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メディアグランプリ

私をマリアナ海溝から救ってくれた恩人


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:一宮ルミ(ライティング・ゼミ特講)

 
 
「私、なんかおかしい」
 
あの頃、私は暗い暗いマリアナ海溝の底に沈んでいた。
 
何が原因だったのか、今でもはっきりわからない。確かに仕事は忙しかった。逃げしてしまいたいと思うことは何度もあった。でも、周りには、私よりもっと難しい仕事を、必死にこなしている人がいて、私の大変さなんて、蚊に刺された程度のもののように見えた。
 
それは、気づかないうちに進んで行った。
胸の奥に重しをつけて、深い海に沈められたような不安感が襲う。振り払おうと楽しいことをしようとするのだけれど、楽しいのはほんの一瞬で、重しはずっと胸の中で錨のように留まっている。
頭の中には、黒い霧が立ち込め、思考を邪魔する。人の話が理解できない。自分の考えもまとまらない。どうしても、何をしても、うまく行く気がしなかった。ただコピーを取るだけ、ファイルを閉じるだけでも、綺麗にできないと自分を責めていた。まして、誰かにミスを指摘されたりしたら、頭は思考を完全に停止。ミスしたファイルを直そうと、パソコンに向かい、ファイルを探そうにも、どこのフォルダを開いたらいいのかわからなくなった。関係ないフォルダを開いては閉め、また開いては閉める。焦るとますます分からなくなった。辛かった。
それでも、なんとか鉛のように重い体と心を引きずって、仕事に行った。
 
その日は休日で、車に乗って出かけようとした。大好きなアイドルの一番好きな曲をかけた。少しでも、気分がよくなるかもしれないと思ったからだ。
それなのに、曲が始まって、一緒に口ずさんだ瞬間、涙が止まらなくなった。
訳も分からず、車の中で号泣する自分に「何かがおかしい」と感じ始めていた。
 
その次の休日。胸の重りはどんどんと重みを増し、とうとう不安のマリアナ海溝に到達しそうなほどに、気分は暗く重く、一歩も動けない。リビングのコタツに潜ったまま、うとうとと昼寝をしていた。目覚めたら夕方になっていた。
 
何気なく手に取ったスマホで、フェイスブックのアプリを起動した。ふと目にした記事が気になって、クリックしてみた。
「あれ?」
読み始めてしばらくして、不思議な感覚に囚われた。
記事の内容に、覚えがある。
「これってもしかして私のことでは!?」
改めて、記事の著者を確認する。やっぱり! この人は私の知ってる人だ。
彼女は、私と同じ天狼院書店のライティング・ゼミを受講していた人だった。投稿された記事には、当時、私が書いたスランプで文章が書けなくなった時の気持ちを綴った記事を読んで励まされたこと、以来ファンとして、記事を読んでくれていたこと、ゼミの最終日にコメントを残すために、一生懸命に文章を考えたこと、そして今では、書くことがとても楽しくなったということが書かれていた。
 
飛び上がるほど嬉しかった。自分の記事が誰かの役に立っていることが。私の書いたものが好きだと言ってくれる人がいることが。
私はコタツから飛び出した。さっきに体の重さが嘘のように軽くなった。
 
この嬉しさをなんとか彼女に伝えたかった。
思い切って、フェイスブックの「友達申請」ボタンを押した。そして、「私のことを書いてくれて感謝しています。応援しています」とメッセージを送った。
しばらくして、彼女から「友達承認」とメッセージの返信が届いた。
彼女から、「応援してもらえて、また頑張れます」と返事をもらった。
 
彼女は、ライティング・ゼミを卒業し、今までよりずっと難しいプロフェッショナル・ゼミの道を嬉々として進んでいる。そして、彼女はもう私のずっと前を進んでいて、ライティングの技術を見事に花開かせていた。
それに比べて、わたしは一体何をしているのだろう。書くことからも逃げ、何もかもから逃げて、コタツに潜り込んでいるだけではないか。
自分のやりたいことは何だったのか。書くことではなかったのか。
私も、彼女の後を追いたい!
そのためにも、とにかくこの不安の海溝から抜け出さなければ。
 
そのために、ずっと避けていた心療内科へ行くことにした。病院に行ったら、この落ち込みが病気だと診断されてしまうのが嫌だった。自分で自分の感情もコントロールできないダメな人間のような気がしていたから。
それでもいい。どうせここまで落ちたなら、とことんダメでいいじゃないか。
 
「ちょっと鬱っぽいですね。お薬出しときますね」
心療内科の先生は、「ただの風邪ですね」というようにあっさりと診断してくれた。やっぱり病気だったのか。なぜかほっとする自分がいた。
 
それから、処方された薬を欠かさず飲んだ。すると不安の重しは、どんどんと軽くなった。たまに不安に戻るときもあるけど、どん底になることはなくなった。
そして、頭の霧が晴れてきた。考えることがまたできるようになった。
思考の歯車が、くるくると回転し始めた。
 
今なら、彼女を後を追うことができる。
私は、ライティング・ゼミより難しいコースの、プロフェッショナル・ゼミの受験を決めた。どうにか合格できた。3月から、厳しいコースで厳しい意見をもらって、泣きそうになりながら、書いている。苦しいけど、楽しく、元気に書いている。
 
あの時、彼女の記事に出会ってなかったら、今も私はコタツに潜って、天狼院書店のゼミ生の記事を恨めしく読んでいただろう。あの時よりもっとひどい気分で、生きていたかもしれない。
元気になるきっかけをくれた彼女に心から感謝している。彼女はもう、私のずっと先を進んでいるのだけれど、いつか彼女に追いつけるように、いつか追い越せるように書き続けて行きたいと思っている。
 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2018-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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