プロフェッショナル・ゼミ

ガッキー先輩の3つのオシャレ名言《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:あさみ(プロフェッショナル・ゼミ)

「私、やっぱり、一生ダサいままで生きていくしかないんですかねえ」
パスタ屋でランチをしながら、私はため息をついた。

正面に座っている先輩がかぶっているベレー帽はとてもおしゃれで、私のニット帽とは根本的に何かが違う。私だっておしゃれのつもりで帽子を選んだのに、Gパンにセーターの私がかぶったニット帽はただの防寒具にしか見えない。先輩だってGパンにネルシャツだ。着ているものはそんなに変わらないはずなのに。

おしゃれになるなんて最初から無理だったのだ。私がこの姿でこの世に生まれてきた限り。

私は、かれこれ14年、おしゃれになりたいと思い続けてきた。
いわゆる「大学デビュー」を目指し失敗した18歳のときから30歳を超えた今も、ずっと。
そして、14年かけて、ゆっくりそれを諦めてきた。

どんなにおしゃれな服でも
私が着れば「ややダサ」になってしまう。
なぜか。

雑誌を研究し、流行りのコーディネートと同じものを着ても。
おしゃれな友達の真似をしても。
ショップで店員さんが着ていていいなあと思ったものでも。

同じアイテムを着ているのに! 
それなりに高い服だって着ているのに! 
おしゃれな街、代官山や自由が丘、二子玉川、南新宿、ときには裏原宿なんかで買い物をしているのに!

鏡をみるたびにがっかりすることを1万回くらいくり返し、おしゃれな人と自分を1万回くらい見比べてようやく気付いたのは、もう、これはセンスとかの問題じゃないってこと。

私のスタイルの問題だ。
手足が短いうえにぽっちゃりの、私の問題。

身長153センチ。小学生の頃の背の順ではたいてい前から3番目くらい。だけどなぜか座高だと後ろから3番目(察してください)。
体重は超健康的体重(女子はだれも健康体重なんて目指していない)。ちびのくせに、しっかり50キロの大台に乗っていることをここで告白しよう。

パンツをはこうにも身長にあわせてSサイズの服だとおしりや太ももまわりがピチピチになる。Mサイズだと裾が長い。丈調整すればいいじゃんって単純な話じゃない。かなりの長さをちょん切らないとはける丈にはならないので、わたしの足にあわせると、パンツは原型とはまるで違うへんてこな形になったりするのだ。
かといってスカートも、ロング丈はちびには似合わないし、膝丈ではO脚が目立つ。短足なだけじゃなくO脚なのだ。神様はいない。
20代の頃は膝上のフレアスカートなんかでお茶を濁してはいたけれど、30を過ぎてからは恥ずかしくてはけなくなった。
結果、ギリギリ似合うかなという7セットの服を一週間でちょうど着まわしている。アニメのキャラクター並みにいつも同じ服の人、それが私。

結局は、スタイルの良い人は何を着てもかわいいしおしゃれに見えるし、ブサイクぽっちゃり短足では何を着てもださくなる。

この事実を認めてしまうと、夢も希望も無くなってしまう。でも、もう認めるしかない。14年かけても無理だったんだもん。私は一生ちょいダサで生きていくしかないのだ。

パスタをフォークでくるくるしていた先輩は
「確かにたまちゃん、いつも同じ服だもんねえ」
とまじまじと私を見てつぶやく。
“たまちゃんは別にダサクないよ”と否定してはくれなかった。
それどころか
「それに、そういう形のセーターはもう流行ってないもんねえ」とさらに付け加える。

私は会社では“たまちゃん”と言われている。本名とはまったく関係ない。「たまごが好きだから」という理由で。あだ名までちょいダサである。
ちなみに先輩のことはガッキー先輩と呼んでいる。本名が新垣だから。正直言ってガッキー先輩は新垣結衣みたいにとびっきりかわいくはないしモデルさんのようなスタイルでもない一般人だけれど、ナチュラルメイクで、さらりとおしゃれで、おしゃれに命かけてます! って感じじゃないのにセンスが溢れていて、私の憧れだ。

「よし、じゃあ、今度の休みにたまちゃん家に行って、クローゼットの中を見てあげる。それ以外の服も持ってるんでしょ? ある服でコーディネートをしてみて、足りない服を一緒に買いにいこう」

一生ダサく生きていく決意をした私に同情したのか、ガッキー先輩は優しかった。

次の日曜日、我が家に来たガッキー先輩は、クローゼットの前で絶句した。
「た、たまちゃん、私の5倍くらい服持ってたんだね」
7着の服しか着ないくせに、私は衣装持ちだ。着ていない服がウォークインクローゼットの中に納まりきらず、ベッドルームに増設した棚からもはみ出している。コートだっていつも着ているのは同じダウンだけれど、実は様々8着くらいは持っている。
夏服はベッドの下の収納に別にしまってあるので服冬だけでこのありさま。

