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メディアグランプリ

感動の秘話なんていらない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡邊法行(ライティング・ゼミライトコース)

 
 
私は「感動の秘話」というやつが苦手だ。
 
折しも今、平昌オリンピックが開催されている。連日テレビで放送されている特番なんかで、また「感動の秘話」が「堂々」と明かされていることだろう。最近は「秘話」をあまり見たくないので、オリンピック特番は見なくなってしまった。
『見事、メダルを獲得した○○選手! その活躍の裏には、知られざる挫折と苦闘、そして決して明かされることの無かった家族との感動の秘話があったのです』とか、そんな感じだ。
秘話なのだから関係者の中でどうぞ秘しておいて下さい、とお願いしたくなる。
 
もちろん、オリンピックの舞台で活躍する選手たちの姿に、私は心を揺り動かされる。
例えば、フィギュアスケートの羽生結弦選手。
3ヶ月前、右足に大怪我を負い、氷上練習再開はオリンピックの1ヶ月前。そのオリンピックが復帰初戦となる、とても厳しい状況だった。
しかし大会前、金メダル獲得への意気込みを聞かれ『誰が取ろうが僕も取る』と強い自信を見せてのぞんだ大舞台で、完璧な演技を見せて見事に金メダルを獲得。2大会連覇を成し遂げたのだ。
この羽生選手の姿は、おそらく全ての人たちを圧倒したことだろう。
でも、そこに有ったのは何の演出もされない、そのままの羽生選手だったのだ。
 
では「感動の秘話」とは一体なんだろう。
そもそも「秘話」がおおやけにされること自体が不自然なのだ。ところが、場合によっては再現VTRまで用意されていたりして、「さあ、感動しますよ。どうぞ、感動なさって下さい」的に、感動を押しつけられている気分になってしまう。
それはきっと、語るべき出来事や事実の上に、本来は受け手側が知る必要のないエピソードを「感動させる要素」として上乗せし「秘話」にしてしまう、送り手側の過剰な演出を感じてしまうからだと思う。
 
しかし、誰もが感動するようなストーリーは、本来、そのまま伝えられても私たちの心に十分に響いてくるはずだ。
なぜなら、私たちには想像力があるから。
 
過酷な状況に置かれても決して弱音は吐かない。それどころか強い自信を自らの言葉で語ってみせる。そんな選手たちの姿は、私たちにいろいろな事を教えてくれる。
トップアスリートはその道の天才だ。しかしそんな天才たちが世界の天才たちと戦うには、さまざまな挫折とそれを乗り越えるための苦闘があるに違いない。
そんな選手たちの姿を伝えるのに、過剰な言葉を上乗せする必要はないと思う。
想像力を働かせさえすれば、淡々と自分のことを語る選手たちの姿に、「ここで伝えられているのはほんの一部で、きっと表に出てこない部分は想像を絶するものだろう」と尊敬の念を抱き、奮闘する選手たちの姿に感動するのだ。
 
また、オリンピックなどに出場するような選手たちには、数えきれない程の「家族や周りの人たちの支え」があるに違いない。
だから、例えば選手がインタビューで、
『支えてくれた沢山の皆さんに感謝します。とりわけ家族にはありがとうと言いたいです』
と、答えてくれているのを見れば、それだけでもう十分だと思う。
そこに過剰な演出を添える必要はないし、ましてやプライベートな出来事までを「秘話」などと言っておおやけにする必要などない。
想像力を働かせさえすれば、選手の流す涙や晴れ晴れとした笑顔、それに選手が語った「ありがとう」という言葉だけで、心から「おめでとう」と称賛の想いを抱き、感動するのだ。
 
言い古されたことではあるけれど、私たちが人生を生きていくうえで、さまざまな「感動」に出会うことはとても大事だと思う。
人生を変えてしまう位の、大きな「感動」。
ともすれば味気なく感じてしまう日々の生活を乗り切っていくために必要な、小さな「感動」。
それらは決して「秘話」などである必要はない。
 
もちろんそんな「感動」を上手にすくい取っていくのには「想像力」が欠かせない。
どう考えても想像力が欠如してしまっている、としか考えられない出来事が毎日のように起きている今は特に。
 
そしてまた、自分に備わる「想像力」を育てていく努力も、やはり欠かせないと思う。
 
最近私は、書くということを始めた。
まだ今のところは、すり減ってしまった自分の想像力を育てている感じだ。
でもいつか、自分の書いたものを目に留めてくれた人が少しでも感動してくれたなら、最高にうれしいだろう。
 
もちろん私が書きたいのは、過剰な言葉や余分な演出など何もない、読んでくれた人の想像力を刺激して小さな感動が降りてくる、そんな話だ。
 
私たちには「感動の秘話」なんて必要ないのだから。
 
 
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2018-02-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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