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メディアグランプリ

「ズルイ!」が誉め言葉だってことをもっと早く知っていたら、もっとのびのびと生きられたのかもしれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:べるる(ライティング・ゼミ 特講)

 
 
「お前、ズルイな」
私がまだ小学3年生だった頃、隣の席の男の子にそう言われた。
……え?
私は顔を上げて、男の子を見た。
男の子は、私の書いてるノートを見ていた。
 
桜の木の観察をしましょう! ということで、さっきまで校庭で桜の木の観察をしていた。桜の木や花びらの様子をノートに書いた。私は落ちていた桜の花や実を拾って来ていてので、セロテープでノートに張っているところだった。
 
……ズルイ? 何が?
 
私は頭が真っ白になった。
確かに桜の花を拾っているのは私だけだった。でも、先生は花を貼り付けてはいけませんなんて言ってなかったし、空いてるスペースに貼っているのだし、問題ないはず……。
 
でも「ズルイ」と言われたことが、とても恥ずかしかった。
 
「誰もそんなの貼ってねーよ。ズルイ」
と、また男の子は言った。
 
ズルイ。
それはとても卑怯なことをした時に使われる言葉だと思った。私は人としてそんなにしてはいけないことをしたのだろうか?
桜の花を貼り付けただけなのに……。
だけど、私は自分がすごく悪いことをしたみたいに思って、花びらをはがした。汚い空白が出来たノートを提出した。
ズルイなんて言われたくなかったから。
 
「ズルイ。下手くそなくせに、ズルイから入賞しただけだからね!!」
中学2年生の写生大会で、また私は「ズルイ」と言われた。
 
今回の写生大会では近くのお寺に移動して、お寺を描いた。
私はみんなが当たり前にお寺を描いているのがあまり面白いと思えなくて、友達のスニーカーを大きく描いてその裏の背景としてお寺を描いた。
そしたらなんと、入賞してしまったのだ。
それが友達にとっては気に入らなかったようで、また「ズルイ」と言われたのだ。
友達は絵が上手かった。私は銅賞だったけれど、友達は金賞だった。何がズルイのか……。
 
ちゃんとお寺を描いてない。スニーカーを描いたから入賞した、ということがズルイのだという。
 
そんな事言われても……。
「ズルイ」と言われることはしんどかった。
ズルイって、卑怯ってことだよね?
ちびまる子ちゃんでも、卑怯者の藤木くんはいつもみんなに責められている。ズルイっていうのは、良くないことなのだ。
ズルイことはしてはいけない。
ズルイと言われて、嫌な気持ちになりたくない。
ズルイことは、したくない……。
 
ずっと「ズルイ」は悪いことだと思っていた。
しないように、そう言われないように、しないといけないと思っていた。
 
でもある日、すべらない話を見ていて、私の「ズルイ」のイメージが大きく変わった。
その日のすべらない話には、麒麟の田村さんが出ていて、中学生でホームレスになって公園で暮らしていた話をして、会場を爆笑させていた。
 
まっちゃんが笑いながら「もー、ほんまにズルイわー。ほんまめっちゃズルイわー」と言っていて、私も「分かる! めっちゃズルイわ!!」とテレビに話しかけていた。
 
え……?
私、今、ズルイって言った??
 
ん? 田村さんてズルイ?
 
いや、ズルくない。
中学生の頃に住むところがなくて公園に住んで、めちゃめちゃ頑張って生きてきていて、何もズルくなんてない。
 
じゃあ何でズルイなんて言うのか……?
 
いや、でも、やっぱり田村さんはズルイ。
だって、こんなに面白い話を持ってることがズルイ。
誰も体験したことないすごい体験していることがズルイ。
そして、それを笑いに変えて、大爆笑をとってることがズルイ。
やっぱりズルイ!
 
もしかして、ズルイって、誉め言葉……?
 
そうなのかもしれない。
カンニングして赤点とった子には「ズルイ」とは言わないけれど、カンニングしていい点数取ってる子には「ズルイ」と言うだろう。
ぶりっ子なのに振られてばかりいる子に「ズルイ」とは言わないけれど、ぶりっ子なのにいつも彼氏がいる子には「ズルイ」と言うだろう。
そうか、ズルイって誉め言葉なんだ……。
人は、羨ましい時にも「ズルイ」って使うんだ……。
 
そういえば、写生会の後、美術の先生に「あなたの感性が羨ましい」と言われた。「芸大に入るような人は、あなたみたいにものを見れる人なの」と。
 
当時の私の心には、何一つ響かなかったけど……。絵が上手かったらスニーカーなんて描かなかった。下手くそだからスニーカーを描いたのだ。私は、普通に上手い人になりたかった。先生みたいに、普通にさらさらっと上手い絵が描きたかった。
 
ズルイなんていわれたくなかった。学校という枠の中で、無難に過ごしたかった。周りとズレていることが、とんでもなく苦しかった。
 
あの時「ズルイ」が誉め言葉だと知っていたら、私は今と違った人生を歩んでいたのかもしれないなぁ……。
「ズルイ」という言葉に抑圧されず好意的に受け止めて、桜の花を張り付けてるのを見て「ズルイ」と言った男の子にも花びらを分けて「一緒に貼ろうよ!」と言えたかもしれない。
スニーカーを描いて「ズルイ!」といった友達には「じゃあどんな構図なら魅力的な絵が描けるか研究しようよ!」と言えたのかもしれない。
無難に過ごすことと自分のバランスがうまく取れて、のびのびと過ごせたかもしれないな、なんて思う。
 
残念ながら「ズルイ」が誉め言葉だと知ってから、私は昔ほど悪意のある「ズルイ」を言われることはなくなった。
 
今だったら戸惑うフリをしながら、内心「いひひひひ。誉めてくれてありがとう」と思えると言うのになぁ。
 
 
***

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2018-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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