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メディアグランプリ

息子になってくれたジィジ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:日向和子(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「お風呂、はいるよー」と元気にかけ声をかけながら風呂場に向かうジィジ(義父)は88歳。同居は26年目になる。10年前に病気でバァバ(義母)が他界して、ジィジとどう付き合うか? 不安と責任でつぶされそうだっが、今は要約、様になってきた。
 
バァバが居なくなって、心配だったのが、がっかりして落ち込み急に元気がなくなって認知症とか、ボケとかになってしまうのではないだろうか? という不安だった。ジィジは特に趣味もなく、地域の人との付き合いも好きではなかった。それに同居してる嫁の私はジィジの細かいところをわかってなかった。わかっているのは、頑固じじいのところだけ。話しをもちかけても、直ぐ終わってしまってた。つまりジィジの意見が絶対だったのだ。当然おもしろくないので、自然と距離をおいていた。
ある日、大工だったジィジが家のドアを直そうとして脚立から落ちて胸を強打して、うずくまって痛がっていたから直ぐ救急車を呼んで一緒に病院へ行った。不安げなジィジに「大丈夫だからね」と根拠もないのに元気づけたら、うなずいた。なんか! 素直になっていた。ジィジとの距離が一挙に近くなった瞬間だった。男気が強くて自分の弱さを見せない人だったのに……。
医者から、ろっ骨にひびが入っていて高齢で夜中に急変するといけないから一泊入院をすすめられた。ジィジは私の方を向いて嫌そうな顔をした。なんだか?
息子に思えるようなしぐさが、駄々をこねているようで可愛く思えた。が、しかし医者の言うことを聞かなきゃ駄目だと説得して、翌日は早々に迎えに来る約束をして入院してもらったのだ。
翌朝、病院へ迎えに行ったら、ベッドに座ってそわそわしていた。一瞬ボケたのか? と心配になった。「ジィジ、家に帰るよ」の一言が嬉しかったのか、首を長くして待っていた様子がとても可愛く見えた。話しかけると、夜は病室がうるさくて眠れなかったとか、おしっこが心配だったとか、愚痴が止まらなかったから、しばらく落ち着くまで話しを聞いた。そしたら心配と不満で大変な思いを吐き出すかのよに話したのが良かったのか、ほっとした様子になったから家へ連れて帰った。まるで子供みたいだった。この怪我が切っ掛けで子供みたいなジィジを見て、この際、思い切って息子のような感覚で接してみたら上手く付き合えるのではないか? と考えたのだ。
嫁の立場でいたせいか、ジィジを立てないといけない、言うことをきかないといけない(自分の意見は言えない)とか、とにかく責任のことだけを考えていた。そんな思い込みが、知らないうちに自分をがんじがらめにしていたのだ。息子感覚だったら何でも話せるような気がした。っていうか、もうこれしかない! と思ったのだ。これから先、どのくらいジィジと付き合うのか? バァバの時の介護は「嫁だから」という思いが強くて、心が折れて壊れてしまった。
いろんな過去の出来事が複雑に頭をよぎったが、「もう~これでいい」とポジティブに腹をくくった。
そりゃ~、人生の大先輩で仕事も成功してプライドの高い人で大変失礼だと思ったが、そんなことを、いちいち考えていたら身が持たないと思ったからだ。現に息子二人の子育ても経験してるし、何とかなる……。
勢いで決心したら、気持ちが楽になった。そしたらジィジのことに関心が行くようになった。起床時間、食べ物の好き嫌い、体調、できる事、できない事etcが、日々の生活の中でわかるようになったのだ。まるで小学生を見ているかのようだった。逆にジィジに関心をもたなかったら、心が通わない寒々とした生活を送ってたかもしれない。
そんな思いでジィジを見ていたせいか? なんとジィジから嬉しい提案をしてきたのだ。自分の部屋の掃除、洗濯(自分の物)、ゴミ捨て、お米を研いで炊く、だった。高齢だから大変かな? と思ったけど、せっかくなので様子を見ていたら、完璧にこなしてくれた。凄い! と思った。家族の一員として頑張っているジィジが愛おしくなってきた。手伝ってくれたことに「ありがとう」を素直にに言えるようになった私にも気がついた。なんせ頑固じじいだったから、気持ちの上で反発して、私も素直ではなかったのだ。
 
ジィジとの付き合いを息子感覚で過ごすようになってから10年が過ぎた。良かったのはお互いの気持ちを尊重して大事に思えるよになったことだ。子供のように甘えたことを言ったりはしないが。
「病院へ行ってくるよー」「帰ったよー」
「公園へ散歩に行ってくるよー」「帰ったよー」
「セブン(セブンイレブン)に買い物行ってくるよー」「帰ったよー」
「弟と出掛けてくるよー」「帰ったよー」
と、必ず行動を起こす時は声をかけてくれる。
もしかすると、ジィジは息子感覚でいたほうが上手く行くと私より先に考えてくれてたかもしれない。プライドが高かったジィジも息子になると決心したのかなー? 聞いてみないとわからないが。多分、聞くことはないと思う。これから先も。息子を演じてくれているジィジに感謝だなー。ジィジが元気で頭がクリアなおかげで、今のところ楽チンだ!
 
あっ! 「お風呂、でたよー」と元気なジィジの声が……。
 
 
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2018-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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