メディアグランプリ

味噌は積み立て


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記事:秋桜(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
先日の日曜日、私は大豆から味噌をつくるワークショップに参加した。
知り合いがワークショップをやるらしい。よくわからないけどおもしろそうだし、つくった味噌をもらえるらしいので行ってきて、と急に夫に頼まれたのだ。
 
私はふだん人並みに料理はするにはするが、そんなに食べ物にこだわっているわけでも自然派でも手づくり派でもない。
ただし、味噌が「かつて家庭でつくっていたもの」だという知識だけはあった。
かなり昔に愛読していた主婦之友社の『べんりな常備菜』という本で見た記憶がかすかにあったからだ。
常備菜といってもいまどきの作り置きおかずの本ではない。
もちろんいわゆる常備菜もあるが、昭和55年発行のこの本のいう「常備菜」の大半は、漬物はもちろん、魚の干物や山菜の水煮から燻製、ソーセージ、アンチョビーとつくってしまう本気の保存食だ。
そのレトロさ、生まじめさが楽しくて、つくるわけでもないのにしょっちゅう眺めていた。
その中でも味噌は婦人之友社の支部である友の会の研究を紹介する気合いが入ったもの、逆に言えば昭和の香りがするこの本の中でも味噌は「もう家庭ではつくられなくなってしまった」存在なのかもしれないと思った印象が残っていた。
 
その味噌をつくるのか。ちょっと身構えたが、ワークショップだからみんなでわいわいつくるのかな、それなら何だかできそうだし、楽しそうと会場の区民センターに向かった。
実際つくってみると、味噌の材料は塩と麹とゆでた大豆のみ。つくり方も、塩と麹をまぜる、ゆでた大豆をつぶす、最後に全部まぜる、入れ物にいれておしまいというシンプルなもの。
コツは手で丁寧に力強くひたすら混ぜること。
2時間のワークショップだったが、作業は正味30分ちょっとぐらいだろうか。それも説明を聞きながらなので、無心で手を動かせばもっとかける時間は短いはずだ。
ワークショップではあらかじめ大豆をゆでてもらってそこからのスタートだったから、その大豆をゆでるのが実際には一番手間だろう。ただ、ゆでるだけだったら圧力鍋を使えばすぐだ。量も多くないしそれぐらいならやったことはあるし未知の領域ではない。
あとは1年間寝かせるだけ。これで1キロちょっとの味噌の完成だ。
 
簡単過ぎてそれが衝撃だった。
塩も豆も麹もこだわればきりがなさそうだけど、こだわりがなくてもちゃんと「我が家の味噌」がつくれそうだ。
何でこんなにすぐできることを誰もやらなくなってしまったんだろう。
そこのところは解せないけれど、これからはどんどんつくってやる、まだ味噌として完成させたわけでもないのにそう決心しながら、講師の味噌についてのよもやま話を聞いていると、こんなに気軽にできるのは1キロの味噌だから、自分の手でつぶして楽しくできるのはこの量が限界という言葉が耳に入ってきた。
「主婦之友の会」で見たときの重労働感は1年分、1甕分を一気に仕込もうとするからか。だからみんなで協力しないとできないのか。なるほど。
 
だけど、容器にちんまりと納まった1キロちょっとの味噌は、ふだんスーパーで買うパックより一回り大きいぐらい。我が家なら、1カ月か2カ月ぐらいで消費してしまいそうだ。
主婦之友ではたしか真冬に仕込みなさいと指示されていたが、実際はどの季節に仕込んでもいいらしい。現代家屋は年中似たような気温だし、ここは北海道だし。
完成するのに1年かかるとなると、毎月つくり続けていかなければ……
これは味噌の「積み立て」だな。
 
最近始めた積立投資を思い出した。
積立「貯金」ではなく、投信積立だ。
「投資」というと知識と大きな資金が必要で素人がやってもプロにはかなわないものと思っていたが、日経平均株価なり、ダウ平均株価といったインデックス(指数)よりも優れた運用実績を上げることができるファンドマネジャーはほんの一握りだそうだ。
そして、暴落は怖い(実際、若い頃始めた投資はリーマン・ショックで挫折した)、手に負えないものと思っていたが、インデックスという市場全体の値動きは大きく見ればその国の経済成長を反映したものになるはず。
実際、アメリカ市場は大恐慌だろうが、ブラックマンデーだろうが、リーマンショックだろうが、その後回復して右肩上がりの成長を続けている。それが健全な市場の姿だ。ただし、20年、30年という長い目で見ればだけれど。
投資は複雑怪奇なものと思っていたが、20年後、30年後の成長を信じられる市場を選ぶ、つまり、インデックスを選んで毎月少しずつそこに積み立てをする。ただそれだけのシンプルなものでもちゃんと運用になりそうだ。
自分の手の届く単位であまりいじらず、ただし時間はいっぱいかける、それで人任せにしなくても自分の力でなんとかできそう。そう思うと投資を再開してもいいかなと思えてきたのだ。
 
味噌は静かなところに仕舞ってしまうとだめらしい。直射日光はだめだが人間の息づかいが感じられるところにおくほうがいいそうだ。カビが生えても、たまに覗いて取ってしまえば大丈夫。
いじり過ぎず、忘れない程度に気にかけつつ、まずは最初の満期まであと1年、毎月こつこつ味噌を積み立てていこう。
 
 
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2018-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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