることができるんですよ」
「同じ姿じゃないじゃん」
「上げ足取らないでください。同じ姿でなくても、同じ存在していたモノを見ることができるし、そこに存在する雰囲気があるじゃないですか。ロマンじゃないですか?」
 
ちょっと興奮してきてしまった。
私は歴史が大好きなのだ。自分が会ったこともない昔の人が見たものが、長い年月を経て私も見ることができることがとても嬉しいのだ。この嬉しさをどうやって先輩に伝えたらよいのだろう?
 
「うーん。確かに存在しているモノは同じかもしれないが、過去の人と同じ雰囲気ではないとは思うが?」
「昔と全く同じではないですけれど、消滅もせず何千年も存在しているんですよ? 日本じゃそんなモノ、無いじゃないですか?」
「日本でも見れるぞ」
「え?」
 
新しい展開だ。
いつもは、大体「マロン」と言った段階でこの手の話は終了させている。
日本にそんなモノあったっけ?
次の瞬間、ひらめいた。
 
「あ! 山とか言わないでくださいよー。確かに、富士山とかは大昔から在りそうですけど」
「それもそうか。考えるとそうだな」
「あと、日本列島とかも言わないでくださいね!」
「いやいや。多分、富士山も日本列島も昔から姿は変わっているって。変わらないモノ」
「変わらないモノ?」
「身近にあるじゃん」
「え? 身近に?」
 
……全く想像つかない。
ひょっとして、嫌な予感が走った。
 
「先輩。日本人なんて答えはダメですよ」
「生き物は変化しているから、もともと答えとして用意していないが」
 
違ったか。
一体何だろう?
 
「先輩、何ですか?」
「それは国内にもあるが、海外にもある」
「え? 海外にも?」
「そう考えると、これはスケールが大きいモノだな」
「海外にも……」
 
ひょっとして……
この答えだったら、ドッと疲れる。
 
「海。じゃないですよね?」
「場所によって海の色とか全く違うだろ?」
「もう、答えを教えてくださいよ!」
 
先輩が窓の外を指さした。
「月だ」
 
……月?
目が丸くなっている自分が分かる。
 
「古くから歌や作品なんかに登場していて、そして、今でも全く形を変えず存在している」
「確かに、そうですが……」
「なぜ、身近にある偉大なモノに気付かないのかな?」
 
先輩の手の平の上で、踊らされていた気分だ。
でも、今日の先輩はなんだか素敵だと思った自分がいた。
 
 
 
***

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2017-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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