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私は、いつまで経っても私だった。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山田あゆみ(ライティング・ゼミ特講)

 
 
思い返してみると、学生の頃の私は、いつもきっかけを探していた。
 
例えば、芸能人のインタビューで、私がいつも興味があったのは、その人がどうして芸能界に入ったのか、そのきっかけだった。
 
「友達が、オーディションを受けるのについて行っただけなんですよ」
「全然、興味はなかったんですけど、たまたま街角でスカウトされて」
 
そんな答えを聞く度に、羨ましくてたまらなかった。
 
「それを機に生活は、一変し、新しい自分になったんです」
 
私にも、きっと人生も自分も変えてしまうような、そんな「電撃的なきっかけ」が待ち構えているに違いない、といつしか思うようになっていた。
 
そしてそんな「運命的なきっかけ」に憧れながら生きてきた。
 
だから、例えば劇団四季を初めて観る事になった時、ものすごく身構えた。
もしかしたら、この公演を観て、鳥肌が立って、劇団四季に入りたいと思ってしまうかもしれない。これが、まさに運命的なきっかけになるかもしれない。
そうなったら、もう後戻りは出来ないぞ。
本気で、そう構えていた。
 
映画を観る時も、ドラマを観る時も、例えばそれが弁護士が活躍するドラマだったら、これを観て、雷に打たれたような衝撃に打ちのめされて、法律家の道を志すことになるかもしれないと、どこかで期待しながら見ていた。
ライブを観る時も、新しい分野の本を読む時も、そんな運命的な天からの啓示みたいなものを、常々待ち望んでいた。
 
でも、一向にそんな運命を変えてしまうようなきっかけに出会う事はなかった。
 
劇団四季のライオンキングには、心から感動した。
劇団の方々の表現力に、とてつもなく魅了された。
でも、だからといって、演じる側を目指したいとは、特に思わなかった。
 
とても、面白い弁護士のドラマにはまった。でも、弁護士はかっこいい! とは思っても、だから私も法学部は行って、弁護士になって、人を救おうと心に決める事もなかった。
 
心が震えるようなライブを目の前で目撃したからと言って、歌手になろうとは全く思わなかったし、新聞社のバイトをしたからといって、報道記者になる道に進もうとも思わなかった。
 
段々と、人生に失望していった。
どうして、有名人がテレビで、嬉々として語るような「電撃的な瞬間」が私には訪れないのだろう。
こんなにいつも準備万端にして、待ち構えているのに。
何でだろう。
結局いつまで経っても、私は私であって、一夜にして運命を決めてしまうような出来事には出会わないまま、高校を選び、大学へ行き、大学院に進学し、就職した。
そして現在に至っている。
 
ところで、そんな私にとっての最近経験した大きな変化の1つは、親しい友人の何人かが出産したことだ。
 
あれだけ、くだらない話を延々としたり、冗談を言い合ったり、同じ本を読んで感想を共有したり、将来の悩みを語り合ったりしてきた友人たちが母親になる。
 
それは、とっても喜ばしくて嬉しいニュースだったけれど、同時に何だか少し怖いお知らせでもあった。
 
母親になること、それは私がいつも憧れていた「運命的なきっかけ」そのものだった。
周りの母である先輩方は、口々に声を揃えて、そして少し誇らしそうに言う。
「子どもがいるのといないのでは、全く何もかもが変わるからね」
そして、そんな電撃的なきっかけは、その人までをも変えてしまうに違いなかった。
 
大好きな友人たちが、変わってしまうのではないか。
自己中心的にもほどがあるかもしれないが、それが怖かった。
 
確かに、彼女たちの生活は変わってしまった。
私達は、昔のように一日中遊ぶことも、夜中にコーヒーを飲みながら語り合うことも、出来なくなった。
 
でも、当たり前なのだろうけど、友達は、みんな大好きな友達のままだった。
守るものが出来て、強くなったような感じもする。なんだか、輝いて見えもする。
でも、母親という何か全く別の人間になるわけではなかった。
友人は、紛れもなく友人だった。
 
そして、気が付いた。
これまで私が夢に見ていたような「何もかも、人格さえも変わってしまうような運命的なきっかけ」なんてないのだということに。
 
例えば、母親になって全てが変わったという人は、自分が母親になる道を選んだのだ。極端かもしれないけれど、子育てをするという道を選ばないことだって出来なくもない。
覚悟を持って母になり、子どもを育てることを自分で選び、生活を変えていくことを選択したのだ。
 
スカウトされた人も、その道を生きていくことを最終的に選んだのは自分なのだ。それに伴ってきっと、辛いことだって大変なことだってあったはずだ。それでもそうやって生きていく道を選んだのだ。
みんな、覚悟をして、選んで何かになっていったのであり、何かになっていっているのである。
 
私は、怖がりで、臆病で、自分で何かを選びたくなかった。覚悟もしたくなかった。
自分でない何かに、いつもなりたいと思っていた。そして、結局、自分にしかなれずにいた。
きっかけなんて幻想だったんだ。
 
そう気が付いて、自分のこれまで生きて来た道を振り返ってみると、そこには嫌だと言いつつも、怖がりつつも、選んできたものたちが、きちんと積みあがっていた。
その選択達は、紛れもなく私の「今」をつくっている。そして私をつくっている。
 
私はちゃんとこれまで自分で選んで、覚悟もして、生きてこれていた。
何も間違ってなんかいなかった。
何だか少しだけ自分の事が誇らしく思えた。

 
 
***

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2018-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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