メディアグランプリ

うさぎはゴミじゃないんだよ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中原優香(ライティングゼミ平日コース)
 
「……なにこれ」
それは、何気なくTwitterを見ているときのことだった。
目に飛び込んできたのは、フォローしている誰かが「いいね」した投稿。そこには、信じられない内容が書かれていた。
 
「ゴミ捨て場に棄てられたうさぎを二匹、保護しました。ケージに入れられたまま放置されていたようです」
 
なんということなのだろう。
あまりの憤りに見開いた目から、涙がぼろぼろとこぼれる。間違いなく、ここ最近で一番激しい怒りを覚えた瞬間だった。
 
わたしの実家では、うさぎを一匹飼っている。かわいくて大好きで、愛おしくてたまらない存在だ。
うさぎの魅力は、何も長い耳やふわふわの手ざわりだけではない。もの言いたげにつぶらな瞳、体全体からあふれる豊かな表情、撫でてほしいときに低く構えるちいさな頭、一心不乱に野菜や果物を食べるその姿。どの瞬間、どの角度を切り取っても、うさぎは本当に愛らしい。自由気ままで甘えん坊なその性格は、日常に最高の癒しを与えてくれるのだ。
それなのに、そんなうさぎをゴミ捨て場に棄てる人がいるのだという。
「うさぎは、ゴミじゃないんだよ」
そのツイートを目にしたとき、思わずそう声が漏れた。コメント欄を見てみると、わたしと同じことを書いているものがいくつも見つかり、少し救われた気持ちになる。
 
この寒い中、飼い主はいったいどんな気持ちでうさぎを棄てたのだろう。
育てるのが面倒になったから?
飼うことに飽きたから?
自分の手で死なせるのは忍びないから?
棄てることが正当化される理由なんて、何一つとして存在しない。たとえこの先回続けられなくなるような事情ができてしまったにしても、譲り先を見つけるとか保護所に預けるとか、何かしらできることはあったはずだ。
なのに、どうして、どんな思いで。
 
うさぎのために何かしたくて、居ても立っても居られなくなったわたしは、うさぎの保護シェルターをつくっている団体に寄付をすることにした。
正確には寄付ではなく、リターン有りのクラウドファンディングである。同じ人のツイートでその団体の存在を知り、ごく少額ではあるが力になりたいと思ったのだ。
どうか、新しい飼い主に出会ってしあわせになれるうさぎが増えますように。
人間のエゴで不幸な死を遂げるうさぎが、少しでも減りますように。
 
しかし、そう思った直後、ふと疑問が生じた。
うさぎを棄てるのは、人間のエゴ。じゃあ、わたしのこの気持ちはどうなんだろう?
 
しあわせになってほしい。
新しい飼い主に出会ってほしい。
不幸な死を迎えてほしくない。
 
これらの気持ちは、そのままこう言い換えることができるのではないか。
 
しあわせに暮らすうさぎを「わたしが」見たい。
新しい飼い主に出会ったうさぎを「わたしが」見たい。
不幸な死を迎えるうさぎを「わたしが」見たくない。
 
これまで、ボランティアとはほぼ無縁で生きてきたせいだろうか。奉仕精神がとことん欠如しているからだろうか。恐らくとても初歩的なところで、わたしはつまづいてしまった。
言ってしまえば、ペットなんてそもそも人間のエゴである。「かわいいから」「癒されるから」、そんな理由で家やケージの中に動物を閉じ込めて、それは本当に動物にとっての「しあわせ」なんだろうか?
学校や課題で無理やり考えさせられるのではなく、綺麗ごとでもなく、心からそんな風に思ったのは多分はじめてのことだった。
 
皮肉なことに、エゴに憤ったことがきっかけで、自分自身のエゴが露わになってゆく。
「捨てうさぎ」はめったに聞かない話だが、捨て犬や捨て猫はもはや「いて当たり前」のようになっている。もちろんわたしも、これまで幾度も耳にしていたはずなのに、今回ほどの怒りを感じたことがなかったのはなぜなのか。
それは、わたしが犬や猫にうさぎほどの愛情を持っていないからだ。棄てられたあとの犬や猫がどうなるのか、知識としては知っていても、どこかで自分とは無関係だと思っていたからだ。
これを、エゴと呼ばずしてなんと呼ぼうか。まったく情けない話である。
 
うさぎにとってのしあわせって、なんだろう。
そのためにわたしは、何ができるのだろう。
考えれば考えるほどに人間のエゴが浮かび上がり、終わらないループとなってしまう。
正解なんて、多分ない。結局はエゴから抜け出せていない、ありきたりなつまらない答えだと感じる人もたくさんいるだろう。
それでもわたしは、声を大にしてこう言いたい。
どうか、うさぎを棄てないでほしい。
わけもわからず外の世界に放り出されたうさぎの気持ちは、勿論わたしにはわからないけれど、多分すごくかなしいと思うのだ。
そんなの、かわいそうだからやめよう。もうエゴでもなんでもいい、結論がそうなってくれるのであれば、わたしはそれで構わない。
その理由を正しく見つけるのは難しいけれど、「間違っている」と直感的に思ったことは多分たいてい、間違っているのだと思うから。自分の思う正しい方へ、これからも進んでいってみたい。
 
その気持ちを、そのツイートをしていた方に伝えてみた。
すると、こんな言葉が返ってきた。
「誰かや何かを傷つけたりしなければ、自分の進みたいほうに進んでいく。自己満足。それでいいと思います」
その方も、実際に動物の保護活動をしている方々からそう学んだそうだ。
嬉しかった。悩みながらもわたしが進んだことは、きっと何かに繋がってくれるはずだ。
 
しあわせに暮らせるうさぎが、一匹でも多くなりますように。
ただ、そう願うばかりである。
 
 
 
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2017-12-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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