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職業病の心理カウンセラー、桃太郎を斬る


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉村心音(ライティング・ゼミ平日コース)
 
想像してみてください。
「日本一」と書かれた旗を掲げ、若干7歳にして村を代表して鬼退治に出かけなければならなかった少年、桃太郎の気持ちを……
 
やめられない。
というか、ついやってしまうのだ。
 
人の言動や成育歴から、どのような性格になるのか、考え方のパターンを持っているのか推察をしてしまうことを。
 
私は、心理カウンセラーの職業病にかかっている。
 
患者さんを目の前にすると、推察する症状は病ではなく職業となる。
実際、数千名の患者の主訴から性格や傾向の推察をし、心理検査やカルテとすり合わせて整合性を確かめる訓練をしてきた。
 
段々、人の言動から性格をグラフ推測してしまうようになっている。
性格はつかみづらいものなので、自他への厳しさ、優しさ、論理性、自由さ、妥協具合といった項目を心理検査でグラフ化するのだ。
 
最近は、子供の寝かしつけの絵本タイムにまで、職業病が現れている。
 
絵本の一般的なたしなみ方は、主人公に自分を重ね、一緒に冒険にでかけ、驚き、楽しみ共感していくのが一般的であろう。
 
心理カウンセラーの職業病が顔を出すと、全く違うたしなみ方になってくる。
 
桃太郎を例に挙げよう。
 
まず出てくる登場人物は、川に洗濯に出かけたおばあさんだ。
 
通常の桃よりはるか逸脱して大きい桃が流れてきたのにもかかわらず、
「おや。おいしそうな大きな桃。おじいさんが喜びますよ」
と、川から躊躇なく桃を引き上げ持ち帰る。
 
この時点で、おばあさんの性格が推察できる。
訝しがらずに巨大な桃に飛びつく点から、感情や欲求を大事にする気質、人目を気しない自由奔放な傾向、パートナーの喜びを優先して考える優しさの高い人柄が伺えるが、やや論理的思考に欠けることが推察される。
 
次に出てくる登場人物は山での芝刈りから戻ったおじいさんだ。
おじいさんも、巨大な桃を見て大喜びしているので、論理的思考にやや欠ける点、自由度が高く自己の欲求を大事にする点でおばあさんと似た気質を持っていることが推察される。
 
仲良く暮らしていた老夫婦との描写に微笑ましく頷ける。
 
もし、おじいさんの論理性や自他への厳しさが高く自由度が低かった場合には、
「得体のしれない巨大な桃を何故持ち帰ってきたのか。上流に桃の落とし主がいないのかきちんと確かめたのか。落し物と届け出ずに食べるのはいかがなものか」
と、おばあさんの行動を批難し、良好な夫婦関係の維持は難しくなっていただろう。
 
桃が突如として割れ、中から嬰児が出てきたのを見た際の反応も、
「なんと元気な男の子でしょう」
と、夫婦で手放しで大喜びしているが、先に推察した二人の性格から納得できる。
 
倫理観が強く自由度の低い気質の夫婦だったならば、桃から出てきた嬰児を見て、慌てふためき村役場へ届け出る騒動になっていたことは想像に難くない。
 
老夫婦の性格は、物語が展開していく上で必然であったと考えられる。
 
桃太郎は、老夫婦の愛情を受けてすくすく育っていく。
 
着目すべき点は、桃太郎が巻き割りや重いものを運んだり、肉体労働の担い手として幼少期を過ごしている点だ。
友人と遊んだり、勉強したりしている描写は、数冊の桃太郎の絵本で確かめたがない。
このことから桃太郎の優しい性格と、自分への厳しさや倫理観が高い傾向にあり子供らしい自由奔放さにやや欠けるのではないかという推察ができる。
義務教育のない時代背景もあるだろうが、幼少期から人の役に立ち、老いた家族の希望の光になる役割を無意識に演じようとしていたのではないかと考えられる。彼の桃から出てきたルーツの知れぬ自己存在不安も役割を演じる要因になりやすい。
 
血の繋がりのない自分に愛情を注ぎ育ててくれる老夫婦の恩に報いるため、子供らしくいることを選ばなかった桃太郎の心中を察すると、胸が痛む。
 
村に鬼が現れ強奪騒動が起きた時にも、若干7歳の桃太郎が率先して鬼退治に出かけることを決めたことも、年齢にそぐわない自己犠牲を感じたが、彼の性格を考えると当然の選択であるといえよう。
 
彼が生きたとされる室町時代の元服年齢を鑑みると、現代の7歳児よりも精神年齢は高かったと思われるが、それでもまだ子供である。
特に根拠のない「日本一」の旗を掲げ、自らを鼓舞し奮い立たせなければ、鬼ヶ島に行けなかっただろう。
 
お供に選んだ犬、キジ、猿のチョイスが7歳児らしく微笑ましい。
倫理観の強い性格とはいえ、なんとも子供らしい判断だ。
恐ろしい無法地帯に連れ立つメンバーのチョイスが自由ならば、私なら間違いなく屈強でガタイのよい元服した男子を選ぶ。
 
気になったのは、桃太郎が、犬、キジ、猿を仲間として迎えたのではなく、キビ団子の報酬を与え、家来として従えたことだ。
先に述べた家族機能の役割を考えると、桃太郎は突出したヒーローでいなければならないプレッシャーを感じていたとしても不思議はない。同年代の子供達にもまれて交友関係を築く経験を積めていたのも気がかりだ。
 
桃太郎は、鬼ヶ島で脅威的な強さを見せつけ、村から奪った財宝を取り戻し、故郷へ戻る。
戻ってからは、宝を元の持ち主に全て返しに奔走し、その後も村を守って暮らすというところで物語は幕を閉じる。
 
ここでも桃太郎の正義感の強さと優しさを感じつつも、自己犠牲的行動をとりがちで、子供らしい自由奔放さを抑圧傾向にあるのではないかという点が気にかかる。
 
このように、勝手に推察し、この人がカウンセリングにきたらどんな主訴になるのか、どんな精神療法で生きやすさをサポートできるのかを妄想する。
 
心理カウンセラーの仕事が好きだから職業病にかかっているんだと、書きながら気付きました。
よって、寛解予定なし!
 
***

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2018-03-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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