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プロフェッショナル・ゼミ

お金は物々交換から生まれたのではなかった!《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中野 篤史(ライティング・ゼミ プロフェッショナルコース)

「コインチェック? ビットコイン? ブロックチェーン? NEM?」。最近、横文字のニュースが多くて、ついていけません。IT企業に勤めているから詳しいのかといえば、そんなことはありません。皆さまはいかがでしょうか? 私は、なんだか世の中に取り残されているような気がして、少しストレスを感じ始めています。この頃は、これらについて、ちゃんと知っておかなければいけないような使命感すら感じてきています。なぜかというと、年末にうちの会社から社員へビットコインが1万円分支給されました。ご褒美的な感じです。「いやいや、ちょっと待っておくんなさい。そこは現金で支給するのが人情ってもんじゃ……」と、内心不満でいっぱいでした。いまだに使い方がわかりません。これを読んでいるあなたは、この辺のところをご存知でしょうか? 私のまわりの人に聞いても、上手く説明できる人がいません。つーわけで、自分で調べてみることにしました。

まずは「コインチェック」というやつからです。これは自信があります。なぜなら昔トラベラーズチェックを、海外旅行で使ったことがありますから。だからコインチェックも、そのような類のはずに違いありません。なかなかいい線をついているはずです。早速、ネット検索しました。すると、いきなり予測がハズレます。なんとコインチェックとは会社の名前でした。みなさんご存知でしたでしょうか? どうやら、この会社が不祥事を起こして、ニュースになっている模様です。 

さらに、このコインチャック、いやコインチェックの調査を進めていくと、あることがわかってきました。まあ、調査と言っても、スマホで社名を検索しただけですが……。コインチェックのHPへやってくると、一番目立つところに、こう書いてあります。「日本で最大のビットコイン取引所。簡単に、そして安心してビットコインをお試しすることができます」と。どうやら突っ込みどころ満載のHPです。コインチェックという会社は、ビットコインを扱う取引所らしい。わたしの認識がまちがっていなければ外貨両替所のような役割をする場所だと想定しています。

なんとなくコインチェックのことが、わかってきたところで、次に「ビットコイン」の調査開始です。Wikiには次のように書いてありますが、ある意味わかりにく過ぎて自分の日本語理解能力を疑ってしまうほどです。

「ビットコイン(英bitcoin)は、公共トランザクションログを利用しているオープンソースプロトコルに基づくPear to Pear型の決済網および暗号通貨である」云々。

「きゃー、やめてー!」と叫びたいくらいです。正直、私には途中の「利用している」と、最後の「である」くらいしか理解できませんでした。もしライティング・ゼミでこんな書き方をしたら、川代さんから厳しいコメントを頂いてしまうに違いありません。

さてさて、ビットコインとは仮想通貨と同じ意味なのでしょうか? ふと、私の記憶の片隅に埋もれた、ある雑誌のことが甦ってきました。

「あの雑誌に載っているかもしれない!」と、自室の書棚を探し始めます。
「えーと、下の段にあったはずだけど……。あった!」。ありました、2016年11月増刊の「WIRED」です。『ブロックチェーンは世界を変える』という特集が組まれています。早速、様々な記事を読んでみると、なんとなくつかめてきました。いい感じです。どうやら「ビットコイン」とは、仮想通貨の一つのようです。だから、現実世界の「$」に相当するのが、「ビットコイン」という通貨の単位です(おそらく)。仮想通貨には他にも、「カルダノ」とか「カラードコイン」とか、「NEM」などの、複数の通貨が存在しているようです。その中でも「ビットコイン」は、流通量が多いため「ドル」のような基軸通貨のような役割をしていると理解しました。

そうすると、今回ニュースになっていることをまとめると、こんなところでしょうか。まず「コインチェック」という名の、仮想通貨を取引できる取引所がありました。このオンライン取引所では「ビットコイン」やら「NEM」などという仮想通貨を多数扱っています。するとそこへ、泥棒(ハッカー)が、不正に忍び込んで、そこにあった「NEM」という仮想通貨を480億円分ごっそり盗み出してしまったということのようです。

さて、ニュースの概要は、大体つかめたのでいいのですが……。
まだ気になるのが「ブロックチェーン」のことです。これは仮想通貨の一種なのでしょうか? それとも取引所? また『WIRED』をパラパラとめくってみます。

「お、なるほど」。
ブロックチェーンとは、お金のことではなく技術のことらしい。そして、雑誌のなかで次のように書かれています。

ブロックチェーンは、
「お金のみならず、株式や債権、音楽、アート、選挙権などの“資産”を、オンライン上で自在に動かすことを可能にし、これまでそのやり取りを仲立ちしていた中央機関をすっ飛ばすことが出来るこの技術は、現状の社会、政治、経済、文化の秩序や編成を根底から覆すといわれる」(引用)

「おおー、またしてもわかりにくい」
どうやら、このブロックチェーンを日本語に置き換えると「分散型台帳」となるらしいです。でも日本語になってもイメージがわきにくいですが。しかたがないから、雑誌を読み込むこと1時間。私なりに解釈できたところで、こんなイメージが出来上がりました。

まず、今の一般的な世の中と同じやり方を、家族という単位に当てはめてみます。
我が家では、家族通貨「ファミリ」という“紙幣”が流通しているとします。総額10万ファミリあり、妻が銀行役になっています。家族間のお小遣いやお年玉はこのファミリでやり取りします。ある休日、長女が家の掃除をしてくれたので、私から長女へ1000ファミリのお駄賃をあげることにしました。しかし私には紙幣の手持ちがなかったので妻から1000ファミリをおろし、「はい、お駄賃」と言って長女へ渡します。この時、妻が持っているファミリ通貨手帳の私の残額が、30,000から29,000ファミリへ減ったことが記録されます。ファミリ通貨手帳は、私が誤魔化して書き換えないよう、妻が厳重に管理しています。つまり、妻が銀行という中央機関の役割を果たしています。

