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クローゼットに更年期が来ていた


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記事:羽田さえ(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
会社に着ていく服が決まらない。
クローゼットの中にはそれなりにたくさんの服があるのに、どれもいまいちな気がする。
一番無難そうなものに袖を通してみても、何だか似合わない。最近までお気に入りだった服を着てみても、とてつもなく野暮ったく見える。
 
四十にして惑わずなんて言うけれど、そんなのは孔子みたいな聖人君子だけに限った話なのだろう。もうすぐ40歳になるというのに、着ていく服ひとつ決められず、朝から迷いまくっているのだ。鏡の前を行ったり来たり、半裸でうろうろしている。
 
小さな異変は、数年前に起きていた。
チェスターコートやハンチング帽などの一見おじさんっぽいアイテムを、あえて若い女の子が着るのが流行って、「おじかわ」なんて呼ばれていた。しかし同じアイテムを30代半ばの自分が着ると、おじかわと言うより単なるおじさんにしか見えない。
おじかわ、は決してアイテムがかわいい訳ではなく、着ている女の子がかわいいのである。
 
そこからさらに数年が過ぎて、事態はさらに悪化したように思われる。
 
何を着たら良いか分からなくなってしまったのだから、ファストファッションの服で色々試してみようと思うのだが、どれもこれも大惨事になる。
おじさんっぽくなるのを避けたくて明るい色を合わせると、服の華やかさに自分が負けてしまう。落ち着いた色合いを選ぶと、生活に疲れた地味なおばさんができあがる。
 
色だけでなく、形や丈も難しい。最近よく見かけるハイウエストのデニムなどは、とても危険だ。若い子には新鮮なのかもしれないけれど、うっかりアラフォーが取り入れると本物の昔の人になってしまう。そもそも、おなかが出てきた年代には要注意のアイテムだろう。
 
中年になり、体型が変わったせいなのか。
いや、ゆるんできた体型だって大問題なのだけれど、どうもそれだけではなさそうだ。少しくらい痩せたところで、手持ちの服が似合わない、気に入らないという問題が簡単に解決するとは思えない。
 
体型だけではなく、肌のトーンが変わったという点も、この問題の大きな要因かもしれない。少しくすんできた肌、つやのなくなってきた髪には、20代のころと同じ色は似合わなくなっているのだろう。
 
どうしたものかと色々と調べていたら、気になる情報を見つけた。
 
著名なスタイリストさんが、いち早くこの現象を指摘して「おしゃれ更年期」と名付けておられたのである。何を着れば良いのか分からず、何を着ても似合わなくなる状態で、40歳前後で起きることが多いのだという。
 
ああ、これだ。今の自分が、まさにそれだ。
おしゃれ更年期。なかなかにインパクトと説得力のある名前である。
 
一般的には、更年期というのは40代半ばくらいに訪れることが多いと聞く。
少しずつ女性ホルモンの量が減って、心身ともに色々な変化が訪れるらしい。自分にはまだまだ先のことだと思っていたけれど、すでにファッションの分野で更年期を先取りしていたのだ。
クローゼットにも更年期が来るなんて知らなかった。
 
おしゃれ更年期に立ち向かうコツとしては、くすんで見えがちなグレーなどは、今まで着ていたものより一段階明るめの色を選ぶと良いらしい。膝が見えるような短い丈のスカートやショートパンツを避ける一方で、首回りはすっきりと開けるなど、肌を出すバランスも重要なのだそうだ。
 
何だかとても腑に落ちた。
年齢にともなう自分自身の変化に、服が追い付いていなかったのだろう。
 
今までより一段明るめの色を選ぶ、というのは簡単に実行できそうだ。何となく丸くなってきた首回りを、思いきって出してしまうというのもおもしろい。
さっそくやってみよう。
 
ささいなことかもしれないけれど、手がかりを得られたのは大きい。
自分を悩ませていたものの正体が更年期であると分かっただけでも、こっちのものだ。
朝のクローゼットで、半裸でうろうろしながら悩む時間を、少しだけ短縮できそうな気がする。
 
こうなったら、おしゃれ更年期というものを楽しんでみるのも、悪くないかもしれない。
職場の昼休みに、いくらか年上の先輩たちに一連の悩みを話してみた。先輩たちは大いに盛り上がり、そんな時期が私にもあったわよと口々に語ってくれた。
どうやら誰もが通る道のようで、ちょっと安心した。
 
でもね、と先輩たちは続けた。本物の体の更年期はもっとハンパないから、しっかり覚悟しておくようにね、と。
油断ならない情報を聞いてしまった。
先取りしたおしゃれ更年期で、ちょっと鍛えておこうと思う。
 
 
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2018-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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