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介護をすることで身につけられた「五つのビジネススキル」とは


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:染矢慎二(ライティング・ゼミ ライトコース)

 
 
「介護」で得られるものもある。それは「ビジネススキル」だ。一般的には、介護というプライベートな問題は、仕事に悪影響を及ぼすものと認識されている。「介護と仕事の両立」は社会問題にもなっている。しかし、見方を変えると、介護をすることは、仕事に役立つスキルが身につく、というメリットもあるのだ。
 
私には、山形県で暮らす72歳の父親がいる。母親は16年前に亡くなっている。父の子どもは、長男である41歳の私と38歳の次男の二人だ。私と弟は、東京で暮らし、会社員として働いている。
 
父は、4年前に躁鬱病を発症した。そのあと、二度の入院(一度目は強制的に入院させた)があった。そして、躁鬱病自体の症状は落ち着いたが、今度は認知症になった。そのあと、私たちは父の自宅マンションを売り払い、父を叔父(父の弟)の近くのサービス付き高齢者住宅(通称:サ高住)に引越しさせ、さらに状態が悪化したため、現在は介護付有料老人ホームに入居させている。
 
現在は介護付きの施設なので、ある程度は落ち着いているが、これまでの4年間、さまざまなことを経験した。壮絶な体験もした。それらが実は、私の五つのビジネススキルを上げることにつながったのだ。その五つとは何か。
 
一つ目は、「スケジュール管理能力」。病院への入院、施設への入居、それらにまつわる手続き、などで頭を悩ませられるのがスケジュールの問題。手続きなどは平日にしかできない場合も多いから、いつ仕事を休むのか、などを細かく考える。やることが多い介護の諸問題に当たっていると、複雑なスケジュールを立てることに慣れてくる。
 
二つ目は、「発注先との折衝力・交渉力」。介護での「発注先」とは、病院、サ高住・老人ホームなどの施設、訪問看護・介護事業者、などだ。前述のように、介護は、複雑なスケジュールの中で、自分の仕事との両立も考えながら、ギリギリのところでやることになる。また、介護は父の命に関わることでもある。そのため、発注先にはこちらの要求を聞いてもらえるよう、時には強気の交渉が必要になるし、それが自然とできるようになってくる。
 
最もタフな交渉になるのは、病院の先生が相手のときだろうか。なぜか病院の先生には威圧感がある。絶対的な存在として捉えられている。だから、先生の前ではどうしても遠慮がちになるし、こちらが精神的に押され気味になる。しかし、必要なときには、強く言わなければならない。例えば、父を二度目に入院させるとき。先生は、入院させる必要はない、と言っていたが、私たち家族や訪問看護師の間では、今のままでは父は危ない、早く入院させたい、という見解で一致していた。だから、強く主張して入院させてもらったのだ。
 
三つ目は「チームプレイで進める力」。今回の介護のチームのメンバーとは、私と弟と叔父だ。各メンバーが自分の得意なことなどを加味しながら、動いていた。例えば、私はチームの中で、リーダー的な役割を担い、また、父に対するコミュニケーションや精神的なケアが比較的得意だと自負していたので、その役割を率先して行った。弟は事務的な手続きや金銭面の管理などに長けていたので、弟にはそこを任せた。叔父には、父の近くにいる、という最大の利点を生かしてもらい、緊急時に対応してもらった。このようなことを3人で綿密に連絡を取り合いながら、うまくやってきたのだ。まさにチームプレイだ。
 
四つ目は、「コミュニケーション力」。父のような精神疾患を抱えた人と接するときは、繊細な配慮が必要になる。傷つけないように、怒らせないように、ストレスを与えないようにしなければならない。さらには、認知症になると、わけのわからないことを言ってきたり、何度も同じことを言ってきたりする。それでも耐えなければならない。父の目をまっすぐ見て、ゆっくりと諭すように、笑顔を意識しながら話をする。そして、根本的には父を信頼し、こちらも信頼してもらえるようにしないといけない。これは通常のビジネスで求められるコミュニケーション力でもある。
 
最後の五つ目は「判断・決断力」。これまでの4年間、何度も「判断」や「決断」を迫られてきた。例えば、一度目に強制的に入院させるとき。山形のマンションの管理人から連絡を受け、「もうこれ以上は危ない」と判断し、入院させることを決断し、速やかに行動した。平日だったが、すぐに私は会社を早退し、弟や叔父に入院させることを告げ、山形へ向かった。弟と山形で落ち合い、綿密に計画を立て、翌朝、行動に踏み切った。この決断が遅れていたら、とんでもない事態を引き起こしていたかもしれない。極限状態で、究極の判断・決断力が養われるのだ。
 
これら五つのスキルは、今、私が仕事をする上で、大いに役立っている。介護に直面してから1年ほど経ったころ、上司に「最近大人になったな」と言われたのが、その証拠だ。
 
介護は、精神的に疲れ、仕事との両立に苦しみ、時には修羅場のようなことも経験する、ネガティブなことではある。しかし、このように極限の状況で行ったこと・判断したことは、自分の脳裏に深く刻まれ、血となり肉となりやすい。それらが蓄積し、ビジネスでも使えるスキルになる。今、介護に直面しているビジネスパーソンに伝えたい。介護の経験は絶対に無駄ではなく、むしろ良い経験だ。ポジティブに考えて、頑張ってほしい。
 
 
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2018-02-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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