これを、ブロックチェーン(分散型台帳)という技術のやり方を使うとこうなります。
我が家では、家族通貨「ファミリ」という“紙幣“が流通しているとします。そして、家族4人全員がファミリ通貨手帳を持ちます(この時妻は銀行役ではありません)。もし、家族間でファミリの受け渡しが発生した場合、同時に全員の手帳へ、そのやり取り記録をするのです。さらに紙幣自体にも固有の印がつけられているので、誰が今何の印がついた1000ファミリ紙幣をもっているのかもわかります。

具体的には、ある休日、長女が家の掃除をしてくれたので、私から長女へ1000ファミリのお駄賃をあげることとなりました。この時、私から長女へ「父」という印のついた1000ファミリが移動します。それを家族4人の手帳へ同時に記録として残すのです。そうなんです。ブロックチェーンの仕組みの場合、複数の人(機関)で、記録を持ち合います。そうすると、後から私が自分の手帳を書き換えて、「俺は50,000ファミリ持っているぞ!」と誤魔化そうとしても、妻や長女、次女の手帳をみれば、私が改ざんしたことがバレバレなのです。しかも、紙幣には印もついているので、もし私が1000ファミリを無くしたとしても、どの紙幣がなくなったのかわかる仕組みになっています。だから、ブロックチェーン(分散型台帳)だと、改ざんをしようとしても、人のお金を盗んで使おうとしても、バレてしまうので、現実的に不正を働くことが不可能に近いということなのです。つーわけで、ブロックチェーンとは、お金のことではなく情報の記録の方法のことでした。

自分でいうのもなんですが、なんとなく賢くなった気がしてきました。さて、この巷で騒がれているビットコインですが、お金と呼んでいいものなのでしょうか? それには、まずお金とは一体何なのかを、先に知る必要がありますよね。そこでお金の歴史を調べてみました。(ネット検索ではありませんよ……。)

突然ですがクイズです。お金ってどのような経緯で生まれたのか知っていますか? 通俗的には、まず物々交換していた時代が先にあって、物々交換だと効率が悪いから、代替手段としてお金が生まれたと考えられていますが事実はどうなのでしょう?

その答えは、時は1800年代のヤップ島に遡ります。ヤップ島ってどこ? それはフィリピンから西へ1280キロのところにあり、ちょうどパラオとグアムの中間ほどの場所に位置します。

ヤップ島で取引されていた商品は、魚、椰子の実、そしてぜいたく品のナマコの3つのみです。農業をする必要は無く、果物や、着るものまで島の自然からまかなうことが出来ました。だから物々交換さえ必要なかったともいえます。

しかし、驚いたことにこの島に訪れたスペイン人は、この島で高度なマネーシステムを目の当たりにするのです。なぜならヤップ島のお金は非常に特殊でした。そのお金は「フェイ」と呼ばれる石貨で、その大きさは、大きなもので4メートルほどもありました。そうすると、こんな大きな貨幣が物々交換の代わりに発達したのであれば、理屈が合わないのです。大人数人でも運ぶのが大変なのですから。当然この貨幣を盗もうとする人もいなかったようですし、さらには実際の取引で使われることも少なかったようです。

ケンブリッジ大学の人類学者キャロライン・ハンフリーは、次のように言っています。
「物々交換から貨幣が生まれたという事例はもちろんのこと、純粋で単純な物々交換経済の事例さえどこにも記されていない。手に入れることができる全ての民族史を見る限り、そうしたものはこれまでに一つもない」と。

ヤップ島のフェイが物々交換の手段でないなら、一体何がお金の役割をはたしていたのか? というところです。

ヤップ島では、毎日魚や、椰子の実、ナマコなどが物々交換され、その取引から発生した貸し借りを帳簿に記録していました。物々交換の貸し借りは、互いに相殺しあい、差額は繰り越されます。もし取引の相手が望めば、その時に差額をフェイで交換してチャラにすることも出来ました。実際フェイでチャラにすることは殆ど無く、繰り越していたようです。

この島では、自分がある石貨を所有していたとすると、相手もそれを信用します。そして、取引により、自分の石貨の権利が相手に移ったとする。この時に、相手も自分もその権利が移ったことを認めていれば、わざわざ自分の家の庭にある石貨を、相手の家のにわまで移動させなくてもよくなります。さらに、自分の所有を示すために、印をつけるようなこともしませんでした。つまり、この島でのお金は石貨そのものではなく、“信用”という取引・清算システムなのです。

そして、これこそが、クイズの答えだという説が強力になっているようです。それは、物々交換から、お金がうまれ貨幣経済へ移行し、信用取引へ発展したのではなく、もともと信用取引システムという“お金”があり、貨幣は後づけに過ぎないのだと。

ここでビットコインは“お金”と呼んでいいのか? という問いまで戻ると、現時点ではビットコイン自体の価値が乱高下を繰り返していて危うさが否めないこと。そもそもの信用が足りていないが故に、現金化がしづらかったり、実際の物品の購入を出来るところが少なかったりすることから判断すると、まだまだお金と呼ぶには早いきがしてしまうのでした。
(参考文献:『21世紀の貨幣論』『WIRED』『お金2.0』)

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