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イクメンってかっこいいですよね。僕の育児と違って。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田林洋(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
上の子がインフルエンザにかかったんですよ。先月はB、今度はA。なんですかね、予防注射って。意味なくないですか。しょうがないんで、病院に抱きかかえていったんですよ。息子は、鼻の奥につっこむあのインフルの検査を嫌がっちゃって、泣き叫んじゃって。後ろから羽交い締めにしてようやく検査して、やっぱAですねって言われて、ああはいやっぱそうですよねって思いながら薬局いって、タミフルもらって、よろよろで家に帰ったわけです。
幼稚園に電話して「あ、先ほどお電話したワタルの父ですけど。病院いったら、インフルと言われまして。ええ、はい。今週はお休みで、はい。あの、それで、来週も木曜まで私と一緒に東京に行きますので。はい、なので、来週の金曜に登園します」と説明しながら「おいおい、マジかよ。今週の仕事、どうなっちゃうの。頑張ってどうにかとか、そういうレベルじゃないよ」って頭グルグル……。
 
僕が育児を本格的に始めたのは、3年前です。それまで勤めていた会社では全然仕事のペースについていけず、体を壊し、逃げるように辞めてしまって。自分の本当にしたいこと、できること、生きたい生活スタイルを考えて、家庭教師を選びました。始めるときは「人の人生に関われて、時給もよくて、日中は子どもと触れ合えるなんて最高だな」と思っていました。でも実際は、夜仕事するので体が辛かったですし、そもそも思ったより仕事は来なかったですし、子どもはいつも天使ではなかったわけです。初年度は年収にして200万円を大きく切っていました。生きていけません。
 
2年目からは妻も働き始めて、子どもたちは僕がかなりみるようになって。少しは僕の仕事もマシにはなったんですが、それでも人並みとは言えず。その上家事は全然上達せず、育児も小言ばかり言うようになってきてしまいました。早くせい、ちゃんと食え、片づけろ、早く寝ろ。
 
毎日毎日、そんな感じで。朝は、下の子を妻と一緒に出掛けさせるためにあれやこれやと嘘をつき、そうしたかと思えば、今度は上の子を急かしてバスに乗せ、みんながいなくなった家に帰って、掃除機かけて、食器洗って、洗濯物干して畳んで、昼の仕事を大急ぎでやっていると、もう上の子を迎えに行く時間。帰ってきたら、手を洗え、動画は30分だ、おやつ取りすぎだ、姿勢をよくしろ、そんなことばっかり言ってるうちに妻が下の子と帰ってきて、妻が食事を作ってくれる間二人と戦いごっこを繰り広げ、食事を食べたらまた暴れ始める子どもたちをなだめすかして風呂に入れ、自分はまた仕事に向かう。
 
育児書や育児番組、見る暇もあまりないけど、たまに見たら自分がやっていることがまさに「やってはいけないこと」に挙げられている。仕事も集中できているのか言われれば、とても「はい」とは言えないですよ。子どもが高熱を出せば、すぐ休んでしまう。その程度の根性。
 
だから、雑誌のイクメン特集などを見るともう自分が恥ずかしくて仕方ない。ここに出てくる人たちは仕事をちゃんとしていて、その上で空いた時間を作って、かっこいい格好をして、子どもに見上げられ、爽やかな写真を撮られている。そんな表紙を見るだけで、自分が責められているんじゃないかと感じてしまって、怖くてとても中身なんて見れません。それが真実かどうかなんてどうでもよくて、ただ僕は世間が抱くイクメンとは全然イメージが違うんだってことを痛感してしまう。
 
イクメンってかっこいいですよね。僕の育児と違って。
 
ぼんやりそんなことを考えていたら、ソファで横になっていた息子が「気持ち悪いよー」とぐずり始めました。
「吐きたいか?」「ちがう」「ゼリー飲むか?」「いやだ」「冷たいやつ(保冷剤)変えてやろうか?」「いい」「暑いか?ベッドで寝るか?」「うん」
持ち上げて、ベッドへと運ぶ。ただこれだけ。他にどうにもできない。苦しみを代わってあげることもできない。自分は何もできない。
 
できたことと言えば、横に座ることだけ。座るというよりへたりこんだ。ただそれだけ。いつもの空気で、でも、いつものようにガミガミ言えずに。そうやってただただ無力を抱えてじっと横に座っていたら、いつも見ている、安心しきった、あの寝顔と寝息。
 
「いるだけでもいいんだな。こいつにとって、俺は親なんだな」
 
爽やかでかっこいいイクメンではない、無力で無様を晒しているこの育児している僕も、まあそんなに悪くないかな。
 
 
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2018-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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