メディアグランプリ

それでも、続けていくこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Mei(ライティング・ゼミ日曜コース)

 

毎朝、必ず会う人がいた。朝の6時。白い帽子をかぶった男性はいつも同じ場所にいた。汗がとまらない暑い夏の日も、空が一面暗くなった雨の日も、こごえるような雪の日も、その人はいつも同じ時刻に同じ場所で同じことをしていた。

 

いつだったか、その男性が言っていた。
「一度歩かない日を作ってしまうとね、体が気持ちが悪くなるんですよ。だから雨でも休の日でも、とにかく続けるんです」
もう、長い間この地域に住むという男性。職場に向かう途中で出会う、その男性は、80歳を超えている。毎朝、朝ご飯を食べる前に散歩をしているという。

そして体がとんでもなく柔らかい。30代の私が到底追いつきそうにもないほどの体の柔らかさをもっている。毎日毎日歩いて柔軟体操を繰り返している。歩いてスクワットをして柔軟体操。同じことの繰り返し。だけどそれをずっとやる。一度も休まず、続けている。だからその人は健康だ。毎日体を鍛えているから、風邪など病気にはなりにくいのだろう。

 

「続けていく」で言えば、私は10歳から書道をやっている。途中少しブランクがあったが、かれこれ20年近くやっている。書は奥深い。毎回課題が出され、それをひたすら練習する。字一つひとつの形を整えることはできるのだけれど、一本一本の線の質や筆づかいは、なかなかうまくいかない。

「これで、本当に上手になっているのだろうか」
「何も変わらないではないか」
と思うことがたくさんある。

 

だけど、これまでに取りためてきた作品を見るとき、確かな変化を感じるのだ。小学生の時の字は、まだ幼い。そして字に堅さがある。中学生になってからは、字が崩れている。当時の流行にのりたかったのか、丸い字が多い。高校生。だいぶ整ってきているが、まだくせがある。大学生。やっと落ち着いてきた。その時々ではあまり分からなかった変化は、長い年月を経て確実に目に見えるようになっていた。

 

お稽古を続けていく中でたくさんのことがあった。私より遅く始めた人が賞をとったり段があがったりすることはざらにあった。何度書いても納得いく字が書けたことなんてこの20年でほんの何回かだ。やっていると、できない自分がいやになることもある。もうやりたくないと思うこともある。続けていくと、自分のいやなところがたくさん見えてくる。逃げたくなる自分。「もういいや」で終わらせようとする自分。きっと書道をしなければ、味わわなくても済んだであろう、たくさんのことを感じてきた。でも、不思議と、これまでやめずに続けてきた。もっと字を書きたい。もっと上手になりたい。そんな気持ちがあった。

 

昔の人が書いた字を見ると、心がゆり動かされることがある。聖徳太子の字。彼が生きた時代は、今から何と1400近くも前のことだ。そんな前の字が残っていて、ずっと見ていたくなるほど美しい。書は、書かれたもの(石や木、紙など)や時代背景、その人の人となりなどによって力強い字、繊細な字、穏やかな字など、様々な特徴がある。書を通じて、
私は、たくさんの人の作品に出会った。半紙の白。墨汁の黒。たったこの2色の世界だけで、こんなにも豊かに表現できるのかということに魅了されてきた。力強い字を見ると、背筋を正したくなった。繊細な字を見ると、心が澄んでくるような気がした。穏やかな字を見ると優しい気持ちになれた。書は、不思議と心につながる何かパワーのようなものがある。そして、何より字を書くことが好きだった。憧れと好きという気持ち。そして「もっと」という気持ちが今日まであったから続いてきたのかもしれない。

 

書は、長く続けてきたが、途中でやめてしまったものもある。英会話、レース編み、スイミング。もう少し続けていれば、今の書道のようにもっと面白くなったかもしれない。やっていると、つまらないこともあるし、うまくいかないこともある。思い通りにならないことが、ほとんどだけれど、やっていると、たまらなく面白く感じる瞬間があるのだ。あっと驚くような瞬間もある。そうした瞬間に出会うためには、続けていくしか道はない。

 

何かを続けていくこと。それは、エネルギーのいることだ。単調に感じることもあるかもしれない。だけど、たとえそれが、ほんの小さな積み重ねであったとしてもいつか道が開けてくることがある。一つのことを続けていくということは、まるで、山登りのようだ。一歩一歩、歩んでいけばやがて山頂に辿りつくように、やめずに、続けていけば見えてくる景色がある。想像をこえる絶景に出会うこともあるかもしれない。思いがけないものを受け取るかもしれない。でも、それは、やめることなく最後まで続けた人だけが受け取ることのできる特別なギフトなのだ。

 

職場が変わり、もうあの男性には1年近く会っていない。でも、彼は、きっと今日の朝も6時に、歩いたのだろう。彼が歩いた道。私が行く道。いやな日もある。やりたくない時だってある。それでも、続けていった先に、きっと見たい景色がある。

 

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2018-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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