大学時代から服はほとんど捨てていない。
毎シーズンごとに、おしゃれになりたくてあれでもないこれでもないと試行錯誤して服を買い、結局着こなせないままクローゼットにつっこむので服は増える一方だ。20代の頃に買った服がきれいなまま畳まれている。どれも気に入って買ったものだから捨てられない。いつか着るかもしれないし。

「よし、捨てるよ!」と先輩は小さな声で言ってから、服を1枚ずつ広げて一瞥し、ポンポンとゴミ袋に入れ始めた。私の了承も得ずに。

「ガッキー先輩待って! その服は色がかわいいと思って!」
「あ! そっちのブラウスは花柄がかわいいじゃないですか! 捨てないで~~~」
慌てて止めに入る私に、先輩は、ひと呼吸おいて口を開く。

「たまちゃん、今から大事なことを言うね」

ゴクリ。

「服は、色や柄で選ばないの。シルエットで選ぶの」

し、しるえっと!?
色と柄でしか服を選んでこなかった私は目をぱちくりさせた。気に入った色や柄を見つけると、どんな形の服でも買ってしまう。

「こんなジャストサイズの形はもう今ドキ流行っていないよ」
「このワンピースも胸下切り替えなんて時代を感じるよ」
「この丈のフレアスカートはアラサーにはそろそろ厳しいよ」
「この服はたまちゃんの体型には合わないね」
色や柄はいっさい関係なく、ときどき試着をしながらシルエットだけでジャッジをして、クローゼットの中身は1/3に減った。

そうすると驚くほど服の組み合わせパターンが多くなった。
このパンツにこのシャツ、とかこのスカートにこのニットとか、組み合わせパターンは大学時代からいつも決まっていたので、服を持っているわりに「いつも同じ服の人(しかもやや昔ふう)」となってしまっていた。
だけど本当に使えるシルエットの服だけを残すと、どのトップスとどのボトムスを組み合わせても今っぽくセンスよく見える。先輩は次々と服を組み合わせて写真を撮ってくれた。
服が少ない方がコーディネート数が増えるというのは驚きだった。

「じゃあ、ちょっとこのコーディネートで着てみて」
と、先輩に渡されるがままに、服を着替える。

鏡の前に立っていたのは、確かに昔ふうではなくなったけどやっぱりちょいダサの私。もう1万回もこうやってがっかりしてきたのだ。
「ほら、先輩、やっぱり私垢抜けないよ!」
思わずため口になる。

先輩はにっこりとうなずく。
「たまちゃん、今から大事なことを言うね」

き、きた。名言の予感。

「3つの首は出しなさい」

3つの首とは、首・手首・足首のことらしい。
先輩はカットソーの袖を一折、パンツの裾をロールアップ。少し空いた首元には一連パールの短めのネックレス。

「えっえっ! すごい!」
同じ服なのに見違える!! こんな簡単なことで大変身。

さらにじーっと鏡の中の私を見ていた先輩は、
「たまちゃんの体型なら、カットソーはインしたほうがよさそうだね。ウエストはベルトでマークして……」ともうひと手間。
ウエストインとか、秋葉系になりはしないかという私の心配はよそに、また印象ががらりと変わる。
これっておしゃれな人じゃない!?
インしたらぽっこりの下っ腹やおしりのラインが目立つのかと思いきや、ウエストに目がいくせいか、逆にスタイルはよく見えるのに驚いた。

ひとしきりクローゼットの中での着回しコーディネートと着こなしレッスンが終わったところで、足りないアイテムを整理して買い足しの方針を固める。
「たまちゃんの場合は、圧倒的にボトムスが足りないね。フレアスカートを大量に捨てたから、少しタイトめな大人っぽいスカートを買おう」
もはや私は「はい、先輩」とうなずくしかできない。

二人で、意気揚々と繰り出した二子玉川は、ちょうど年明けのセール中。
安くなっている服に私は大興奮。
かわいい柄や色のものをみつけて値段をチェックして、安くなっていればすぐにでも買いたくなる。30%OFF以上のものは即買い、というのがこれまでのわたしの判断基準だったから。
「たまちゃん! 余計なものは買わないよ!」
と、たしなめられながら、タイトスカートを探す。

あった! 黒のベーシックなかわいいタイトスカート。しかも50%OFFで2,980円!? 即買いでしょ!!!!
今にもレジに持っていきそうな私に向かって先輩が一言。

「たまちゃん、今から大事なことを言うね」

でる! おしゃれ名言!

