メディアグランプリ

31センチの壁


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:橋本真美(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「うん、やっぱりそっちがええわ」
あ、また言われた。
つくづくあたしは長い髪がそぐわないらしい。
髪を切る度に言われるお決まりの言葉を聞くにつれ、そう考えるしかなくなっていった。
どのみちそんな評価とは関係なく、我慢できない性分もあって大人になって肩より下に髪が伸びたことがあまりない。
たまに衝動的にロングヘアに憧れて「伸ばしたいな」と言い始めるのだが、それも戯れ言扱い。行きつけの美容室ではもはや定期的に罹患する病気のように扱われ「次から切りたいって言ってきても断りましょか?」と冗談で言われる始末。切りたくなると我慢ができないのだから仕方ない。そんなあたしがここ2年以上髪を伸ばし続け、気づけば背中の半分ぐらいまでを覆うようになった。こんな長さは中学以来だ。
 
なぜ伸ばせたのか。それはひょんなことからだった。
伸ばせない理由の1つに、キレイな状態が保てず、中途半端な時期の鬱陶しさに耐えられないことがある。首にかかる鬱陶しさ。半端な長さゆえのハネ。まとまりが悪いせいでどうにもだらしなく見える。そんなことが重なり、どこかのタイミングで限界がやってくる、というのがいつもの流れ。
ある時、美容師さんがお試しで施してくれたトリートメントで一時的にでもツヤツヤになったことに気を良くし、しばらく伸ばしてみたらくくれる長さに。そうなると調子に乗って「飽きるまで伸ばしてみようかな」となった。
ひょんなことから念願のロングヘアが現実に見えてきたのはいいが、こうなると「切る」ことが以前よりもったいぶってしまう。「飽きるまで」と言いながら、切り時を見失ってしまったのだ。そんな時に知ったのがヘアドネーションだった。
 
ヘアドネーションは、切った髪を小児がんや無毛症、先天的な脱毛症や不慮の事故などで髪の毛を失ってしまった子どもたちに医療用のウィッグを作るための「髪の寄付」。故小林麻央さんをはじめ、芸能人が行ったことで最近は随分知られるようになった。
寄付するために必要な31センチが切れる長さになるまで頑張ってみよう。勝手に伸びるもので人のためになるなら。とはいえ、言うが易し、行うは難し。31センチの壁は思いのほか高かった。当初は結構長い状態だと思っていたが、31センチ切るとなると刈り上げや五分刈りになってしまう。切った後の自分の長さを考えると、まだまだそこから20センチ程が必要だったのだ。
聞くと、髪の伸びるスピードは、平均で1ヶ月に約1センチ。元来飽きっぽい自分にとっては、かなり長丁場の挑戦となった。友人らに伸ばしていることを話し、途中でくじけないよう自分に追い込みをかけ続け、結果的にそれから約2年を要した。
 
自分と違う状況の人に共感することはなかなか難しい。
甘い果実酒が好きな人にいくらスコッチアイラモルトのスモーキーな味わいを説いてもその魅力は伝わらないし、南国の人に北国の雪の苦労はきっとぼんやりとしかわからない。
だが、ひとたび違った環境に身を置いてみると見えてくるものがあるものだ。
自分の身なりのためにも、寄付するためにも、傷んだ状態で髪を伸ばすわけにはいかない。勝手に伸びるとはいえ実際は手入れが思いのほか面倒だった。ブラシに絡まって外れなくなり、1本1本気の遠くなるような気分で外して行ったこともある。夏場は当然暑い。それに、髪が長いと抜けやすいのか、それとも抜けると目立つのか、掃除の際の床の抜け毛と排水溝の詰まりも増えた気がする。短い頃にはどれも気づけなかったことだ。掃除が楽なことから「ハゲ割」を始めたホテルがあるというのも頷ける。ロングヘアの人はただ伸ばしているわけではなく、さまざまな苦労を経ているのだなと感心した。そんな体験ができただけでも意味があったのかもしれない。
 
そして、そんなドネーション・チャレンジもつい先日幕を閉じた。
どうせならと密かに別の願掛け要素を持たせ、「これが叶ったらいよいよ切ろう」と思い始めたのが終わりの始まり。よくよく考えたらあたしは一体この髪の毛にどれだけの責務を負わせるつもりだ? とすぐさま反省。何事も欲張ってはいけない。
既になんとか切れそうな長さに到達していたこともあり、気分を一新すべく断髪を決めた。
切るとなったらあっけないもので、美容室に予約をし、あっという間に元通りのショートヘアに。
「長いのも似合ってると思うよ」なんて言っていた周りの人たちも「やっぱり短い方がええわ」と異口同音に告げ、あたしを苦笑させた。
 
長かった髪はなくなり、使うシャンプーやトリートメントの量も格段に減り、その代わりに手に入れたのは「やればできる」という自信。飽きっぽい自分の中に決めたことをやり遂げることのできる粘り強さを見出すことができたのは大発見だった。
ライティング・ゼミも自分の中では同様のチャレンジの1つ。分かりやすいゴールというのはない文章の世界だが、目標を設けることはやはり重要。一定の目標を達成できた時のことを考え、自分の中の粘り強さをもっともっと育てたいものだ。
 
 
 
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2017-12-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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