メディアグランプリ

インスタ映えでは終われない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
 
記事:河邉ひなた(ライティング・ゼミ平日コース)
 
テレビのクイズ番組で「インスタ映えとは」なんでしょう? という問題が出題されていた。私は画面を眺めながら2度、少し驚いた。
「そんなものが問題になるのか」
と少し驚き、少し驚くほど身近に感じていた自分に気づいてまた少し驚いたのだ。思い返せば、仲良くなった友達とはインスタグラムのアカウントを聞きあって繋がるし、移動時間や隙間時間など暇なときにはなんとなく見ている。身近だということすらわからなくなるくらい身近だ。ちなみに問題の答えはInstagramに写真を公開した際にひときわ映え、沢山「いいね!」が貰える、という意味で用いられる表現、とかなんとか言っていた気がする。
 
ある日、インスタグラムで1つの投稿が私の目を引いた。女の人が涙を流している絵だった。よくよく調べてみると、あるカフェで個展が開かれていて、その中の一つの作品であることがわかった。数日後にふとその絵を思い出してカフェに行ってみた。
 
そこはカフェの入り口からギャラリーが隣接しているのが見えるくらい小さなお店だった。カフェに入ってすぐのカウンターでコーヒーを注文した。お店の人が丁寧に淹れる様子を眺めながら待つ。カフェ自体とてもおしゃれで、いかにも都会人な格好をして椅子に掛けているお兄さんたちが馴染んでいた。私もそれなりの格好をして一応はお化粧もしてはいたのだが、浮いてないか心配でなんだかそわそわした。私はコーヒーを受け取るとギャラリーがある店の奥にそそくさと進んだ。
 
カフェスペースからギャラリーへ一歩踏み込むと、照明が明るく雰囲気がガラリと変わった。ギャラリーには私一人で音楽もかかっておらず、静かだった。そこには真っ白な壁に鮮やかな絵がずらりと並んでいた。九枚の絵が正方形に展示してあったり、三枚の縦長の絵が信号機のように並べられていたり、壁一面にいくつもの絵が一列に並んでいたりした。
しばらく見入った後
「投稿されていたくらいだから写真撮ってもいいんだよね?」
と思い、気に入った絵をカシャカシャとスマートフォンのカメラで撮っていた。するとお店の人が寄ってきて
「シャッター音なしの撮影をお願いしてます」
という旨を伝えられた。知らなかったとはいえ注意されたことがなんだか恥ずかしくて
「ああ、そうなんですね!わかりました!」
とかなんとか、変に明るいトーンで私は答えた。
 
お店の人がカフェのほうへ戻ったあともしばらく絵を眺めてはいる素振りをしてはいたものの、内心はきまりの悪さを引きずりまったく絵に集中できていなかった。そこで私は、一旦椅子に座りコーヒーをゆっくり飲んで気持ちを落ち着けようと思い、カフェスペースに戻ることにした。
 
座ってぼーとしていると女子大生らしき四人組が入ってきた。そう広くない店内で女子大生たちの声は良く通った。
「私カフェラテ!」
「私はこの期間限定ので」
「アイスコーヒー下さい」
「カフェモカで」
「かしこまりました。一杯一杯淹れるのでお待たせするかもしれません」
彼女たちがギャラリーへ入っていく姿をなんとなく眺めていた。彼女たちはすぐにスマートフォンで写真を撮りだした。
「ああ、シャッター音はダメなんだけどなあ」
と思っていると、注文した飲み物を持ってきたお店の人にやはりシャッター音を注意されていた。注文した飲み物がいきわたるとみんなで何枚か自撮りをして、飲み終わるとすぐに帰って行ってしまった。
嵐のような数分間だった。
 
その次にお店に入ってきたのはお店の人と知り合いらしき人だった。コーヒーを受け取ってお店の人と談笑しながらギャラリーへ入っていった。
「一点一点意図が違うからじっくり見て行って」
お店の人が言った。
彼らのギャラリーでの会話はカフェスペースにいる私まで届いた。
「作品は数に限りがあってもう売り切れてしまったものもあるけどまだいくつかオーダーできるよ」
「追加作成しないの?」
「数量限定にしたり高い印刷技術を使ったりすることで、手に渡った人たちに希少価値を感じてほしくてね」
 
お店の人の言葉から作品に対する熱意を感じた。そういうことだったのかと思った。音楽もかけずシャッター音も禁止して音のない環境にして、絵の意図に触れることだけに意識を向けてほしかったのだと。初めから気付けなかったことでまた恥ずかしさを感じたが、今度の恥ずかしさはそう長引かなかった。
 
写真を撮って投稿したり、インスタ映えを狙うことが悪いわけではない。実際私も素敵な投稿を見てこの個展を知ってやってきたのだから。
ただ、その作品、場所、料理、つまりコンテンツはインスタ映えとして消費されてそれで終わりでいいのだろうか? 消費されっぱなしでいいのだろうか?
インスタ映えで終わることはショートケーキのイチゴだけを食べるようなものなのかもしれない。イチゴを食べてごちそうさまなんてもったいない。表層は生クリームで覆われていて中は見えないけれどスポンジケーキの間には美味しいクリームが、そして予想外の果物が入っているのかもしれないじゃないか。
 
カップルがギャラリーから出てきた。
私は椅子から立ち上がりもう一度ギャラリーに足を踏み入れた。
そしてインスタ映えの奥に手を伸ばした。
 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2017-12-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事