メディアグランプリ

変わらず待っていてくれたのは東京タワー


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:一宮ルミ(ライティング・ゼミ 特講)

 
 
2017年2月末、私は旅に出た。
 
10年ぶりのリフレッシュ休暇、5日間の連続休暇だった。
こんなに休めるチャンスは、滅多とない。
さて、何をして過ごす? ワクワクしてたまらない。
南の島へ海外旅行? それともお家で読書三昧? そんなことを考えていたリフレッシュ休暇の1ヶ月前、ふと通勤途中の車の中で、ひらめいた。
 
「そうだ、飛行機で東京まで行って、友達に会おう」
 
友達は横浜に住んでいる。
以前は私と同じ町に住んでいた。仕事の転勤で上京し、向こうで結婚して今は横浜に住んでいる。お互い、家族がいて、忙しく暮らしている。なかなか会うことはできない。会えるのは、お盆や正月に帰省したとき、それから私が一人で上京した時くらいだ。
 
定刻に出発した飛行機は、定刻に羽田空港へ到着した。東京も快晴だった。
空港の中のカフェで朝ごはんを食べた。スーツを着たビジネスマンや観光客がひっきりになしに通り過ぎるのを見ながら、時間を気にせず、朝ごはんを食べているのに、ちょっとの優越感と、仕事をサボっていることへの罪悪感を感じながら、食べた。
 
ゆっくりと空港を出て、午前中は銀座あたりをぶらつき、時間を潰した。
友達とは、彼女の仕事が終わる午後に会う約束をした。会えるのが楽しみだった。お互いに子供抜きで会うのは久しぶりだった。
 
ここからは、旅行初心者のプチ冒険だった。神奈川県には行ったことがない。彼女との待ち合わせは、川崎駅のショピングモールだった。
電車で来ればすぐだから。彼女はそう言っていた。方向音痴の私が、果たして一人でたどり着けるのか。
その心配は無用だった。品川駅から、川崎駅は、本当にすぐだった。乗り間違える心配もなかった。
川崎駅に着いた。大きなショッピングモールが、すぐ近くにあった。わかりやすい! そこでまた問題があった。ショッピングモールが広すぎて、迷子になった。なかなか彼女がいる場所が見つけられなかった。携帯電話で話しながらどうにか再会。積もる話に、花が咲いた。でも会えばブランクを感じさせない。一緒にいた時間が一瞬にして戻って来るような気がした。一緒にお昼ご飯を食べ、モールの中のカフェに移動して、またおしゃべりした。気がつけばもう夕方だった。彼女もまた小学生の子を持つ母である。家族が待つ家へと帰って行った。彼女は、いつもお互い遠く離れていても、ちっとも離れている気がしない、大事な友達だ。
 
さて、これからどうしよう。
全くのノープランだ。自由だ。ホテルに帰ってこもってもいい。一晩中、都内をフラフラしてもいいのだ。
とにかく、ホテルのある品川まで帰って来た。
実は、東京へ来る前、職場の同僚に教えてもらったお寿司やさんがあった。お寿司屋さんに一人で入るのだって、人生初めて! ドキドキしながら、行ってみた。一人で、明らかなお上りさん観光客の私にも、お店の人はよくして来れた。
美味しいお寿司と、ちょっとの日本酒で、いい気分になった。
 
晩御飯を食べ終わり、店の外にでた。
ふと目の前にライトアップされた東京タワーが見えた。
 
「よし! 東京タワーに行こう!」
 
東京タワーが浜松町駅の近くにあることだけは知っていた。私は、品川から浜松町まで山手線に乗った。
それから酔った勢いで距離も、時間も考えず、ただひたすら東京タワーを見ながら、目指した。グーグルマップで、ルート検索してみるが、酔っていてよく理解できなかった。
 
それでも東京タワーは目の前に見えている。見えているならたどり着けるはずだ。
もう今が何時なのかも、東京タワーがどこにあるのかもわからないまま、目標に向かって、てくてくと歩き続けた。酔っ払って赤くなった頬に、2月の夜風が心地いい。
途中「東京タワー」と書かれた案内板を見つけた。よかった。ルートは合ってる。
 
それから何分歩き続けただろう。スマホの時計も見ず、友達にLINEで「東京タワーまで歩いてる〜」とメッセージを送った。あとはてくてくてく。歩く。
 
横断歩道の向こうに、増上寺の入り口が現れた。ここで行き止まりかと思った。
いや、ちがった。前を歩く外国人観光客が、増上寺の塀に沿って、角をまがっていった。なるほど、増上寺の向こうが東京タワーだ。
 
お寺の塀に沿って坂道を歩く。昼間の喧騒がなかったかのように、静かだった。
数人の観光客が歩いていた。その囁くような話し声だけが聞こえる。
 
そしてとうとう、東京タワーの下に到着した。
さっそく入場料を支払い、中へと入った。展望デッキは、当時人気のドラマ「東京タラレバ娘」のイベントの最中だった。L E Dライトが、天井に網目のように張り巡らされ、ピンクになったり、ブルーになったり、キラキラと光っていた。そして外には東京の夜景。天然のイルミネーション。かかっている曲は、私の大好きな、タラレバ娘の主題歌Perfume の「TOKYO GIRL」だった。気持ちよすぎて、泣けた。
 
中も外も、心までキラキラで、ずーっと見ていた。聞いていた。そこで気がついた。
今、いったい何時だっけ? 大丈夫。 閉館時間まであと少しあった。
 
東京タワーには20年前、大学を卒業したばかりのころに来た以来だった。
そのときは、友達とバスツアーで、東京名所めぐりの一環で来たんだった。バスガイドさんに連れられ、エレベーターに乗り、展望デッキに来た。展望デッキからみた東京のビル群に、田舎者の私はびっくりしたし、感動したのを覚えている。
そして、あのとき一緒に東京に行って「はとバス」に乗ったのは、昼間、川崎でおしゃべりした彼女だった。そして、まさにあの日が、彼女が横浜に移住するきっかけの日だったことを思い出した。
 
東京という街は、来るたびに新しい店が増え、外国人観光客が増え、以前あったものがもうなくなって、目まぐるしく変わって行く。
 
あれから20年、東京タワーは変わらずそこにあった。20年前の記憶は定かではない。東京タワーの展望台が、こんな感じだったのか、どうかさえ。
でも変わらず、あの時のままの姿で、タワーはそこにあって、展望デッキの向こうには、日本一の都市として、東京の街が広がっている。
それから、あのとき一緒に行った友達との友情も、変わらずあることに、東京タワーを後にしながら、感謝した。
 
 
***

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2018-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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