メディアグランプリ

81歳のジュリエット


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中西 かなえ(ライティング・ゼミ特講)

 
 
「もしもし、すみません。今日、体調が悪いため会社を休みます」
「え? この年末の忙しい時期に?」
「コン、コン。明日には何とか復活しますので」
「ゴメンごめん。風邪で休んだことが無いからね、君は。よほど無理をしていたんだな」
「私の不注意でご迷惑をおかけし、申し訳ございません。コン、コン・・・・・・」
「いやいや。今確認したけど、明日のプレゼンの準備も終わっているようだし、ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます。明日は、必ず出社します」
 
最悪だ。
この時期に倒れるなんて。
健康だけが取り柄なのに、寝込むことになるとは。
いや、実は本当に仕事で無理をしていたのかな?
 
クリスマスが近い12月。
私は失恋をした。
いや、勝手に片思いをして勝手に敗れた。
ただそれだけだ。
 
この時期になると、華やかなクリスマスソングに混じって、失恋を描いた歌も多く流れる。
今さらながら、その歌詞に耳を傾けてしまう。
ラジオを聴きながら、体温計を挟んでみる。
ピピッ。
熱は・・・・・・、最悪。
結構あるじゃん。
寝るのが一番の休養だが、眼が冴えて眠れない。
しばし、ラジオから流れる楽曲を聴きながら天井を見てみる。
平日のこの時間に、自分の部屋の風景を見るなんて不思議である。
 
「続いてのコーナーは、リスナーからのお悩み相談! 今日は、60年越しの恋愛について」
 
・・・・・・60年越しの恋愛?
ラジオからの声に思わず反応してしまった。
今の私にとって「恋」「愛」という言葉は過剰反応ワードだ。
 
「21歳の時に好きだった人が、今でも忘れられません。今年、夫が亡くなり、最近ではその人のことばかり思い出してしまいます」
 
60年越しということは、81歳の女性の悩みなのか?
そんな歳になっても、昔好きだった人のことを思い出すものなのだろうか?
思わずラジオの方を向いてしまった。
 
「なぜ、別れることになったのですか?」
「親は夫との結婚を望んでいたため、別れるしかなかったのです。当時は、恋愛なんてものが許されることは少なかったですからねぇ。それに、私の片思いでしたから」
「今でも思い出すとなると、よほどお好きだったのでは?」
「そうですね。実は、これまでも何回も思い出すことはあったのですよ。ただ、今ほど長い時間思い出すことは無くてねぇ」
「亡くなった旦那様はお好きでしたか?」
「良い人でしたけれども・・・・・・好きとは、何か違うと思いますねぇ」
 
いかにも、おばあちゃんという声とラジオDJとの掛け合いが始まった。
時代というものが恋愛を邪魔したのか、ただ、片思いが実らなかっただけなのか。
片思いという言葉にも過剰に反応している自分がいる。
 
「先ほど、片思いとおっしゃいましたが、具体的にお聞かせ願いますか?」
「あの人は、お客さんでした。実家が書店を営んでおりましてねぇ。近くの大学に通われていて、よく来店されていたんですよ。私は、店を手伝っておりましたので、よくお会いしていまして・・・・・・たまに、一緒に出かけたりしていたんです」
「では、あなたのご両親はその方をご存知だった訳ですか?」
「ええ。知っていました。だからこそ、夫とお見合いをさせられたのです」
「どうして?」
「あの人は、どこかの御曹司らしく身分が合わないだろうからと」
 
おや?
どこぞのドラマ並みの展開ではないか。
そんなこと、本当にあるんだろうか?
 
「ご両親の配慮からだったと?」
「ええ。それに、あの方もお見合いで素敵な奥様を迎えられることになっていました。想いを伝えるなんてこと、怖くてできませんでしたよ」
 
うわ。
その映像が頭に浮かぶ。
・・・・・・ちょっと違うけれど。
私の場合もそうだ。
何も行動せず何も伝えず、彼女がいる事実を知って、そしてこの様だ。
 
「では片思いで終わってしまった相手の方を、今でも想われているのですね。お会いしたいですか?」
「そうですねぇ。いつ再会しても良いようにという生き方はしてきましたから」
「どのような?」
「あの方の奥様に、負けないようにと努力してきました」
 
・・・・・・負けないような努力?
どんな生き方をしてきたのだろう。
その言葉が、心に沁みてきた。
 
「どのような努力を?」
「実は私、歳のわりにはきれいねっていわれるんですよ。女性は、いつまでもきれいでないといけませんからねぇ。毎月3万円の化粧水を使っているんです」
 
ん?
月3万円も化粧水だけに費やしているだと?
それって、生き方か?
 
「ほう。いつまでもきれいでいたいという姿勢は素敵ですね」
「ふふふ。だから、逆に感謝しているんですよ。別れたことに関して」
「なるほど。逆境があなたをきれいにし続けているんですね」
「そうなんです。だから、今も元気で女性を楽しんでいるんですよねぇ」
 
女性は、いくつになっても女性なのだ。
強かに生きることができるのが女性なのだ。
女性は、いつまでもヒロインであり続けることができるのだ。
今回のことをバネにできるように、この女性のように生きてみたいと思った。
化粧品に費やす金額は、別として。

 
 
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2018-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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