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〇○さえあれば幸せになれる、なんて思ってたのかわたし


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:櫻井由美子(ライティング・ゼミ平日コース)

 

夫は昨日から一泊で出張に出かけている。自宅に戻るのは早くても今日の夕方だ。

2歳になったばかりの娘とふたりきりで過ごす土曜日。

あっという間に夕方……にはならない。長い。一日が長い。

 

やりたいことがないわけじゃない。

 

もし今娘がいなくてわたしひとりでいたならば、まずは確実に二度寝する。

なんたって、2歳の娘には、土曜だろうが日曜だろうが関係ない。「今日はもう少し寝ていたい」そう思っても、容赦なく起こされる。

洗濯機をまわし、朝食を食べさせ、食器を片づける。そうしてから、試しにソファでちょっと横になってみるものの、「あーそーぼ」「おーきーて」と予想通り娘からせがまれ諦める。

 

そうだ、読みたい本があった。二度寝は無理でも、本ならば娘がお絵描きをしているあいだにすこし読めるかもしれない。

そう思ってテーブルの上にクレヨンとスケッチブックを用意する。お絵描きを始める娘を横目に、本を読み始める。と同時に、娘から声がかかる。

「おかーしゃん、かいて」

お絵描きに付き合おうと腹をくくり、開いたばかりの本を閉じる。

 

あぁ、今わたしがひとりだったらなぁ。

思う存分二度寝して、起きたらあの本を読んで、それから美容院にも行って……妄想が止まらない。

 

でも今わたしはひとりじゃない。2歳の娘がいる。

娘がいるから、二度寝も出来ないし、本も読めない。美容院も無理だ(少なくとも今は)。夕方までの時間を持て余し、あーはやく帰ってこないかなーと夫の帰りを首を長くして待つ。

 

そこでふと気づく。

 

ちょっと待て、自分。

 

私には、子どもが欲しくて仕方なかったけれど残念ながら授からない時期があった。授かってもうまく育たずに残念な思いをしたこともある。その頃は、子どもさえ出来れば幸せなはずなのに、これから先の人生きっと楽しいはずなのに、と思っていた。子どもがいない。だからわたしは幸せじゃないんだ、と。

 

その頃の自分が望んでいた未来にいる今のわたしは、子どもがいなければあんなこともこんなことも出来るのに子どもがいるからあれもこれも出来ない、なんてそんなことばかり言っている。おかしい。大の大人が、これじゃあただの無いものねだりじゃないか。

 

あぁ、そうか。

わたしは今まで、無いものねだりばかりしてきたんだ。

 

受験時代は、あの試験に合格すれば幸せになれると思っていた。合格したら、就職さえ出来れば幸せになれると思ったし、就職したら、今度は忙しすぎて、専業主婦に憧れた。専業主婦になったら、子どもさえ出来れば幸せだろうと思い、子どもが出来たら今度はひとりの時間を欲しがっている。

 

〇○さえあれば、幸せなのに。

そんなこと思ってたのか、わたしは。

 

いつだって、そのときそのときの自分は、過去の自分が望んでいたモノを手にしてきた。

「〇○さえあれば、幸せになれる」

というのが真実ならば、わたしはもうとっくに幸せを実感していて良いはずだ。それなのに、わたしはいまだに無いものねだりをして、今わたしがひとりだったらあんなこともこんなことも出来るなんて妄想を繰り広げている。

 

わたし、バカなのか?

たぶん、というか間違いなく、バカなんだと思う。

 

どんなことにも、いろんな側面がある。

子どもがいたら、煩わしいことも面倒なことも山ほどある。でもそれと同時に、子育てしているからこそ得られる感動や面白いこともたくさんある。子どもをきっかけに出会えた仲間もたくさんいる。

子どもが出来ないと悩んでいたあの時期だって、今思えば、子どもがいないからこそ楽しめたことがたくさんあったと今ならわかる。

 

子どもが出来なかったあの頃のわたしは、子どもがいないことの寂しさだけに注目し、子どもがいる今のわたしは、子どもがいることに伴う煩わしさだけに注目している。

結局わたしは、自分が望んで手にしたその状況を楽しもうともせずに不満ばかりを募らせ、無いものねだりをしてきたのか。

 

こうして書いてみるとなんだかすごく単純なことなのにな。

 

〇○さえあれば幸せになれる、わけじゃない。と、思う。

〇○が手に入るかどうかは、問題ですらないのかもしれない。

どれだけたくさんの〇○を手に入れたところで、自分がその状況を味わい、楽しもうとしない限り、幸せだと感じることは出来ないのだと思う。逆に言えば、そのときどきに置かれた状況の中で、その状況の良い側面に注目し続け、それを味わい、楽しもうとし続ける限り、いつだって幸せでいられるような気がする。今のわたしにはまだ、そんな「気がする」という弱気なことしか言えないのだけれど。

 

2歳の娘と過ごす土曜日。

こんなことを考えていたら、あっという間に夕方になった。

今からでも遅くない。娘との時間を楽しもう。娘がいるこの煩わしい日常を、面白がりながらすごしてみよう。そう思った。

 

出張から帰って来た夫に留守番を頼み、娘とふたりでバスに乗って夕飯のお弁当を買いに行くことにした。弁当を買いに行くだけなら、娘を夫に託してひとりで買いに行った方が楽だし、バスに乗らなくても車で買いに行った方がよっぽど早い。娘とバスで出かけるなんて、時間も倍以上かかるし、寒いし、面倒くさいことだらけだ。それでも、そんな面倒くさい今を楽しもうと思う。それが今の私が幸せを感じるための近道だと思うから。

 

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2018-02-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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