「どんなに安い物でも、必ず試着をして買うこと」

ええ~と反射的に反論してしまう。
私は試着が嫌いだ。なぜなら、面倒くさいから。いちいち店員さんに声をかけるのも嫌だ。「こいつダサイくせに真剣に悩んでるよ~(笑)」と思われているんじゃないかと、おしゃれな人の前では被害妄想がひどくなる。時間をかけずにササっと買ってしまいたいのだ。

ガッキー先輩の言うことは絶対。今日はそんな私もしぶしぶ試着室へ。
着てみると、すっごくいいと思っていたスカートは思ったよりもパツっとしていて、明らかにおしりのラインを拾っている。
着替えて出てきた私を見て、先輩は「ほらね、試着してよかったでしょ。次いこ」と即バッサリ。
「着てみてわかったけれど、たまちゃんは思ったよりおなかに張りがあるから、タイトなシルエットでもギャザーが入っている方が似合いそうだね」
下っ腹が出ているのを“おなかの張り”と表現してくれてありがとう先輩。それもわたしの悩みなのだ。

こんなにたくさんの服が安くなって買って買ってといっているのに、わき目も降らずにギャザーの入ったタイトスカートをひたすら探し、2着見つけた。

確かに、そのスカートははいた瞬間にしっくりきた。
私は前述したとおりスタイルがまったくよくないので、試着室で「あ! これすっごくいい!」と思えることなんてごく稀だ。それが2着中2着とも「すっごくいい!」となった。ガッキー先輩も「これならいいね」と言ったから間違いない。
持っている形に近いトップスを何着かお店の中で見繕い、全身コーディネートもチェックしてみて、ようやく先輩から「買ってよし」のお許しが出た。

試着は大事だ。着てみないとわからない。
安いからといって、妥協してはいけないのだ。
着てみて本当にぴったりくるアイテムに出会うまでは買わないと決めておくことがおしゃれの大原則だと知った。

セールで2着しか買わなかったなんて私史上はじめてだ。いつもセールのたびに両手いっぱいの服を買ってしまうから。
それなのに満足度はいつものセールの何倍もある。
これまで着たことのないタイトスカートの導入により、私のコーディネートの幅はぐんと広がった。

「服は、色や柄で選ばないの。シルエットで選ぶの」
「3つの首は出しなさい」
「どんなに安い物でも、必ず試着をして買うこと」

ガッキー先輩の3つのおしゃれ名言はどれも難しいことじゃない。
高度なテクも必要ない。

この3つの教えにより、私は、ガッキー先輩のように体からおしゃれの香りが溢れ出るほどではないけれど、少なくとも、一昔前の服をいつも同じパターンで着ている人、ではなくなったのだ!
ダサいのは、私のスタイルのせいじゃなかった! 
そう思えただけで生きていく希望が湧いてくる。

おしゃれな人になりたかったのは、みじめな思いをしたくなかったからだ。私はずっと人からどう見られているかばかりを気にしていた。
残念ながら私は生まれながらの美人ではなかったので、せめて「センスのいい人」でありたかった。かわいい友達と歩くときなんかはこんな私と友達でいてもらってごめんねと心の中で謝っていた。

でもガッキー先輩にコーディネートしてもらった服を着て歩くと、不思議と、人からどう見られているかは、気にならなくなった。
自分に自信が持てると、他人にどう見られるかは気にならなくなる。びくびくしなくなる。申し訳なく思わなくなる。
それに、楽しいし、もっとチャレンジしたくなる。

服一つでこんなにも気分が変わるのだ。
おしゃれは他人のためじゃなくて、自分のためのものだと知った。

買い物の後、カフェでお茶をしながら
「ガッキー先輩は、どうやってそのセンスを身に着けたんですか?」
と聞いてみる。
「あ! そうだ! たまちゃんにこの本あげようと思って持ってきたんだ」
私の質問に答えずに先輩が鞄から出したのは「本当に似合う服に出会える魔法のルール」という本。
「何冊かスタイリスト本持ってるんだけど、これはもう読んだからあげるよ。雑誌はケーススタディだから、もっともっと基本はこういう本の方がわかりやすいよ」
そうか、先輩も実は勉強してたんだ。生まれながらにおしゃれなわけじゃなかったのか。

自分の容姿をイイワケにして、嘆いてばかりだった私。一生ダサク生きていくしかないなんて投げやりになって、悲観ばかりして、だからといって何もしなかった。
何かを手に入れているうらやましい人たちは、私が知らないところで努力してた。

「あと、たまちゃん、メイクもちゃんとしようか。今日ちゃんと化粧してる?」
「一応フルメイクです。黒目がでかくなるコンタクトも入れてます」
「え!うそフルメイク!? どこのこと言ってるの!? ねえ、その眉毛はいったいどうなってるの?」

黒目がでかくなるコンタクトいれとけばいいってもんじゃないのか。
おしゃれの道はまだまだ遠そうだ。
でも、きっと、努力すればなんとかなる。
持って生まれたものを悲観するのはやめる。
そう思える方が楽しいって知ったから!

***

この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



関連記事