メディアグランプリ

文章が書けなくなったら、さあ私と踊りましょう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:木佐美乃里(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「ああ、もう! 何度やっても全然うまくいかない! もういっそ辞めちゃいたい!」
 
ライティング・ゼミの締め切りが近づくたびに、心のなかで叫びだしたくなるセリフだ。
いや、一人で部屋にこもって書いているときは、実際に声に出してしまっているときもある。
もっと面白いものが書きたいのに、ひとの心に届くものが書きたいのに、考えれば考えるほど、うまくいかない。自分が書けることと、誰かが読みたいと思うもの。それが重なるものは何だ? いつもジタバタしているうちに、刻々と締め切りの時間が近づいてくる。それまでに何とか書き連ねてきた文章も、全部削除してしまいたくなる。でも一から書き直す時間はない。また、あの的確すぎて、ぐうの音も出ないようなフィードバックが来るのかなあ。そもそも、わたしが文章を書いて誰かに見てもらおうなんて、おこがましかったのかもしれない。かあ、今度こそ、辞めちゃおうか。
 
いやいや、落ち着いて、落ち着いて。
ふう、と大きくため息をついて、こんなこと、前にもあったなあと思い出す。
 
「美乃里ちゃん、もっとつま先伸ばして! 回転遅い! 全然音と合ってない!」
中学生のわたしは、地元の小さなバレエコンクールへの出場を控えているところだった。
アニメのキャラクターに憧れて、親に頼み込んでバレエを習い始めたのはいいものの、最初から、バレエに向いているところなんて1つもなかった。同じ教室に通うほかの誰よりも、胴長短足で、脚は太いし、身体も硬い。ひらひらしたスカートの付いたレオタードを着て、音楽に合わせて踊るだけで、楽しくてしかたなかったのは、小学生の真ん中くらいまでで、あとは苦しいことのほうが多かった。
あんなふうに踊りたい。もっと軽く、もっと高く。頭のなかには完ぺきなイメージが浮かんでいるのに、身体がその通りに動かない。誰のものでもない、わたしの身体のはずなのに。同じクラスの女の子たちが、軽々と跳んだり回ったりしているのが、うらめしくてしかたなかった。
それでも、「美乃里ちゃんには、これ」と、コンクール用に先生が選んでくれた曲を、自分のものにしたかった。
 
「ちゃんと5番ポジションに降りて!」
実はクラシック・バレエは、一つひとつの細かい動きやポジションにまで、「正しい」形が決まっている。このポーズは、脚の角度はこうで、顔の向きはこう、といったふうに。形は決まっているのだから、あとは、自分の身体をどうそこに近づけていくかの問題だ。それには、練習量がものをいう。何度も繰り返し練習して、身体に染み込ませていくしかないのだ。
 
もうひとつ、クラシック・バレエが面白いのは、そうした正確な技術が必要とされるにもかかわらず、芸術性も問われるところだ。踊りがとても上手なのに、なぜか心に響かない人もいる。その一方で、多少の欠点がありながらも、ものすごく魅力的で、多くのファンを惹きつけるバレリーナもいる。なんと難しいことだろう。
 
先生に叱り飛ばされ、何度も涙ぐみながら、それでも練習を重ねた。回転技がうまく決まらないわたしに、先生がわたしに言うことは、いつも同じだった。
「もっと1つずつ丁寧に。練習が足りないわ」
それしかなかった。
 
そしてコンクール当日。舞台のそででは、頭が真っ白だ。落ち着いて振り付けをおさらいしようとするけど、頭のなかがめちゃくちゃで、落ち着いてものが考えられない。最後まで踊りきる自信がない。わたしごときが、こんなところに立っているなんて。恥ずかしい。逃げたい。
それでも、飽きるくらい聞いた、あの曲が流れだす。反射的に駆け出していった舞台の先から、スポットライトが強く当たって、一瞬前が見えなくなる。でも、つぎの瞬間。客席のたくさんの人の注目が、舞台の中央のわたしに集まっているのが分かる。
落ち着いて。いつもと同じことをやるだけ。何度も何度も踊った振りつけは、真っ白のあたまのなかに、しぶとく残ってくれていた。考えなくても、次の脚が出る。
丁寧に。心をこめて。演じるこの役のよろこびが、観ていてくれるひとたちに、伝わるように。
 
「美乃里ちゃんの、ジゼルだったね」
先生が言ってくれた。
無事に踊りきったときには、順位なんてどうでもよくて、あたたかな拍手が、ただ、とてもうれしかった。
 
ライティングは、クラシック・バレエによく似ている。
面白い文章を書くための「形」は用意されている。再現性の高さはお墨付きだ。同じ「形」を使って書いているはずなのに、あの人と、この人の書くものは全然違うのも面白い。
わたしは、思うようにうまく書けなくて、つまずくことばかりだ。もっと面白いものを書くにはどうしたらいいの? その答えも、あのときの先生と、きっと一緒だ。
何度も何度も、飽きるまで、いや飽きても書き続けること。あきらめずに書き続ければ、わたしはもう一度、あのときのような拍手に包まれることができるだろうか。その答えも、書き続けたその先にしか、きっとないんだろう。
 
もしまた、何をどう書いたらいいかわからなくなってしまったら。
今でも身体が覚えている、あの曲を踊ろう。
きっともう一度、書き出す元気と力をくれるから。
 
 
 
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2017-12-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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