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プレゼントを喜ばなくなった年齢の親には「おもしろツアー」がおすすめ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Minami(ライティングゼミ・平日コース)
 
「ねぇ、お母さん、お誕生日プレゼントは何がほしい?」
「何もいらないから、顔だけ見せにきてね」
 
5年前、65歳の母への誕生日プレゼントに何を贈るか悩んでいた。
何を贈っても喜ばない年齢になっている、と感じた。モノは溢れるばかりにあるからいらないと言う。母へのプレゼントを思い出してみると、小学生の頃は、肩もみ券やお手伝い券、中学生になるとエプロンやお花など自分のお小遣いの範囲で買えるもの、大人になってからは洋服や靴などプレゼントしていた。60歳を超えたあたりから母は、家の中に溢れかえっているモノを整理したいと思い始め、「モノはいらない」と言うようになった。
 
さてはて困ったのは私だ。
母の言葉通り「会いに来たよ」と言っても、ご飯を食べて笑い合う日常で、それはそれで素晴らしいことだが、1年に1回しかない誕生日プレゼントではないような気がした。
 
「ほしいものは何もない」に悩み、考え抜いて思いついたアイデアは、母が好きな歌手のコンサートに一緒に行くことだった。前列のよく見える席を狙えるようチケットを取った。案の定、歌手が良く見え、歌いながら会場を練り歩いたとき握手をしてもらえる近さで、母は喜んだ。
 
この喜んでもらえたことがきっかけになり、母の誕生日には「体験」を贈っている。
毎年恒例になっている「おもしろツアー」の始まりだ。
 
少し変わった体験ができる「おもしろツアー」を企画し、旅のしおりを作り、1泊から2泊かけて母と一緒に過ごす。はとバスのベーシック観光から、仕事の出張と重ねて一緒に行く九州旅行、父との思い出の地を巡る旅、浅草の大衆演劇を観るツアーを企画してきた。
 
一番喜んでくれたのは、「変身ツアー」だった。シニアの女性をターゲットにし、きれいにヘアメイクをして素敵なドレスを身にまとい、写真撮影するというものだ。ドレスの他に、宝塚風や韓国のチョゴリ、オードリーヘップバーンの「マイフェアレディ」の衣装など完璧な変身するメニューも用意されている。
 
サンプル写真がアルバムになっているが、その変身ぶりに度肝を抜かれる。
「えっつ、この人が75歳、30歳前後にしか見えないんだけど」というぐらい変身している。変身前と変身後の写真サンプルは、奇跡の1枚のオンパレードだ。「光の魔法」で、しみもしわもたるみも全部飛ばしてしまう。これが変身写真と言われる所以だろう。
 
母のテンションがあがっていくのがよくわかった。私たち母娘は、サンプル写真の中から「ドレッシー」のドレス風イメージを伝え、ヘアメイクに取りかかってもらうことにした。
 
と、その時だ。
母が「オードリーヘップバーンになりたい」とヘアメイクさんにお願いしているのが聞こえてきた。ちょっと離れた席に座っていた私は驚き、「えっつ、お母さん、ヘップバーンってマイフェアレディの大きな白い帽子を斜めかぶりにするやつだよ」と確認すると、「そうそう、ヘップバーンになりたい」と意志が固い。
 
こうしてそれぞれの変身がスタートした。私のドレッシースタイルはまるでフルート奏者のプロフィール写真のような仕上がりになったが、母は、文字通り変身していた。大きな白い羽根がついた帽子を斜めにかぶり、白いドレスで登場したヘップバーンは輝いていた。
 
「すごいじゃない、お母さん」と言葉をかける私に、
「本物のオードリーヘップバーンみたいでしょ」と自慢げな母。
 
母は自分の変化に驚き、ハイテンションになっていた。
撮影が始まり、乗せ上手なカメラさんに「あっつ、その今の表情いいですね」「おっつ、すごいいい」と言われ、素人でもわかるほど、少女のように頬を赤らめ、瞳には星がキラキラ入っていた。撮影が終わり出来上がった写真はパソコンに保管され、自分で選ぶ仕組みになっている。100枚近くある写真の中から「これにする」ととっておきの1枚を母は選んだ。
 
母の幼いころの写真を見たことがある。
まるで「火垂るの墓」の節子のようだ。おかっぱ頭でだぶだぶの洋服を着て、金たらいを頭からかぶっていた。衝撃的でもあり、まさに戦後の子供だった。食べることさえ困窮する幼少期を過ごしていたあの頃の願いは「お腹いっぱいご飯を食べる」ことだったそうだ。平和な時代に生まれた女の子が小さい頃に夢見る「お姫様になりたい」なんていう夢とは程遠いが、時を経て母は、ヘップバーンになった。
 
「金だらいの節子から、大きな白い帽子のヘップバーン」まで、かぶりものを変えた母世代のふり幅は大きい。戦後は豊かさを求め「モノ」に執着することで士気が上がり、高度成長期からバブル期を通し満たされることを知り、今、モノを手放したいと断捨離を始めている。「時代の価値観の変遷」を体感している。
 
「モノはいらない」の意味は、物理的にモノが増えて困ることもあるが、元気な顔を見せてくれれば何より嬉しいという親心を表した額面どおりの言葉なのだろう。私は「体験」を贈ることを通し、毎年、母と過ごす幸せな機会をもらっている。今年の「おもしろツアー」の舞台は「沖縄」だ。母よ、今年も楽しみにしていてほしい。
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2018-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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