メディアグランプリ

ダイエットはぬるぬるの階段だ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:たけしま まりは(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「まりはちゃん、やばいよ、そのお腹。ちょっと痩せたほうがいいんじゃない?」
2012年3月。厳しい就職戦線を乗り越え、さらに厳しい卒業論文を乗り越えて大学を無事卒業し、「あとは就職まで浮かれるのみ!!」状態のわたしがいま一番見つめなければならない問題を、ど直球に突かれた瞬間だった。
 
大学3年生の夏に5キロ太った。ゼミ研究と就職活動に力を入れるために大学の授業とアルバイトを極端に減らしたからだ。
大学の必修授業は週3日で、あとはオールフリー。そこにゼミ、インターン、ちょっとしたバイト、サークル活動をバランスよく組んでいけばいいと思ったら、ゼミ2:インターン1:バイト1:サークル2:ヒマ3という遊びとヒマが半分くらいの生活になり、面白いぐらいに肥えてしまった。
もともと細身なタイプではなかったが、顔に肉がつきにくい「着やせ」タイプだったため、周りからはぽっちゃり系という印象を持たれなかった。それが自分の怠け心を加速させ、気付けば過去最高体重を更新し続けていた。
 
就職活動が終わったらダイエットしよう。
卒業論文が終わったらダイエットしよう。
卒業旅行が終わったらダイエットしよう。
自転車に乗ってゆるやかな下り坂を降りていくように、わたしの怠け心は面白いくらいに加速する。
 
冒頭の言葉は、卒業旅行中に酔った勢いで同級生から放たれたものだった。これまでのプレッシャーからの解放感にひとしきり浸り、そろそろ社会人の準備を……と思っていた同級生は、いまだに学生気分のわたしを見ていられなかったのかもしれない。
ど直球のボールを投げられた直後、わたしは「だよねー!」と笑いながらめちゃくちゃショックを受けていた。
 
やばい。
とうとう言われてしまった。
酔いは一瞬で醒めた。しかしこの場を盛り下げてはいけないと思い、なんとか話題を変える。心の中では冒頭の言葉が絶えずリフレインしていて、全く浮かれられなかった。
いままで見て見ぬふりをしていたものを他人に見抜かれることほど、恥ずかしいことはない。
ああ、すごく恥ずかしい!!!
人生最大の恥ずかしさに悶絶しながら、わたしは本気でダイエットを決意した。
 
突然だが、若手芸人やリアクション芸人が全身にぬるぬるの液体を塗ってぬるぬるの道を走るお笑いレースのようなものを想像してほしい。
ダイエットはぬるぬるの階段を登るようなものだった。
とにかく、まったく思い通りに進めない。
 
社会人になり、経済的余裕ができたこともあり、わたしは決心して痩身エステに通った。
1年間・50万円かけて、1キロしか減らなかった。
新入社員のくせに、何やってんだよ。他に使い道があるだろ。もったいない。
いやもう本当にその通りだ。お腹に電流を流してインナーマッスルを鍛えたり、足をぐるぐる巻きにして身体のむくみをとったりして痩せやすい身体づくりをしたけれど、食生活を変えず運動もしなかったため見た目はほとんど変わらなかった。
 
ぬるぬるの階段にエスカレーターなんてない。
さらにちょっと気がゆるむと足を滑らせて転げ落ちてしまう。
そもそも楽して攻略しよう、という意識自体を改めなければ意味がないのだ。
転びやすいということを認識し、しっかりと両足で踏みしめて、一歩ずつ着実にのぼっていくしか道はない。
わたしはそのことをお金と時間をたっぷりかけて痛感したのだった。
 
その後、食事制限やジム通いなどいろいろ試した結果、一番成果があったのは家の周りを走ることだった。
週3日、どんなに遅くてもいいから、3キロ走る。はじめはほぼ徒歩、くらいのペースでゆっくり走り、習慣になるまで淡々と続けた。
とにかく「続ける」ことに重きを置いた。
はじめはすぐに息があがってすごく辛かったが、そのたびに「走ってるわたし、偉いよ!」「よくやったぞ! わたし!」と心の中で叫んだ。暗示のようにほめ続けた。ほめ続けないと挫折してしまいそうで怖かった。くじけそうになるたびに、冒頭の言葉を思い出して自分を奮い立たせた。
 
続けていると、身体に変化があらわれた。
まず、腸の調子が良くなった。汗をよくかくようになった。
そして、出るものが出ているからか、少しずつ体重が落ち始めてきたのだ。
身体の変化を感じ、嬉しくなってさらにやる気が出た。
それからわたしは、とにかく走り続けた……。
 
あれから6年。
悶絶したあの日から、10キロ痩せた。
ランニングはすっかり習慣になり、一ヵ月後にマラソン大会に出ることになった。
わたしは、ぬるぬるの階段を、なんとか登り切ったのだ。
ダイエット達成までの道のりは、気が遠くなるほど長かった。できれば二段跳びで登りたかったが、一段ずつ踏みしめて、なんとか登り切ることができた。
 
今、わたしはあの時の同級生に、胸を張って「痩せたよ!」と言いたい。けれど、同級生はそんなことを言ったなんて全く覚えていないだろう。
わたしはあの言葉を一生忘れない。言われた時はショックだったけれど、今は感謝しかない。
あの言葉が無かったら、ここまで登り切ることはできなかったからだ。
 
ダイエットを通して、ぬるぬるの階段は、ダイエットに限らないと感じた。
人生だってそうではないか。全く思い通りに進まない。
わたしが思い描いている理想はまだまだたくさんあるし、理想に全く近づけていない。
ゴールはぜんぜん見えないけれど、一歩ずつ着実に踏みしめていけば、いつかかならず登り切れる。
わたしはそう信じている。
 
ダイエットはぬるぬるレースの序章にすぎない。
今度は人生というもっと長いぬるぬるの階段に挑戦していくのだ。
 
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2018-03-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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