プロフェッショナル・ゼミ

30歳を目前にすると「カワイイ」は作れなくなる《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:よめぞう(プロフェッショナル・ゼミ)

「うーん、やっぱりおかしい」

iPhoneに映る画面を見ながら、私は首をかしげた。
本来、ディスプレイに映っているはずの私がそこにいないのだ。

角度も大丈夫。
気になるアゴは出過ぎていない。そこそこ隠れている。
化粧は……多少取れかかっているけれど許容範囲。
画面上には「盛れている」私が映っているはずなのに、どういうわけか「盛れていない」私が自信に満ち溢れた「キメ顔」を披露しているのだ。
私は全くわけがわからなかった。昨日、遅くまでゲームをしていたからなのか、それとも最近仕事が忙しかったからなのか……目の前の現実を受け入れることがどうしてもできなかった。
30歳を目前に控えた人妻が何をしているのかというと、会社のブログに使う写真を撮るためだった。所属する店舗ごとに「店舗ブログ」を作成していて、お店の雰囲気や今が「旬」の商品の紹介をインターネット上に発信している。そして、私は時々その「店舗ブログ」を他のスタッフの方と協力して更新しているのだ。産休が開けて、異動した店舗が特に「店舗ブログ」を意識しているのでブログを書くことはもちろん、ブログの「華」として自分の写真が乗ることが頻繁にあるのだ。
異動したばかりの頃は「店舗ブログ」を眺めながら、どこか胸の奥に小さく引っかかるモヤモヤを感じてはいたが、一体それが何なのかは全く検討が付いていなかった。けれども、異動して半年を迎える頃……自分自身も「ブログ更新」に携わったり「ブログ用写真」を撮り始めるようになったりした辺りから、小さかったはずのモヤモヤが大きく膨れ上がっていっているような感覚を覚え始めた。それが、少しずつ現実味を帯びてきたのは「店舗の女性陣」のみで写真を撮った時だった。1年仕事のブランクがあったと言えど、会社で言えば「中堅」の位置。先輩もいれば後輩もいるのだ。女性5人でブログの「トップ画像」に使う写真を撮ってもらい、それをみんなで確認している時だった。

(あれ……私、こんなだっけ?)

口にこそ出さなかったけれど、自分自身の「劣化」を認めさせられたような気分だった。みんなメイクも表情もバッチリ良い感じだというのに、どうして私だけ「幸薄そう」な感じなんだろう? 化粧ノリ悪かったかな……?
そのまま「幸薄感」たっぷりな私の顔が映った5人の集合写真は「加工」されて「店舗ブログ」にアップされる時がやってきた。ブログがアップされるや否や、私は急いで「加工」されて「カワイくなった」であろう写真を確認しに、パソコンを開いた。けれども、現実は私にちっとも優しくなんてなかった。
写真全体に「フィルター」をかけて実際の画像より「柔らかく」して、肌の色なんかを「キレイに」してもらっているはずなのに、どうも自分だけ「盛れてない」気がしてならないのだ。自分でいうのもなんだけど、私の顔はどちらかと言えば超絶美人ではないけれど、ブサイクでもないと思う。「超美人だね!」とチヤホヤされたことはないけれど「顔は整っているよね」とは言われるので、一応見れる顔ではあるはずだ。それなのにどうしても「カワイイ」が作れないのだ。
「カワイイは作れる」って言ってたのはどこに行ったんだ。一昔前、エッセンシャルダメージケアというヘアケア商品のコマーシャルを見たときは衝撃が走った。「カワイイ」って、もともと生まれ持った人にしか存在しないものだと盲信して、自分のオシャレには無頓着だった私にとっては天からの恵みのような言葉だった。だって「カワイイ」が作れるっていうことは、お世辞にも「カワイイ」とまでは言えない私でも、それなりに努力すれば「カワイイ」を「作れる」ということじゃないか。これはすごい! いけるぞ! と若かりし頃の私は本気で思っていた。コマーシャルのイメージキャラクターに、お世辞にも「美人枠」とは言えない南海キャンディーズのしずちゃんが起用されていたのも「カワイイはつくれる」のキャッチコピーの信ぴょう性をより高めていたように感じる。
ところがこのザマだ。所詮「作り物のカワイイ」なんて、時間が経てばいつかは綻びが出てくるのだ。やはり「本物のカワイイ」には勝てないのだ。かわいくなりたかった。一度でいいから「カワイイ」って言われてチヤホヤされてみたかった。少々気の強い性格も災いして私は「チヤホヤ」とは無縁の人生を歩んできた。世間の「野郎ども」は「カワイイ子」には本当に甘い。その子がどんなに性格が悪くても可愛ければ「小悪魔キャラ」で済まされるのだ。だけど、私みたいなのがブラックな一面をのぞかせるだけで「こいつは性格が悪い」になってしまうのだ。「カワイイ」と「そうでない」では世間の対応まで変わってしまうのだ。だから私は望むなら「カワイイ」の方でいたかった。それなりに努力だってしてきた。けれども、どう頑張っても「カワイイ」で「チヤホヤ」されるというところにはいけなかった。あと半年で30歳を迎える今、もう「チヤホヤ」は諦めないといけないのかもしれない。20歳になるときに感じた「オトナになる」と同じように30歳も「大人になる」わけだ。いつまでも、高望みの「カワイイ」のために無理して「盛る」だとか「作る」だとかいう行為に逃げることは少々限界があるのかな……と感じ始めていた。
では、どうすれば少しでも「カワイイ」でいられるのか。若い子たちと同じ土俵とまではいかないけれど、横に並んで「見劣りしない」でいられるのか。
答えは「持っている素材を活かす」ことだった。
魚だったら、新鮮なうちは刺身でもカルパッチョでもなんでもオシャレに作っていただくことができる。けれども時間が経ってくるとどうしても「生」ではいられない。「火」を通さなければいけないのだ。焼き魚や煮魚でなければいけない時期に私もそろそろ差し掛かってきたのだろう。認めたくないけど。まあ、全部刺身よりは一人くらい煮魚の方が飽きもこずに良いだろう。
それに、いつまでも自分の現状を受け入れられずに「イタイ大人」になるよりは今の自分にあった「カワイイ」を見つけた方がずっと楽だし、楽しいような気がする。
私の「元気」なキャラクターには「可愛く盛った顔」よりも「変顔」くらいの方がちょうどよかった。皮肉にも実際に「変顔」の方がなぜかいい感じに「盛れている」ことがあるのだ。それに、どういうわけか吹っ切れはじめて「店舗ブログ」を書き始めたら

「森ちゃんのブログ面白いよね」

「ホント、店舗で楽しそうにやっているよね」

という言葉までもらえるようになった。待ち望んでいた「カワイイ」ではないけれど「面白い」や「楽しそう」は今の私にとっては「カワイイ」よりもずっとずっと嬉しい言葉だ。調子付いて、最近では「どうしたら面白い写真が撮れるんだろう」とか「どうしたら楽しい文章になるんだろう」とか、本来の「お店の雰囲気」や「旬」の商品の紹介を完全無視した内容のブログも書いている。最近だと、私が個人的に「オススメなプリン」を紹介するまでになってしまった。けれど見てくれている人はいるようで、じわじわと閲覧のランキングが上がっている。そのランキングが上がっていくのを見ながら、「次はどんな面白い内容にしよう」とニヤニヤしながら鏡の前で「変顔」の良いアングルを研究しているのだった。

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