メディアグランプリ

半世紀生きてきた僕が最近手に入れた幸せの魔法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:霧生 錠(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「待ったぁ?」
 
「ううん。でも、ちょっと下見がてら散歩していた。それより、そのワンピース、とても素敵だけれども寒くないかい」
「うふふ……」
 
彼女は大学4年生。この春から社会人になる。淡いメイクがとてもかわいい。少し強い北風が心配といえばそうだけれども、空気も澄んで、日差しは暖かだ。
 
「1時間くらいになると思うけど、よろしく」
 
そう言って、彼女と二人、あらかじめ下見をしておいた場所へと歩き出した。
 
また別の日。
 
「あの娘はちょっと遅れるけど、入り口はラインで伝えたから先に行って準備しましょう。3時間あれば、着替えも含めて余裕はあるわね。私たち今日は全員、サンタコスチュームよ」
 
この日の写真は、今もツイッターに残っていて、3人の美女は優しく微笑みかけている。
 
先日、僕は53歳の誕生日を迎えた。人生100歳とか言われ寿命の半分以上、半世紀を越えて生きてきた。中学、高校、そして大学。人並みに受験勉強を頑張って、大学生になったら素敵な彼女がほしいと願っていた。クリスマスイブには、麻布や六本木のレストランとかで彼女の瞳を見つめたいなどと思っていた。そのために、デートマニュアルを買って、歩くコースの下見までした。車はホンダのインテグラ。そりゃ、ソアラやスープラ、プレリュードからは大きくランクは下がるけど、すてきな夜景スポットは抑えてあるので、きっと満足してもらえるに違いない。
 
そのように計画は綿密だった。そして、肝心の女性に声をかけた……
いや、声をかけようと思った……
うーん、誰か誘いたかったな。
 
正直に告白すると、声をかけられる人すらいなかった。もちろん、サークルやゼミの行き帰りとかで、二人並んで歩くシチュエーションはなくはないが、しっかりと、瞳にフォーカスした記憶は、残念ながらなかった。
 
ところが、人生後半を迎え、定年後の生きがいをあれこれ意識し始めたころ、確か、2,3年前、思えば「魔法の小箱」を手にしていたのだった。その小箱のおかげで、今では、彼女の輝く瞳を飽きるまで見続けられたり、口もとの変化を見比べたり、さらに言えば、恋人にしか見せない姿さえ、至近距離で目の当たりにすることが可能になったのだ。
しかも、フレンチのコース料理を奮発したり、車での送り迎え、金銭的なやり取りすらなく、微笑を惜しみなく僕に与えてくれるのである。
 
その小箱に魔法の力が宿るようになるまで、1年と少しかかったように思う。それには、不思議な本屋での体験やいくつかの偶然が重なってできたことだけれども、さまざまな表情を数時間独り占めにできる奇跡は、大学生の自分には夢にすら思わなかっただろう。
 
その小箱の原理は、極めてシンプルだ。その人との時間を光に託して0か1かでデータ保存するのみである。その保存された光の記録を本人や第三者に見せたとき、新たな喜び、笑顔が生まれるのである。それが、次への期待となって瞳を見つめる幸せな時間に、いわば正のスパイラルとしてチャンスが広がっていくのである。
 
小箱に光を取り込む形は、円柱をイメージするといいと思う。そして、その円柱は、バトンのように細長い棒か、薄く広いパンケーキのようなものか大きく2つの形態がある。
小箱に取り込む適正な光の量は一定の値の範囲内である前提で、バトンタイプは光の取り込み口を狭くする一方、取り込む時間を長めにする。パンケーキタイプは、光の取り込み口を大きく広げながら、その時間は相対的に短くしてバランスを取る。
 
パンケーキタイプの光の像は、背景がボケて、被写体となる彼女、あるいは瞳がくっきりと浮かび上がるメリットがある。たとえば、背景の街路樹に巻かれたLEDランプが、そこでは淡い光のシャボン玉となって、幾えにも重なりあって幻想的な雰囲気すら奏でるのである。
 
これに対して、バトンタイプは、複数の美女が前後に立ったときでも、極力、その皆にピントを合わせられる利点がある。後ろの壁の文字まで読み取れるので、美女に集中して見たい人の注意を邪魔しないように構図を考えたい。
ところで、パンケーキとバトン、いずれの調整でも、そもそも光の量が少なく、できた像が暗くなってしまいそうなとき、たとえば2つ対策があって、ひとつはISO感度といって、小箱の中の電気の力で取り込む光を補う方法、でもこれはあとから像を見たときに、滑らかさが損なわれる危険性がある。もうひとつは、ストロボで、写す被写体にその場で、光を追加する方法である。このストロボは、複数台いろいろな場所から光を当てて、できる影を楽しむといった、その作品の可能性に大きな広がりをもたらしてくれる、いわば、魔法の追加オプションといえるだろう。
 
こうしてできた作品は、フェイスブックのプロフィールを飾ったり、ライブのチラシになって多くの人が足を運ぶきっかけになったり、あるいは、その人のラブストーリーのきっかけになるかもしれない。
 
こうしてみると、その魔法は、僕のまわりに美女を引き寄せるにとどまらず、撮られた人、写真を見た人、それをきっかけに物語が始まったまだ見ぬ人にささやかな幸せをかけられているのかもしれない。
 
今、僕が手にしている小箱には、「SONY」の4文字が白く刻まれている。それは、誰でも一定の投資をすれば手に入れられるものである。でも、その小箱使い、いや、魔法使いは、さまざまなタイプ、作風があり、そしてそれは経験値を上げるたびに進化していくのである。
 
春になって、桜吹雪。
あなたと魔法をかけたい……
 
 
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2017-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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